更新日:2023年9月7日

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歴史を訪ねて 旧前田家本邸

「歴史を訪ねて」は、「月刊めぐろ」昭和54年6月号から昭和60年3月号の掲載記事を再構成し編集したものです。

旧前田家本邸

井の頭線駒場東大前駅から、しょうしゃな住宅街を歩くこと10分で、目黒区立駒場公園へ着く。石造りのいかめしい門を入ると、左手に木の間隠れに和館が見えてくる。さらに奥へ進むと、若草色の屋根に赤レンガ張りの洋館が目の前に現われる。この洋館と和館が、旧前田家本邸である。

旧前田家本邸

大名から侯爵へ

明治17年、華族令発布により、前田家は侯爵の爵位を授与されて、百万石大名の威信を保ったが、隣接して建てられた東京帝国大学の敷地拡張のため、本郷の地も駒場の東京帝国大学農学部実習地4万坪と交換されることになった。こうして、はからずも加賀百万石大名の子孫の屋敷が、目黒は駒場の地に出現することとなった。

昭和4年から5年にかけて、前田家16代当主前田利為(としなり)侯爵は、駒場の約1万坪の敷地に、地上3階地下1階建ての洋館と、これを渡り廊下で結んだ2階建て純日本風の和館とを相次いで竣工させた。マツ・ケヤキ・イチョウ・シラカシなどうっそうと茂る駒場野の林をそのまま生かした奥庭や芝生の広場。使用人も100人以上いたという前田侯爵邸は、当時東洋一の大邸宅と人々の目を見張らせたものだった。

幾多の変遷を経て

しかし、栄華も永くは続かなかった。昭和16年に第2次世界大戦が勃発すると、翌年には、ボルネオ方面軍司令官として従軍中の利為(としなり)侯が、不慮の死を遂げてしまったのだ。夫人をはじめ一家は他へ移り、戦局がますます厳しくなる中で、昭和19年、邸内の一部を譲り受け、中島飛行機の本社が疎開してきた。

そして、終戦。前田邸は、昭和20年9月、連合軍に接収され、第5空軍司令官ホワイトヘッドの官邸となり、続いて26年4月からは、極東総司令官リッジウェイの官邸として使用された。その後、富士産業(旧中島飛行機)の手を経て、昭和31年に和館及び一部の土地が国の所有となり、翌年、ようやく接収が解除となったのである。

昭和38年、旧前田邸に公園を建設することが決定し、翌年、洋館を東京都が買収、国有地については、東京都に無償貸与され、都はさらに民有地を買い足して、昭和42年7月、旧前田邸は、東京都立駒場公園として生まれ変わった。その後、昭和50年に公園の管理が目黒区へ移管されて現在に至る。

面影を今に残して

公園の完成に先立ち、昭和42年4月には、洋館をそのまま利用した都立近代文学博物館と、和館に隣接して新築された財団法人日本近代文学館とが、同時に開館した。近代文学博物館は、近代文学に関するあらゆる資料を収集・保存・展示するもので、収蔵資料は、明治以降の文芸作家や評論家などの、肉筆の原稿・色紙・書簡類や初版本など約1万3,000点余に上り、年間4万人もの人が訪れた。東京都有形文化財として平成3年に指定されたが、博物館としての使命は平成14年に終えた。

建物の内部は一般に公開されている。(問合せ先 駒場公園洋館管理事務所 電話03-3466-5150)、多少手を加えられたところがあるものの、各室ごとに設けられている暖炉、天井につられたシャンデリアなどは、ほぼ洋館建築当時のままで、華麗な侯爵家の生活を、今もなおしのばせている。和館も、当時の面影を良く残しており、1階は、公園を訪れる人に無料休憩所として昭和49年から開放されている。

こうして、激動の半世紀を見つめ続けてきた旧前田邸は、緑に囲まれた都会のオアシスとして、今日も生き続けている。

旧前田家本邸 洋館

最新の公開状況については下記ページをご確認ください。
旧前田家本邸洋館 (東京都生涯学習情報)

休館日

月曜日・火曜日(ただし祝日の場合は開館)、年末年始(12月29日から1月3日まで)

開館時間

午前9時から午後4時

見学料

無料

洋館についての問合せ先

駒場公園洋館管理事務所 電話番号 03-3466-5150

洋館外観撮影・公園内撮影についての問合せ先

目黒区土木管理課占用係 電話番号 03-5722-9418

旧前田家本邸 和館

最新の公開状況については下記ページをご確認ください。
駒場公園 (道路公園課)

休館日

毎週月曜日。年末年始12月28日から1月4日。(ただし、月曜日が祝日と重なる場合はその翌日)

開館時間

午前9時から午後4時まで

入館料

無料

和館についての問合せ先

目黒区道路公園課公園活動支援係 電話番号 03-5722-9242

旧前田家本邸(駒場公園内)へのアクセス

  • 所在地 目黒区駒場四丁目3番55号
  • 交通 京王井の頭線 駒場東大前駅下車 徒歩8分

旧前田家本邸周辺の地図

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お問い合わせ

生涯学習課 文化財係