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歴史を訪ねて 鷺草(さぎそう)伝説

更新日:2013年10月1日

「歴史を訪ねて」は、「月刊めぐろ」昭和54年6月号から昭和60年3月号の掲載記事を再構成し編集したものです。

鷺草さぎそう

衾ふすまの不思議三つござる 曲り松 鷺草に 竹の二股

大正のころまで、目黒でもところどころに見られた麦畑。収穫時ともなると、クルリ棒で麦の穂を打ちながら歌われた麦打ち歌が、遠く近く聞かれたものである。

この里謡に歌われている鷺草さぎそうとは、ラン科の多年草で、高さ約30センチメートル。夏になると、すらりと伸びた細い茎の頃に、空を舞う白鷺しらさぎにも似た、純白の小さな花を2から3個つける。その姿の可憐さ、不思議さから幾つかの説話が生まれ、今日にまで語り伝えられている。

悲劇のヒロイン 常盤姫

世はまさに戦国時代。各地の大名が兵を起こし、群雄割拠の様相を呈していたころのこと。世田谷から衾村ふすまむら、碑文谷郷一帯は、世田谷城主吉良頼康の支配下にあった。
頼康は、奥沢城主大平出羽守の娘常盤ときわ姫を側室として迎えた。やがて、常盤ときわは子をみごもったため、頼康はことのほか常盤ときわをいつくしむようになった。

血筋を絶やしてはならない大名のしきたりに従って、頼康には、常盤ときわのほかに12人の側室がいた。彼女たちは、頼康を一人占めにする常盤ときわをねたみ、「常盤ときわ様のお子は、殿のお子かどうか疑わしい」などと、まことしやかに頼康につげ口し、常盤ときわへの愛情を妨げようとたくらんだ。常盤ときわの悪いうわさを、頼康は否定しながらも、心の中にはいつの間にかどす黒い疑惑の霧がたち込めていった。自然と常盤ときわへも冷たい仕打ちをするようになった。

とりなしてくれる者も無く、悲しみに暮れた常盤ときわは、「いっそ死んで、身の潔白の証しにしよう」とまで思いつめた。奥沢城の父にあてて遺書をしたためると、小さいころからかわいがって、輿こし入れの際にも一緒に連れて来た、1羽の白鷺の足に結びつけ、奥沢の方角へ放った。

主人のただならぬ様子をさとったかのように、白鷺は奥沢城目指してまっしぐらに飛び去った。ちょうどそのころ、衾村ふすまむらで狩りをしていた頼康は、この白鷺を見つけ射落としてしまった。みると、足に何やら結びつけてある。不審に思って開いてみると、姫から父へ覚悟の自殺を報じた文であった。驚いた頼康は、急ぎ城に帰ったが、時すでに遅く常盤ときわは自害し果てた後であった。傍らには、死産の男の子の姿があった。

疑いは晴れたが、もう常盤ときわも子も戻っては来ない。深く後悔した頼康は、せめてもの償いにふたりの霊を慰めようと、領内の駒留こまどめ八幡宮に若宮と弁財天を祀ったのである。
一方、使命半ばにして倒れた白鷺は、よほど無念だったのか、その地に鷺の飛翔する姿の花を咲かせる草になったという。

白鷺 密書を運ぶ

いつのころか、吉良氏の世田谷城が敵軍に包囲されたことがあった。奥沢城主大平出羽守おおだいらでわのかみに援軍を頼みたいが、ありのはい出るすきもない。そこで、日ごろ飼い慣らしておいた1羽の白鷺に、密書を結びつけて放った。しかし、白鷺はあんまり一生懸命に飛んだので、奥沢城の近くまで来ながら力尽きて落ちてしまった。以来、その地に鷺草が群れ咲くようになったという。

伝説の花となり

鷺草は、湿地に生えるため、区内でも田んぼがあった大正時代の終わりころまで、あちらこちらに見られたという。衾村のふすまむら谷鷺草やのさぎそう(現在の自由が丘二丁目・三丁目付近)や奥沢新田村の鷺の谷などの旧小字名のあった所には、特に群生していたのだろう。いずれも、白鷺が射落とされた、または、力尽きて落ちた所との言い伝えがある。

宅地開発が進み、住み家である湿地が無くなって、鷺草は文字どおり伝説上の花となり、園芸植物としてしか見られなくなってしまった。

建てられたという、九品仏浄真寺くほんぶつじょうしんじ(世田谷区奥沢七丁目41番3号)の一角には、鷺草園がある。花の見ごろは、8月上旬から中旬。緑陰に映える純白の鷺草の花は、伝説のイメージを彷彿ほうふつとさせるほど美しい。

「風が吹き 鷺草の皆 飛ぶが如」高浜虚子

九品仏浄真寺へのアクセス

  • 所在地 世田谷区奥沢七丁目41番3号
  • 交通 東急大井町線九品仏駅下車、徒歩3分

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