更新日:2015年8月16日

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区内の活気ある事業所をご紹介します 第2回「株式会社カツミ」

日本トップクラスの鉄道模型メーカー

所在地

目黒区下目黒三丁目10番5号

代表取締役

酒井 悦一

電話番号

03-3711-7738

ホームページ

鉄道模型のカツミ


株式会社カツミの酒井社長

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海外の子供の心もとらえた鉄道模型

国内トップクラスの鉄道模型メーカーとして知られる、株式会社カツミ。昭和22年(1947年)に港区高輪で創業、昭和58年(1983年)に目黒区下目黒に本社を移転して以来、この地で鉄道模型の企画・設計・製造を手掛けてきました。現在の主力製品は16番ゲージ(注)の金属(真鍮)製鉄道模型。実物を忠実に再現し、一つひとつ手作業で丁寧に作りあげられる、精微かつ堅牢な模型は、鉄道模型マニア垂涎の品。1両あたり数万円する高価な品でありながら、国内外の愛好家の心をとらえてやみません。(注16番ゲージ=日本国内における鉄道模型の縮尺と軌間を示す規格名称で、縮尺1/76-1/87(1/80)・軌間16.5mmのものを指す)
カツミの原点は、酒井悦一・現社長の祖父が営んでいた、子ども向けゴム動力飛行機の製作所。「戦後、GHQにより飛行機の製造が禁止されたため、何か代わりに子どもを喜ばせるものを作ろう…ということで、戦地から復員してきた父が鉄道模型の製作を始めました。父は技術者ではありませんでしたが、人心掌握術に長けた人物で、各分野の技術者を集め、すぐに模型の生産体制を整えたのです」と酒井社長。販売開始から間もなく、カツミ製の模型はGHQの将校が母国に持ち帰る土産品として評判を呼び、アメリカに輸出されるようになりました。「当時はまだアメリカも鉄道が長距離移動の主要手段だった時代。アメリカの子どもたちの間でも鉄道模型は人気だったのです」。もちろん、日本の子どもたちの間でも鉄道関係の玩具は大人気。カツミも昭和30年代には普及版として子ども向けの「鉄道模型セット」を販売していました。酒井社長は「当時、うちの商品は男の子の間でとても人気がありました。僕も小学校時代に友人の家に遊びに行ってうちの商品があると、鼻が高かったものです」と振り返ります。


歴代の作品群

社員の英断が支えたブランド力


最近のヒット商品

ところが昭和50年代に入ると、少しずつ事情が変わってきました。Nゲージに代表されるプラスチック製の安価でコンパクトな商品が相次いで発売されるなど、大量生産・大量消費の潮流に鉄道模型業界も影響を受けるようになってきたのです。酒井社長が大手都市銀行を退職し、カツミに入社したのは、ちょうどこの頃のこと。「先代の社長だった父が体調を崩したため、予定よりも早くカツミに入社しました。銀行で数字の大切さを叩きこまれた私から見ると、当時のカツミの経営は文字通りのどんぶり勘定。しかも売り上げは減少しつつありました。すぐに経営を改善しなければ、社の存続も危うい状態だったのです」。すぐに酒井社長は思い切ったリストラと拠点の統合を決行、7年がかりで経営状態を建て直すことに成功しました。「すべては一緒に頑張ってくれた社員のおかげ。思えばあの当時、当社もプラスチック製品に切り替えることは可能でした。実際、海外の企業から誘いを受け、現地工場を視察に行ったこともあります。でも社員は、大量生産路線への転換に反対してくれました。もしあのとき転換していたら、今のカツミはなかったはず。金属製の『模型らしい模型』にとことんこだわる道を選んでくれた社員たちの情熱に、心から感謝しています」と酒井社長。あえて時代の流れに乗らない英断があったからこそ、カツミならではの個性が維持されたのです。


CADを使った図面制作

 

鉄道模型を日本が誇る文化に


組立工程の様子

そして現在、カツミは日本最高峰の鉄道模型ブランドとして確固たるポジションをキープ、近年では一般ユーザー向けの鉄道模型だけではなく博物館展示用の鉄道模型・ジオラマ、建築模型の製作まで幅広く手掛けるメーカーへと成長を遂げています。成長をリードする酒井社長は常に社員を信じることを経営のモットーとしてきました。「私は学生時代ラグビー選手だったのですが、ラグビーは前に向かって走りながら、後ろを走るチームメイトにボールを投げるスポーツです。チームメイトを信じないと勝つことはできません。経営もこれと同じで、社員を信じて、一緒に走り続けないと負けてしまいます」と酒井社長。同時に社員の力を重視するからこそ、社員教育が目下の課題でもあるといいます。「うちの社員は鉄道や模型が大好きで入社してくる者がほとんどです。専門性が高いのは素晴らしいのですが、その専門性を活かせるコミュニケーションスキルやプレゼンスキルをもっと磨いていく必要があります」。今後は研修などを通じて社員教育に力を入れていく予定だといいます。
もう1つ社長が力を入れているのが、顧客との対話の機会を増やすこと。「時間の許す限り店舗やイベント会場に自ら足を運び、お客様の生の声を頂いています。うちのお客様は私たち以上に鉄道や模型にお詳しいので、お叱りやご意見を頂くことが多く、それが次の製品づくりのヒントになっています」とのこと。「今後の課題は、そういった目の肥えたお客様に愛され続ける質の高い模型を作り続けること。そして鉄道模型を1つの文化として日本に広く普及・定着させることです。大量生産大量消費ではない、日本ならではのこだわりのものづくりの在り方を、これからも追及していきたいと思っています」。

お問い合わせ

産業経済・消費生活課 中小企業振興係

ファクス: 03-3711-1132

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