目黒区保健医療福祉計画、介護保険事業計画及び障害者計画改定の基本的な方向について(答申) 令和5年9月 目黒区地域福祉審議会 はじめに  令和4年7月、目黒区地域福祉審議会は、区長から、保健医療福祉計画、介護保険事業計画及び障害者計画の改定に当たっての各計画の方向等について諮問を受けました。令和5年9月までに7回の会議を開催し、社会情勢の変化に対応した各計画の方向性を打ち出すため、区の現状や国・都の動きを踏まえた検討を重ねてきたものです。  この間、小委員会である「計画改定専門委員会」から、各計画の基本理念と福祉分野の重点事項について検討結果の報告を受けるとともに、目黒区障害者自立支援協議会から障害者計画改定に関する意見が提出され、障害福祉分野の課題及び取組の方向性の検討の参考としました。  こうした検討を経て、令和5年6月に当審議会は、「中間のまとめ」を区長に提出するとともに、広く公表し、区民の皆さんから多くのご意見をいただきました。7月末に開催した「地域福祉を考えるつどい」では、目黒区におけるこれからの地域福祉の目指す方向について、区民の皆さんや関係者の方と意見を交わし、ともに考える機会を設けたものです。  これまでにいただいたご意見を参考に、3計画改定の基本的な方向を取りまとめ、答申をいたします。  新型コロナウイルス感染症の感染拡大をはじめとする社会経済状況の変化が、区民生活にさまざまな影響を及ぼし、経済的な困窮とともに、既存の制度では対応が困難な複雑化・複合化した課題を顕在化させています。その背景には、人と人とのつながりや、社会とのつながりが希薄になる孤独・孤立の状態があると考えられ、福祉分野の枠にとどまらない包括的な支援と包摂的な地域づくりを目指す「地域共生社会」の実現が一層求められています。  当審議会では、「地域共生社会」の実現の推進を検討の基本に据え、地域福祉、高齢者の介護・福祉、障害者福祉等について今後の方向性を示すとともに 喫緊の課題となっている介護福祉人材の確保・定着・育成に関して議論を重ね、新たな視点からの提案を行いました。  この答申は、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)の視点に立ち、高齢者や障害者等を対象に区が実施した実態調査の結果を反映させるとともに、各事業の実施状況等をまとめた資料編を添付しています。実態調査の対象とすることが難しい、複雑な事情を抱えて支援を必要とする人の状況を把握するため、支援担当所管や社会福祉協議会に事例を含めた支援状況等の提供も求めて作成したものです。  区は、本答申、及び当審議会に寄せられた意見等を踏まえ、区民の皆さんの多様化・複雑化する福祉・介護ニーズを的確に受け止めて、保健医療福祉計画等3計画の改定を進めることを望みます。 令和5年9月 目黒区地域福祉審議会 会長 石渡和実 目次 T 各計画の基本理念について 1 保健医療福祉計画 2 介護保険事業計画 3 障害者計画 U 福祉分野の重点事項について 1 地域共生社会の実現の推進 (1)包括的な支援体制の充実 @包括的相談支援体制の充実 A地域における支え合いの推進 B福祉教育の推進 (2)誰もが安心して地域で暮らせる社会の推進 @生活困窮者の自立支援の充実 A住まいの確保 B多様な生活課題への分野横断的な支援 C社会的孤立・孤独への対応 D認知症施策の推進 E権利擁護の推進 F災害時要配慮者支援の推進 (3)地域包括ケアシステムの深化・推進 @地域包括支援センターの機能強化 A介護福祉サービス基盤の整備と家族介護者への支援の充実 B生活支援サービスの充実 C在宅医療と介護・福祉の連携 D介護・福祉人材の確保・定着・育成とサービスの質の向上 2 生涯現役社会・エイジレス社会の推進 (1)介護予防・フレイル予防の推進 (2)社会参加・居場所づくり・就労支援の推進 3 障害への理解促進・障害のある人への支援の充実 (1)身近な地域で暮らし続けていくことができる仕組みづくり (2)誰もが社会に参加し、貢献することができる仕組みづくり (3)ともに暮らすまちづくりの実現 (4)障害のある児童の健やかな成長のための発達支援 巻末資料 ・目黒区長からの諮問 ・目黒区地域福祉審議会委員名簿 ・審議経過 ・用語解説(50音順)(本文中に※を付けた用語について解説しています) T 各計画の基本理念について 1 保健医療福祉計画  区は、令和3年3月の計画改定において、前年の地域福祉審議会答申に基づき、福祉改革の基本となる「地域共生社会※」の実現を目指すことを基本理念に明記した。  人と人、人と社会がつながり、一人ひとりが生きがいや役割をもって、助け合いながら暮らしていくことのできる「地域共生社会」は、今後も実現に向けて取組を推進していくことが求められる。  また、現行の「個人の尊厳と人間性の尊重」を基盤とした「自立生活の確立」、「健康寿命※の延伸」、「地域の支え合いの推進」の3本の柱は、全ての区民を対象に保健医療福祉施策を総合的に推進する本計画の根幹となる理念である。  したがって、次期計画の基本理念については、引き続き「地域共生社会」の実現を中核に位置づけて、基本的には現行計画の基本理念を継承することが望ましいと考える。  そのうえで、地域共生社会の理念(※1)、令和3年3月に改定された目黒区基本構想が示すまちの将来像の考え方(※2)、及びSDGsの視点(※3)などを踏まえ、基本理念に基づく施策を推進する「基本的な考え方」に新たな視点を加えることが望ましいと考える。 (1)基本理念 「地域共生社会※」の実現に向けて、だれもが住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることができるように、「個人の尊厳と人間性の尊重」を基盤とした、「自立生活の確立」、「健康寿命※の延伸」及び「地域の支え合いの推進」を基本理念とします。また、以下の基本的な考え方に沿って施策を推進します。 (2)基本的な考え方 ・お互いの存在と人格を尊重し、多様な価値観を認め合って、だれもが平等に大切にされる地域社会をつくる。 ・だれもが生きがいと役割をもち、自分らしく活躍できる地域社会をつくる。 ・だれもが暮らしの中で直面する様々な困難について身近な場で安心して相談ができ、その人に寄り添った包括的な支援を受けることができる仕組みを確立する。 ・だれもが自らの意思が尊重され、自立した生活を送ることができるよう、保健・医療・福祉などの担い手の確保・育成に努め、必要なサービスが切れ目なく総合的に提供されるようにする。 ・だれもが生涯にわたり健康で活力あふれる生活を送ることができるよう、ライフステージ※や心身の状態に応じた健康施策を推進する。 ・人と人、人と社会がつながり、互いに支え合いながら、だれもが孤立することなく安心して暮らすことができる地域社会を、区民と事業者、区が共に力を出し合ってつくる。 ・「支える側」「支えられる側」という関係を超えて、だれもがもつ力や個性を生かして地域づくりに参加するとともに、保健医療福祉に関する政策形成過程に参画する機会を充実する。 (※1)地域共生社会の理念 高齢・介護・障害、子ども・子育て、生活困窮などの制度・分野の枠や「支える側」「支えられる側」という関係を超えて、人と人、人と社会がつながり、一人ひとりが生きがいや役割を持ち、助け合いながら暮らしていくことのできる、包摂的なコミュニティ、地域や社会をつくるという考え方。 (※2)目黒区基本構想(令和3年3月改定)における、まちの将来像の考え方(抜粋) 「多様な区民が暮らすまちだからこそ、多様性が生かされ、誰一人取り残されることなく、安心して生き生きと自分らしく暮らし続けられる地域社会を、区民と区が共に力を出し合って築いていくことが求められます。」 (※3)SDGsの視点 2015年(平成27年)の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が掲げた17の持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals))は、2030年(令和12年)を達成年限として、「誰一人取り残さない。持続可能で多様性と包摂性のある社会」の実現を目指している。 2 介護保険事業計画  介護保険制度は、加齢により介護が必要な状態となっても個人の尊厳を保持し、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うとともに、「家族が担う介護」から「社会全体で担う介護」を実現していくために設けられたものである。制度の目指すところは創設時から変わっていないが、制度改正を重ねていく中で、保険者に求められる役割が拡充するとともに、保健医療分野との連携など、新たな施策の展開が求められているところである。  介護保険事業計画の基本理念は、地域福祉計画と老人福祉計画の性格を併せ持つ目黒区保健医療福祉計画との一体性を保つものであることを踏まえて定めているため、基本的には現行の基本理念を継承することが望ましいと考える。  また、基本的な考え方についても、介護保険法の根底にある基本的な考え方を示したものであるため、大きな見直しが想定されるものではないが、前述の状況及びこれまでの本委員会での検討内容を踏まえ、一部変更することが望ましいと考える。 (1)基本理念 この計画は、地域福祉計画と老人福祉計画の性格を併せ持つ目黒区保健医療福祉計画との一体性を保つものであることを踏まえ、基本理念を次のとおりとします。 『住み慣れた地域で自分らしく暮らし続ける』 (2)基本的な考え方 ○区民の共同連帯 区民の共同連帯の理念に基づき、要介護者やその介護をする家族等を地域社会全体で支えます。 ○地域福祉の一環としての制度の運営 住まい、医療、介護、予防、生活支援が一体的に住み慣れた地域で提供される「地域包括ケアシステム※」の推進を基本に、区民・行政をはじめとする関係者の協働による地域福祉の一環として、介護保険制度を運営します。 ○自立支援と介護予防 高齢者が個人の尊厳を保持し、その有する能力・状態に応じて、社会に参加しながら自立した日常生活を営むことができるよう、保健事業等との連携を図りながら要介護状態の発生や重度化を可能な限り防ぎ、さらには軽減を目指す介護予防の観点に立った施策を推進します。 ○保険者機能の強化 区の実情に応じた事業を効果的に展開するとともに、PDCAサイクル※に沿って事業の実施状況を検証し、取組内容の改善を図ります。また、介護サービスが介護保険制度の目的に沿って提供されるよう、給付の適正化等に取り組みます。 ○サービスの充実 サービスの質の向上を図るため、事業者の人材育成や人材確保への支援を行うとともに、介護サービス事業者等と連携を図り、地域住民等の多様な主体による多様なサービスの充実を図ります。 ○利用者本位と利用者保護 利用者が必要とするサービスを利用者自らが適切に選択できるよう、また、事業者間の適正な競争の下で良質なサービスが提供されるよう、区民等に向けて介護サービス情報を積極的に提供します。 事業者との契約によるサービス利用において、自らが契約することが困難な人を含め、すべての利用者がサービスを受ける上で不利益を被らないよう、利用者等からの苦情に適切に対応するとともに、事業者指導を強化します。 ○介護サービス基盤の整備 住み慣れた地域で必要なサービスが利用できるよう、民間活力の積極的な活用により、介護サービス基盤の整備を進め、必要なサービス供給量を確保します。 ○公平で公正な負担 負担と給付を明確にし、そのバランスを図り、公平で公正な負担に基づき制度を運営します。 3 障害者計画  現行計画の基本理念は、障害者権利条約の趣旨に沿って障害者基本法に位置付けられた「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」といった目的や、SDGsの視点(※1)も踏まえたものである。  また、令和4年12月の障害者総合支援法等の改正などの国の動きや、障害者自立支援協議会から提出された「障害者計画改定に関する意見」にも即した内容となっており、基本的には現行計画の基本理念の方向性は継承する。そのうえで、障害の人権モデル(※2)を踏まえ、障害者が必要な支援を受けながら自己決定に基づき社会のあらゆる活動に主体的に参加するために、障害を理由とした差別の禁止や偏見の払拭、社会参加を制約する社会的障壁を除去していくことを基本として、これまで進めてきた施策を一層推進していくことが望ましいと考える。  一方で、令和5年3月に公表された国の障害者基本計画(第5次)においては、共生社会※の実現に向け、「社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティ(※3)向上の視点」が重要とされていることから、本計画においては、すべての人にとって分かりやすい内容であることを重視する必要がある。  これらの状況を踏まえ、次期計画の基本理念については、障害者権利条約や障害者基本法の趣旨を踏まえた障害者施策を進めていくにあたり、根幹となる考え方を簡素・簡潔に表現することに配慮し、以下のようにすることが望ましいと考える。 (※1)SDGsの視点:2015年(平成27年)の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が掲げた17の持続可能な開発目標(SDGs)は、2030年(令和12年)を達成年限として、「誰一人取り残さない。持続可能で多様性と包摂性のある社会」の実現を目指している。 (※2)障害の人権モデル:人間が本来持っている尊厳に焦点を当て、その後必要な場合に限り、その人の医学的特徴に焦点を当てる。このモデルは、自分に影響するすべての決定において個人を中心に置き、主な「問題」を個人の外、社会の中に置く。 (※3)アクセシビリティ:施設・設備、サービス、情報、制度等の利用しやすさのこと。 (1)基本理念  障害者施策を推進していくことにより目指す社会は、すべての区民が社会の一員として生きがいや役割を持ち、助け合いながら暮らすことができる、誰にとっても暮らしやすい社会にほかなりません。  このため、障害の有無にかかわらず、誰もが等しく基本的人権を享有する個人として尊重されるとともに、相互に人格と個性を尊重し合いながら、住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることができるよう、基本理念は次のとおりとします。 『誰もが自分らしく輝きながら共に暮らせる社会の実現』 (2)基本的な考え方 基本理念の実現に向け、以下の考え方に基づいて施策を推進します。 ○自己決定の尊重 障害のある人が社会のあらゆる活動に主体的に参加するために、本人の自己決定を尊重し、自らの意思で望む生活のあり方を選択・決定し自己実現できるよう、意思決定の支援を行う。 ○政策決定過程への参加・参画 障害のある人は、障害者として生きてきた経験を活かして、社会に貢献をすることができる社会の一員であり、障害者施策に係る政策決定過程においては、障害者の意見を反映し、参加・参画ができるよう留意する。 ○切れ目ない横断的な支援 保健・医療・福祉をはじめとした各分野連携のもと、地域で安心して暮らしていくための適切なサービスの確保と質の向上を図り、障害のある人とその家族に対し、ライフステージ※や障害特性に応じた切れ目のない横断的な支援を行う。 ○社会的障壁の除去 障害理解・差別解消の推進、物理的障壁、情報取得・利用や意思疎通に係る障壁など社会参加の妨げとなる社会的障壁をなくし、障害のある人があらゆる場面で個性豊かに輝ける環境づくりを行う。 U 福祉分野の重点事項について 1 地域共生社会の実現の推進  「地域共生社会※」の理念は、高齢・介護、障害、子ども・子育て、生活困窮などの制度・分野の枠や「支える側」「支えられる側」という関係を超えて、人と人、人と社会がつながり、一人ひとりが生きがいと役割を持ち、助け合いながら暮らしていくことのできる、包摂的なコミュニティ、地域や社会をつくるという考え方である。  複雑化・複合化した課題や公的支援制度の狭間にある課題を抱えながら、必要な支援を受けられず、社会から孤立する傾向にある人を受け止め、適切な支援につなげられるように包括的な支援体制のさらなる充実が必要である。  地域社会からの孤立を防ぐとともに生活の安定と自立を支援し、地域における暮らしの中での支え合い、多世代の交流や多様な活躍の機会と役割を生み出すなどの支援が求められている。個人の尊厳を尊重し多様性を認め、個々の人々に寄り添って、その人がもつ力を引き出していくことと、その人の環境である家庭や職場、地域社会が内包する課題を解消する取組が必要である。 1-(1)包括的な支援体制の充実  平成29年の社会福祉法等の改正により、地域住民の抱える多様な課題を包括的に支援する体制の整備が区市町村の努力義務となり全国的に取組が進んだ。  令和元年12月には、国の「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」(地域共生社会推進検討会)の最終報告において、包括的な支援体制の構築を推進するため、「断らない相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」を一体的に行うことが、今後の方向性として示された。この方向性をもとに令和2年6月に社会福祉法等が改正され、区市町村による包括的な支援体制を整備するための施策を具体化する事業として、「重層的支援体制整備事業※」が創設され、令和3年4月から施行されている。  地域共生社会※の実現に向けて、包括的な支援体制を充実させていくためには、相談支援体制の充実とともに、地域の支え合いを推進する地域づくりを一体的に進めること、あわせて人権と多様性を尊重する包摂的な地域社会の形成を目指す福祉教育を推進することが重要である。 @包括的相談支援体制の充実 現状 ワンストップ型の相談支援体制 ○目黒区では、高齢者を中心に推進してきた地域包括ケアシステム※の取組を、障害者、子ども等への支援、複合課題にも広げ、5地区にある地域包括支援センター※を「身近な保健福祉の総合相談窓口」に位置づけて、包括的な相談支援に取り組んできた。 ○ひきこもり※や8050問題※など、公的支援制度では対応しきれない「狭間」にある課題や複雑化・複合化した課題の解決に向け、分野を超えた包括的な相談支援体制を構築するため、平成31年4月に福祉分野の相談支援の中核を担う福祉総合課を設置した。同課に「福祉の総合相談窓口(福祉のコンシェルジュ)」を開設して、関係機関と連携を図りながら、相談者に寄り添い、断らない相談支援を行っている。「福祉の総合相談窓口」のもとには、保健福祉に関する相談を行う「ふくしの相談」と生活困窮に関する自立相談支援機関の役割を担う「くらしの相談」が設置され、緊密な連携が図られてきた。 ○これらに加え、令和4年4月には、地域包括ケアシステムの理念を踏まえ、新たに住まいと生活支援の相談を一体的に行う、福祉型の「住まいの相談」を開始し、ワンストップ型の相談支援体制の充実を図っているところである。 【福祉の総合相談の実績・現況】 詳細は、資料編1ページ「1 福祉の総合相談の実績・現況」を参照 ○新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、令和2年度の相談が経済的困窮に関するものが突出して多くなっており、全体の相談件数を急激に押し上げた。複合的な課題を抱えているケースは全体の8割以上となっている。 職員の資質向上の取組 ○相談支援にあたる職員の資質向上にも力を入れて取り組んでいる。福祉の総合相談窓口や地域包括支援センター※をはじめ、障害や子育てなどの相談支援機関、区の関係機関の職員及び社会福祉協議会や福祉施設の職員が、制度横断的な知識やアセスメント※力、調整力等を身に付け、ソーシャルワーク機能を向上できるよう、区健康福祉部の人材育成プログラムに基づき、体系的な職員研修を実施している。あわせて、外部研修も積極的に受講し、社会状況の変化に対応した適切な相談支援を行えるよう職員の能力育成に努めている。 コミュニティ・ソーシャルワーカーの活動 ○このような行政の総合相談窓口による包括的な支援とともに、令和3年4月に、区は社会福祉協議会にコミュニティ・ソーシャルワーク事業を委託した。同事業では、コミュニティ・ソーシャルワーカー※がアウトリーチ※により、潜在化しがちな、支援を必要とする人々を地域の中から見つけ、その人を取り巻く環境に着目しながら、個別の生活に寄り添った伴走型の支援を行っている。また、必要に応じて行政や専門機関等による課題解決に向けた支援につなげている。こうした個別支援を通して、地域の課題を把握し、地域資源の開発や地域のニーズに応じた支え合いの仕組みづくりに取り組んでいる。 【コミュニティ・ソーシャルワーカーの活動の実績・現況】 資料編5ページ「2 コミュニティ・ソーシャルワーカーの活動の実績・現況」を参照 区民が求める相談支援 ○このように目黒区では、包括的な相談支援体制の構築に積極的に取り組んでいるが、実際には、「どこに相談すればよいか、わからない」「何を相談するのか、整理ができない」、そもそも「相談してもよいと考えられない」「助けてと言えない」といった、相談の手前で立ち止まってしまう事例が多くあると考えられる。こうした不一致をどう解消するのか、相談窓口の周知にとどまらない幅広い対策の検討が必要である。 ○また、突然の失職や収入減少、緊急の入院・介護など、自身の生活や家庭環境が急激な変化に見舞われたとき、何をすればよいか、何から手を付ければよいかがわからず途方に暮れてしまう場合が多い。急変時の相談先や本人や家族が対応する際の手順が見えていないという問題がある。 ○分野横断的な支援を行うとしても、公的支援制度の狭間にある課題への対応は容易ではない。既存の制度を利用できない中で、どのような支援が可能か、多様な専門職や支援者が連携して工夫し、対応することが求められる。 取組の方向性 連携強化・職員の資質向上 ○今後も、属性や世代を問わない包括的な相談支援を福祉の総合相談窓口を中心に取り組み、相談者に寄り添い関係機関との連携を強化して、分野を超えた課題の解決に取り組む体制の充実が必要である。高齢・介護、障害、子ども、生活困窮等の各分野における関係機関や地域の関係者によるネットワークの活用と、さらに分野を超えた重層的な支援の仕組みを構築し、課題解決に取り組むことが求められる。 ○医療や債務整理などの問題から始まり、それが福祉・介護なども含めて複合化すると、より困難な問題になることがある。誰もがこうした複合的な課題をもつことが潜在的にあり得ると考えて、どんなことでも相談できる場を充実させ、問題が深刻化する前に適切な支援につなげる予防的な取組が必要である。 ○福祉の総合相談窓口や地域包括支援センター※などの総合相談を担う機関だけでなく、最初に相談した窓口で、複合的な課題等を抱える人に対しても、その人の状況を的確に把握して、わかりやすく説明し、適切な支援につなげていくことが必要である。それには、各相談支援機関においてソーシャルワーク機能が発揮できるよう人材育成プログラム等を通じて職員の資質及び能力の向上に一層取り組む必要がある。また、そうした取組への区の支援も望まれる。 相談支援の周知・見える化・学習機会の提供 ○相談支援が効果的に機能するためには、支援を必要とする人が相談につながるように、「福祉の総合相談窓口」や地域包括支援センター※、コミュニティ・ソーシャルワーカー※などの相談支援機関の積極的な周知が重要である。めぐろ区報が全戸配布になり、情報が伝わりやすくなったが、さらにきめ細かな周知が求められる。「ここに相談すれば、必ず受け止め、一緒に考えてくれる」といったPRが不可欠である。また、相談からつながる支援やサービスの提供について、流れが分かるように事例を紹介し、サービスの具体的な内容を示すなど、「見える化」することも求められる。 ○相談窓口の周知と合わせて、福祉や介護の制度、サービスの基礎知識を、区民が日頃から身に付けられるようにする取組も必要である。現在、地域包括支援センターが行っている地域の出前講座のような学びの場を広く実施すること、SNSや学校での福祉教育の活用も検討し、急変時にどこに相談すればよいか、その先の支援に至る経過を見通せる力を持てるようにすることが大切である。 ○あわせて、困りごとや生きづらさを抱えているときは、「相談してもいい」「助けを求めてもいい」という、援助を受け入れる「受援力」を持てるようにする啓発活動や、SNSなど世代の特性に配慮した相談の手段や機会を提供することにより、区民一人ひとりが相談支援にアプローチしやすくすることも必要である。 ○当然のことながら、地域包括支援センター職員やコミュニティ・ソーシャルワーカーによるアウトリーチ※支援の充実や支援団体との連携により、潜在化しがちな、支援ニーズの把握に努めることは欠かせない。また、住民に身近な存在である民生・児童委員などが、地域の支援を必要とする人を専門の支援機関につなぐ役割を果たせるよう、日頃の関係構築に向けた区の支援も必要である。 急変時・狭間の課題への対応 ○相談支援機関においても、急変時に迅速かつ適切な対応ができるよう、事例の検証・研究などを進め、関係する専門機関や支援団体との連携を強化して実効性のある対応をすることが求められる。 ○制度の狭間にある課題への対応としては、基本的には、社会の変化に応じて多様な生活実態に対応できる制度に見直すことが必要であるが、目黒区独自の支援策や制度利用の要件緩和などの検討も必要と考える。それが難しい場合、あるいは実施までの間、補完する支援策を関連分野の専門職や支援団体等と連携して検討し取り組むことが求められる。その際、地域資源の活用も視野に入れた検討が必要である。 相談支援機関・地域との継続的なつながり ○こうした相談支援は、短期間で終わるものばかりではなく、また、目の前の困りごとが解決しても、地域社会から孤立している状態が続く場合もある。本人と相談支援機関が継続的につながる仕組みづくりや、複数の支援機関の調整を担う多機関協働の取組とともに、コミュニティ・ソーシャルワーカー※や支援団体などによる地域活動への参加支援、そのための地域づくりなどの取組も必要となる。 重層的支援体制整備事業の実施に向けた検討 ○国の「重層的支援体制整備事業※」の導入は、目黒区が進めてきた包括的な支援体制をより充実させるものと考える。その際、重要なのは、相談支援や多機関協働の実効性を確保することと、地域住民の関心を高め、それを基盤とした持続可能な地域づくりを進めていくことである。目黒区は、福祉の総合相談での成果を生かして、目黒ならではの体制を構築することを期待する。関係機関等との調整を進め、速やかに実施することが望ましい。 A地域における支え合いの推進 現状 つながり、支え合いの必要性の高まり ○高齢化・核家族化が進む中、人々の暮らしや地域の在り方は多様化し、血縁・地縁といった共同体機能が弱まり、地域の中で身近な生活課題への支援を必要とする人が一層増えることが見込まれる。 ○さらに、新型コロナウイルス感染症の社会・経済活動や個人の行動に与える影響の長期化に伴い、生活の様々な場面で困難や不安に直面する人が増加し、社会から孤立する傾向にある。地域における、つながりや支え合いの必要性はこれまで以上に高まっていると考えられる。 生活支援体制整備事業の実施 ○平成27年の介護保険制度の改正により、地域住民やボランティア等、多様な担い手による多様な生活支援サービスの創出を目指して、生活支援体制整備事業が創設された。目黒区では、区内5地区(日常生活圏域)で、社会福祉協議会の生活支援コーディネーター※が地域資源の把握と地域住民の関係づくりを進めるとともに、住民主体で運営する地域の話し合い・連携の場である協議体で、地域課題の共有、地域住民やボランティア等による生活支援サービスの創出に向けた取組が行われている。 ○コロナ禍で交流事業等が制限される中で、いくつかの協議体では、地域住民に向けた通信を発行している。その中で、ふれあいサロンや子ども食堂などの地域の支え合い活動や担い手を紹介すると ともに、困りごと、悩みごとの相談先などを伝えている。 ○令和3年度から社会福祉協議会に委託して始まったコミュニティ・ソーシャルワーカー※の活動は、地域資源の把握・開発や地域活動の支援などにおいて、生活支援コーディネーターの活動と重なるものが多い。現在、両者は兼務体制をとっている。 地域の多様な支え合い活動 ○区では、中高年を対象とした地域活動のきっかけづくりや高齢者が生活支援の担い手として活躍する「めぐろシニアいきいきポイント事業」、地域を緩やかに見守る「見守りネットワーク※」、区の養成講座を受講した認知症サポーター※による見守り支援等の事業を実施している。これらの取組を通じて、地域における支え合い活動を推進している。 ○また、民生委員・児童委員※が区民と行政、関係機関とのパイプ役として支援や保護につなげる活動を行っているほか、社会福祉協議会では地域活動に関心を持つ区民と活動団体を結びつける取組などを行っている。 ○ミニデイサービス・ふれあいサロンは、高齢者や障害のある人をはじめ、誰でも気軽に参加できる「交流の場」で、地域住民がボランティアでグループをつくり、企画・運営をしている。社会福祉協議会の登録団体で、令和4年4月現在、34か所の活動がある。他に、子ども食堂や学習支援など、子どもの育ちを支える活動も区内で展開されている。 ○こうした活動は、コロナ禍での活動制限や自粛生活の影響を受けて、活動の縮小等を余儀なくされたものの、協議体の会合や見守りサポーター養成講座がオンラインで開催されるなど、工夫して活動が続けられ、新たなつながりのあり方が模索されている。 取組の方向性 居場所づくりと担い手の確保 ○地域における支え合いを推進していくためには、多くの住民が地域に暮らす様々な人々について関心を持ち、身近な地域を大切にしようと考えることが欠かせない。住民が気軽に参加できる、また参加しようと思える地域の活動や場が身近にあることが大切である。高齢者や子どもといった対象を限定しない、オンラインの活用も含めた、誰もが気軽に立ち寄れる居場所づくりと、その支援が求められている。例えば、居場所づくりや交流の機会の創出にチャレンジする地域の団体や事業者への助成という支援の方法も考えられる。 ○あわせて、地域活動の担い手の確保が重要である。見守りサポーターや認知症サポーター※などの緩やかな活動の担い手の育成を引き続き進めるとともに、地域活動の拠点づくりや支え合い活動の中心となる人材の確保・育成も必要である。高齢者を含めた様々な世代が地域づくりの担い手として活躍することが大切である。 ○また、支援を受けている高齢者や障害者、子ども、生活困窮者※なども、地域社会の中で役割をもち活躍することができる。障害のある当事者同士の支え合いや、当事者による環境や制度を改善するための発信などが行われており、「支える側」「支えられる側」という関係を超えた取組の推進が欠かせない。 ○人材の確保にあたっては、男性の地域活動への参加促進が有効である。働き方を見直し、女性も男性も働きやすく、地域活動に関わりやすくするという国の方針に賛同していることを、ケア労働にも関連させて、区として発信していく視点が考えられる。また、地域活動の主体としてプロボノ(ビジネススキルや専門知識を活かしたボランティア活動)も大きな可能性があり、地域の中で十分に活用する仕組みづくりも必要である。 生活支援体制整備事業の効果的な推進 ○5地区にある協議体では、地域住民への情報発信を進めながら、多世代に渡る新たな活動従事者や参加者を増やして、支え合い活動のすそ野を広げていくこと、また、住民の地域福祉への知識・理解を深めて、困りごとを抱える人に気付き、コミュニティ・ソーシャルワーカー※などの相談支援機関へのつなぎ役になる人を増やしていくことが期待される。 ○生活支援コーディネーター※とコミュニティ・ソーシャルワーカーは、現在、兼務体制をとっているが、今後も両者の有機的な役割分担により、活動を効果的に進めることが必要である。例えば、生活支援コーディネーターが協議体の運営を通じて地域の個別課題を把握し、コミュニティ・ソーシャルワーカーのアウトリーチ※による個別支援につなげていくことが考えられる。また、個々人の支援ニーズを把握するコミュニティ・ソーシャルワークの活動が協議体や生活支援コーディネーターの活動と連動して、新たな担い手の発掘や養成、地域活動の拠点づくりに取り組むことが効果的である。 福祉施設・社会福祉法人への期待 ○区内には、多くの社会福祉施設や福祉事業所がある。特別養護老人ホームや保育園などは、現在、地域住民の交流の場や子育てのふれあい広場として活用されているが、さらに、他の施設や事業所においても地域の居場所や支え合い活動の拠点として活用されることが期待される。また、社会福祉法人は、これまで培ってきた福祉サービスに関する専門性やノウハウ、地域の関係者とのネットワーク等を生かしながら、社会福祉法に定める「地域における公益的な取組」の実践の一環として、地域の支え合い活動への貢献が期待され、区も支援に取り組むことが必要である。 ○また、民間企業が地域づくりの担い手となることも期待され、そのためには産業経済に関わる部署との庁内連携や社会福祉協議会との連携を図り、積極的に企業にアプローチすることも必要である。 「新たな日常」を踏まえた支え合い ○新型コロナウイルス感染症の拡大を契機とした「新たな日常」を踏まえて支え合いの方法を工夫しながら、民生委員・児童委員※の地域福祉活動を支援するとともに、地域の住民や団体、企業等による主体的な支え合い活動や、そのネットワークづくりを社会福祉協議会と連携して推進していくことが必要である。 B福祉教育の推進 「福祉教育」は、人権尊重の観点に立って、福祉を取り巻く課題を学習し、制度や活動への関心・理解を深めて、誰も疎外することなく共に生きていく力と福祉課題を解決する実践力を身に付けることを目的に行われる活動である。 現状 国内外の動き ○令和3年に、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が改正され、行政機関のみならず事業者にも合理的配慮※の提供を義務付けるとともに、差別解消に関する相談窓口機能の強化を目指している。 ○平成27(2015)年の国連サミットで採択された17の持続可能な開発目標(SDGs※)は、令和12(2030)年を達成年限として、「誰一人取り残さない、持続可能で多様性と包摂性のある社会」の実現を目指すものである。 偏見・差別の現実 ○しかしながら、現実には、障害や疾病、経済的な困窮、国籍、性的指向・性自認などに対する偏見と差別、児童虐待やいじめ、DV等の人権侵害が依然として存在している。さらに、近年では、インターネット上の誹謗・中傷、大規模災害に起因する被災者への偏見や新型コロナウイルス感染症に関連した差別など、社会状況の変化により、新たな人権課題が生じている。 ○困難な生活課題や生きづらさを抱える人々に対する地域住民の無関心や偏見・差別が、地域社会における疎外・排除をもたらしているという状況がある。当事者自身も「人に頼ってはいけない」という意識がはたらき、支援を求められず、社会から孤立して、困難や生きづらさが増していくという状況に陥りやすい。 学び合いと交流の取組 ○こうした状況を受け、偏見や差別、疎外や排除のない地域社会を形成するために、様々な学び合いの活動や人々の交流事業などが行われている。 ○学校では、特別支援学級と通常の学級との交流及び共同学習を実施するとともに、地域のボランティアティーチャーによる福祉体験学習や認知症サポーター※養成講座が行われている。また、社会教育では、多様性と共生社会※などをテーマとする人権尊重の講座が開講されている。これらの、学びの活動を通じて、福祉や人権に関する課題への知識と理解を深め、個性や違いを認め合う意識の醸成が図られている。 ○さらに、感染症対策を図りながら、民生委員・児童委員※の活動をはじめ、地域における見守りや認知症サポーター等の活動、生活支援体制整備事業の協議体※の活動など、多くの地域福祉活動が行われ、それらを通じて相互理解が図られている。 ○東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会関連イベントや障害者施設での各種行事などは、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、直接ふれ合う形態は中止を余儀なくされたが、オンライン形式のイベントやパネル展の開催などにより、障害や障害者への理解を図る、心のバリアフリー※が推進された。 取組の方向性 共生社会に向けた福祉教育の推進 ○障害の有無や年齢、性のあり方、文化や言語等にかかわらず、相互に個性や違いを認めて尊重し合える共生社会※を実現するために、福祉教育の一層の推進が必要である。 ○その第一歩は、地域の住民が、自分の身近には多様な人々が居るということを知ることである。そして、地域に暮らす様々な人々について関心を持ち、例えば障害や疾病、LGBTQ※について、また経済的困窮の背景にあるものについて正しい知識を得ることが必要である。人々が抱える生活上の困難や生きづらさを想像し、理解しようとすること、さらに、それらの困難は、当事者だけの問題ではなく、社会の課題でもあると受け止めること、疎外することなく地域社会の一員として受け入れ、共に生きていこうと考え、行動する力を身に付けること、そうした学び合いの取組が求められる。 日常の中にある学び合い ○福祉教育の基本は、日常の中にある様々な触れ合いや体験を通して、人権と多様性の尊重を実感し、福祉課題を学んでいくものと言える。 ○学校では、引き続き、日常の学習や様々な体験を通して福祉課題への理解を深め、社会の一員として自主的に行動する姿勢を養うとともに、ボランティアティーチャーなどによる支援の技術を身に付ける学習の充実が期待される。 ○また、障害の有無にかかわらず、子どもたちが必要な支援を受けながら共に学び、育つ場や機会のさらなる充実が必要である。 ○社会教育講座の充実とともに、身近な地域で学び合う機会を創出することも必要である。その際には、知識の習得や、障害者・高齢者等の疑似体験と合わせて、当事者が地域で暮らす様子を自らの発信も含めて伝え、生活のしづらさを軽減していく方法を一緒に考える視点が大切である。 ○新型コロナウイルス感染症がもたらした「新たな日常」を踏まえ、オンラインの活用など実施方法を工夫して、多様な人々が集い交流し、時には、懇談や対話の中で地域の福祉課題を共に考える機会がつくられることが望ましい。そのような機会の創出には、地域の福祉施設や活動団体、生活支援体制整備事業の協議体※などの関わりが期待される。 「受援力」を高める取組 ○こうした社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)※の視点に立った取組とともに、助けを求めることができない人が、自らの抱える課題に気付きSOSを表明できるよう、援助を受け入れる「受援力」を高める取組が大切である。区報等の広報媒体の活用や講座の実施とともに、前述の学校での学習、社会教育や地域での学び合いの中で取り上げていくことも必要である。また、SNSを通じて、「一人で解決しようとせず、人に頼ってもよい」「我慢をしなくてもよい、あきらめなくてもよい」「一緒に考えよう」と呼びかけ、具体的な相談窓口や支援策を伝えるといった取組を、行政や専門機関と支援団体が連携して行うことも求められる。 1-(2)誰もが安心して地域で暮らせる社会の推進  長引く新型コロナウイルス感染症の影響に加えて物価の高騰が続く中、地域の中で安心して暮らすことが難しくなっている人々が増えている。経済的な困窮とともに、社会参加の機会が減少し地域とのつながりが保てなくなっている状況が多く見られる。  これまで福祉の相談窓口や支援機関では、主に高齢者や障害者、子どもなどが抱える課題に対応してきたが、女性や若者など相談支援の窓口を利用したことがない人の課題が顕在化してきている。併せて、ひきこもり※や8050問題※、ヤングケアラー※等の複雑な課題を抱えながら必要な支援を受けられずにいる人や世帯が多く存在することが近年明らかになってきた。  こうした課題を抱える背景には、社会からの孤立、あるいは望まない孤独の状態があることが伺える。人と人とのつながりや、社会とのつながりが希薄になる孤独・孤立は、人生のあらゆる場面において誰にでも起こり得るもので、自己有用感が持ちにくくなり、生活意欲の減退を招きやすい。このため、様々な生活課題を引き起こし、心身の健康に深刻な影響を及ぼすことが懸念される。  人と人、人と社会がつながり、一人ひとりが生きがいと役割を持ち、助け合いながら暮らしていくことのできる「地域共生社会※」の実現に向けて、個人の尊厳の尊重を基本に、地域社会からの孤立を防ぎ生活の安定と自立を支援して、誰もが安心して地域で暮らせる社会を推進することが大切である。 @生活困窮者の自立支援の充実 現状 生活困窮者の自立支援 ○国は、生活に困窮するリスクの高い層の増加を背景として、生活保護に至る前の自立支援策の強化を図るとともに、生活保護から脱却した人が再び生活保護に至らないよう、生活保護制度の見直しを行い、生活困窮者自立支援法を制定した。同法は、平成27年4月に施行され、平成30年の改正を経て、生活困窮者※の自立と尊厳の確保及び支援を通じた地域づくりを目指して、早期的・予防的観点に立ち、生活困窮者の包括的・継続的な支援が行われてきた。 ○それは、生活困窮者が抱える複合的な課題をときほぐし、就労を含めた社会とのつながりの回復により生活の向上を図り、本人の自己肯定感を回復していくとともに、地域の活力、つながり、信頼を強めていこうとするものである。 ○これらの取組が進められる中で、長引くコロナ禍が、社会の脆弱性を照らし出し、その影響は世代や属性を越えて広範囲に及ぶこととなった。経済的困窮に加え、外出自粛により人とのつながりが変化し、社会的に孤立を深める人が増加するとともに、コロナ禍以前から生活困窮のおそれがあった人や脆弱な生活基盤のもと暮らしていた人がいかに多く存在していたかを浮き彫りにしたと言える。 ○こうした状況を受けて、令和4年12月、「社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会」は、社会福祉の共通理念である「地域共生社会※」の理念を踏まえつつ、「生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の両制度の発展と課題への対応」、及び「新型コロナウイルス感染症感染拡大による生活困窮への対応の経験も踏まえた課題への対応」の2つの観点から、議論を整理し「中間のまとめ」として公表した。同部会の検討結果に応じて、令和5年以降、関連法の見直しが想定されている。 ○目黒区では、平成31年4月の福祉総合課の新設に伴い、生活困窮者の自立相談支援機関を生活福祉課から福祉総合課に移行した。福祉の総合相談窓口において、生活上の困りごとの相談から生活困窮の早期把握に努め、関係機関と連携した就労支援や家計改善支援等の包括的な支援に取り組んでいる。併せて生活保護制度と生活困窮者自立支援制度を連携させた重層的な相談支援を行い、相談者が抱える生活課題に応じて、双方の相談窓口の調整・連携を図っており、生活困窮に関する相談の状況に応じて福祉総合課と生活福祉課が連携して生活保護受給につなげている。 ○令和5年1月から、社会福祉協議会の生活福祉資金の特例貸付の償還が順次開始する中で、償還に困難を抱える人に寄り添い、その自立に向けて必要な支援や相談支援体制の強化を図ることが求められている。 生活保護受給者の自立支援 ○生活保護受給者が抱える多様で複雑な課題に対応するため、平成17年より、自立支援プログラムが導入され、経済的給付に加え、福祉事務所が組織的に生活保護受給者の自立支援を行う制度への転換を目的として各種取組が行われてきた。 ○目黒区では、区内の生活保護受給者の状況や自立の阻害要因に基づき、自立支援の具体的内容と手順を定めた自立支援プログラムとして、主に@就労支援、A健康管理支援、B高齢者支援、C次世代育成支援、D社会参加支援のプログラムを策定している。 ○これらのプログラムの中から、個々の生活保護受給者に必要なプログラムを本人同意の上決定し、就労や医療等の専門機関やNPOなどと連携して、生活保護受給者が自らの自立のために行う活動を組織的に支援している。 【自立支援等の実績・現況】 資料編9ページ「3 生活困窮者等の自立支援の実績・現況」を参照 取組の方向性 生活困窮者の自立支援 ○生活困窮者※が抱える課題は多種多様であり、孤立した状況の中で複合的な生活課題を抱えている場合が多い。「制度の狭間」に陥らないよう広く受け止め、生活困窮者の自立と尊厳の確保に配慮した包括的な支援策を講じ、伴走型の支援に対応できる体制整備を進めることが重要である。 ○今後の生活困窮者自立支援法等の見直しの動向を注視しながら、就労支援、家計改善支援、健康管理支援、貧困の連鎖を防止する子どもへの支援等、一人ひとりの課題に応じて、福祉分野の枠にとどまらない多様な関係機関が緊密に連携し、適切な支援を行うことが求められる。 ○そのためには、早期的・予防的な支援を含め、適切で効果的な支援を継続できるよう、専門性の高い人材を確保し、育成することが欠かせない。 ○また、生活保護制度と生活困窮者自立支援制度との切れ目のない支援や高齢化の進展に伴う高齢者の相談支援に対応するための関係所管・関係機関との緊密な連携を更に進めていく必要がある。 ○潜在化している生活困窮者を地域で早期に把握・発見し、自立相談支援機関または生活保護相談窓口に適切につなぐことが重要である。そのためには、地域包括支援センター※や社会福祉協議会、子ども家庭支援センター※、民生委員・児童委員※などの関係機関や地域の団体、住民との連携を通じて、地域における課題を「見える化」して共有することや「顔の見える関係づくり」が必要である。その基本となるのは、孤立・孤独に陥っている生活困窮者に対して、社会的なつながりを保てる地域づくりの推進である。 ○具体的には、生活困窮者一人ひとりの状況に合わせた就労や社会参加の場の開拓が望まれる。生活困窮者が地域で孤立せず、「支えられる」だけでなく「支える」側に立つという視点からの取組が必要である。人の役に立つ経験やピアサポート※も含めた仲間づくりと、そのような場づくりを区と社会福祉法人や関係団体などが連携して実現できるとよい。そうした取組のネットワークづくりに区が関わることも大切である。 生活保護受給者の自立支援 ○生活保護受給者が抱える課題は多様であり、自立支援プログラムにより生活福祉課に配置された専門職をはじめ関係部署や関係機関との着実な連携強化を進めながら一人ひとりの課題に応じた自立支援への取組が求められている。 ○就労による経済的自立のみならず、心身の健康を回復・維持し、自分で自分の健康・生活管理を行うなど日常生活において自立した生活を送ること、また社会的なつながりを回復・維持し、地域社会の一員として充実した生活を送ることを目指す効果的かつ有機的な自立支援プログラムの展開が必要である。 A住まいの確保 現状 ○住まいは、人が地域社会とのつながりを保ちながら生活していく拠点であり、その確保は、自立した生活を支える基本となるものである。高齢化の進展や家族構成の変化、コロナ禍での生活困窮者※の急増等、社会経済状況が大きく変化する中で、だれもが住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう施策を進めていく必要がある。 ○低所得者や高齢者、障害者、ひとり親家庭など、住宅の確保に特に配慮を要する「住宅確保要配慮者」は、自力で住まいを確保することが難しい場合がある。様々な支援による住まいの確保が必要であり、行政の福祉部局と住宅部局等の関係部局、地域福祉団体及び不動産団体等による一体的な取組が求められている。 ○目黒区では、令和4年4月から包括的な相談支援機関である福祉の総合相談窓口に住まいの相談員を配置し、生活支援と一体的に住まいの相談支援を行うことで、ワンストップ型の相談支援体制の充実を図っている。相談の大半を高齢者が占め、多くの高齢者が居住地域を変えずに安心して過ごしたいと希望している。また、転居に関わる費用の捻出や転居後の生活維持も含めて生活相談と一体的な相談支援が必要な場合が多く、住まいの相談員が同窓口の相談支援員やケースワーカーと連携して対応している。 ○令和4年5月には、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)」に基づく「目黒区居住支援協議会」を設立し、地域福祉団体、不動産団体、行政が一体となって住宅確保要配慮者の居住支援に関する必要な支援策について専門的な協議を行っている。また、空き家の利活用については、福祉部門と住宅所管が福祉ニーズを踏まえて連携し、区民福祉の向上につながる取組に努めている。 ○また、身体状況や経済状況などによる多様なニーズに応じて住まいを選択できるよう、高齢者福祉住宅の供給、都市型軽費老人ホームや障害者グループホーム※などの施設整備の支援を行うとともに、民間賃貸住宅の情報提供、家賃等債務保証料助成及び家賃助成等を行っている。 【相談及び支援の実績・現況】 資料編11ページ「4 住まいの相談支援の実績・現況」を参照 取組の方向性 ○居住地域や環境が変わることは、地域とのつながりや、かかりつけ医への受診、介護サービスの利用など、生活していく上での様々な影響をもたらす。住まいの確保にあたっては、民間賃貸住宅への入居促進のみならず、健康状況や介護等によりどのような住まいが望ましいのか、本人の意思を尊重しながら、多様な視点での支援が求められる。 ○住宅確保要配慮者は、高齢者、障害者、ひとり親家庭、低所得者等と、非常に範囲が広く、分野横断的な支援が必要になっている。高齢者中心の支援という傾向があるが、若い層への支援ニーズも高まってくると考えられ、特にひとり暮らしの障害者の住宅確保は大変である。支援対象を広くとらえる必要がある。 ○居住の安定により地域生活の向上を図るためには、福祉の総合相談窓口での住まいに関する相談を通じて、本人が必要な生活支援を受けられるよう、関係機関と連携した包括的な支援を着実に行う必要がある。加えて、地域の住民やボランティアなどによる見守りの活動を進めていくことも必要である ○例えば、社会福祉法人等が地域の公益的な取組として、入居者の訪問や支援を行うことにより、住まいの確保が進むと考えられる。区や社会福祉協議会が関わって、法人間の連携や体制づくりができれば、いろいろな展開が期待できる。 ○また、不動産事業者や家主の理解の促進を図るとともに、居住支援協議会での情報共有や意見交換、取組の検証を踏まえ、居住支援施策に関する既存事業やサービスの在り方について検討し改善していくことが求められる。 ○あわせて、家賃助成等の居住支援施策のほか、民間事業者による都市型軽費老人ホーム、地域密着型サービス※や障害者グループホーム※等の整備促進に取り組むことも欠かせない。 ○公営住宅の入居にあたっては、高齢者や障害者などへの優遇措置制度があることを更に周知する必要がある。支援者においても、住まいに関することも含めて必要な情報を対象者に提供できるようソーシャルワークの能力を高めることが求められる。 ○こうした取組の検討にあたっては、目黒区住生活マスタープラン(計画期間:令和5年度〜14年度)との整合を図っていくことが必要である。 B多様な生活課題への分野横断的な支援 現状 ○ひきこもり※、8050問題※、ヤングケアラー※などの複雑な生活課題を抱えながら必要な支援を受けられず、孤立する人や世帯が多く存在することが近年明らかになり、深刻な社会問題となっている。 ○こうした課題の多くは、当事者や家族が自ら支援を求めることが難しい傾向にあることから表に現れにくく、周囲の人や支援者が気付きにくくなっている。このため、長期間にわたって相談機関につながらない状況に陥りやすい。また、当事者や家族の生きづらさや生活上の困難は、個別性が極めて高く、既存の各種制度による対応では支援が難しい場合がある。 ひきもこもりの状態にある人への支援 ○ひきこもり※は、特定の「疾病」や「障害」を指すものではなく、様々な要因が背景になって生じる「状態」である。具体的な要因は、人間関係、不登校、就職・就業における困難等、様々であり、家庭内で潜在化し、外部の相談・支援に結び付きにくい傾向がある。このような状態が長期化すれば、心身の健康に深刻な影響が生じる場合もある。 ○令和4年11月の内閣府調査では、「趣味に関する用事のときだけ外出する」や「自室からほとんど出ない」等の状態が6か月以上続いている広義のひきこもり状態にある人は全国で146万人と推計される(年齢別では15〜39歳の2.05%、40〜64歳の2.02%)。ひきこもりになった最も大きな理由として、「新型コロナウイルス感染症の流行」が2割を超えている。男女比については、全体の約6割弱が男性、約4割強が女性であったが、40〜64歳では女性の割合が52.3%と半数を超えていた。 ○令和2年度に、東京都が、保健所、生活困窮者自立相談支援機関、民間支援団体等の支援関係機関を対象に実施した「ひきこもりに関する支援状況等調査」によると、ひきこもりの当事者の年齢は30歳代までが全体の6割を超え若年層が多い傾向にあるものの、全年齢に渡って幅広く分布していると報告されている。また、当事者の76.9%が家族と同居しており、主たる生計維持者は親が75.1%と最も多い結果となっている。親の年齢層は60歳代以上が46.0%で、いわゆる「8050問題※」の傾向が伺える。中高年層のひきこもりについては、「相談・支援に至るまでに長期間経過しており、対応が難しいと感じる」という回答が多く、「相談して良い悩みである」という普及啓発や、相談先に関する情報発信の不足が考えられると分析されている。 ○目黒区では、福祉総合課及び保健所に「ひきこもり相談窓口」を置き、様々な関係機関と連携して「断らない相談支援」に取り組んでいる。また、ひきこもり支援の担当所管である福祉総合課では、随時の相談に加えて「ひきこもり相談会」も実施し、多様な相談の機会を設けている。相談窓口を様々な広報媒体で広く周知するとともに、社会福祉協議会や家族会等と連携を図りながら積極的なアウトリーチ※に取り組んでおり、また、関係者や地域住民のひきこもりへの理解を深めるため、オンラインによる方法も含めた講演会を開催している。 ○社会福祉協議会のコミュニティ・ソーシャルワーカー※が、地域活動支援として、区と連携を図りながら「ひきこもり家族会」の立ち上げを支援し、令和4年4月に家族会が誕生した。その後も、コミュニティ・ソーシャルワーカーが会の運営をサポートするとともに、個々の家族の相談にのり、区の「ひきこもり相談窓口」等の関係機関につなぐなど継続的な支援を行っている。 【ひきこもりの相談支援の実績・現況】 資料編12ページ「5 ひきこもりの相談支援の実績・現況」を参照 ヤングケアラーへの支援 ○ヤングケアラー※の法令上の定義はないが、一般的に「家族にケアを要する人がいる場合に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」とされている。 ○ヤングケアラーは、年齢や成長の度合いに見合わない重い責任や負担を負うことで、本人の育ちや教育に影響があるといった課題があるが、家庭内のデリケートな問題、本人や家族に自覚がないといった理由から、支援が必要であっても表面化しにくくなっている。人としての基礎を形成する時期に過度なケアを担うため、ケアの期間のみならず進学、就職、自分自身の家族形成等、生涯にわたって影響が続く場合がある。 ○令和2年度に国が全国の中学2年生と高校2年生(全日制、定時制、通信制)を対象に実施したヤングケアラーの実態調査によると、世話をしている家族が「いる」と回答したのは、中学2年生が5.7%、全日制高校2年生が4.1%だった。クラスに1人から2人はヤングケアラーである生徒がいることになる。世話をしている家族がいると答えた生徒のうち、「ほぼ毎日」世話をしている生徒が3〜6割程度となっており、平日1日あたりの世話に費やす時間は、「3時間未満」が多いが、「7時間以上」も1割程度いる、といった結果になっている。 ○この調査結果を踏まえ、令和3年5月に国の「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」は、ヤングケアラーを早期に発見して適切な支援につなげるために、福祉、介護、医療、教育等の関係機関が連携したアウトリーチ※等による支援が重要であると提言している。具体的には、地方自治体による現状把握、支援団体等による悩み相談や多機関連携の推進、教育現場への支援、適切な福祉サービス等の運用などを示し、令和4年度から6年度までの3年間をヤングケアラーの社会的認知度向上の集中取組期間とすることを提案している。 ○目黒区では、ヤングケアラーについて、子どもの権利侵害のおそれがある課題であることから、要保護児童対策地域協議会※の担当所管である子ども家庭支援センター※が中心となって、福祉・介護・医療・教育等の関係機関が連携し分野横断的に支援に取り組んでいる。 ○国の「多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル」をもとに、区では関係機関の職員や専門職の研修を行うとともに、民生委員・児童委員※及び区民に向けた研修会も開催し、それぞれの立場からヤングケアラーについての理解促進を図り、早期発見・支援につながるよう取り組んでいる。併せて、区報、ホームページ、パンフレットなどの広報媒体とともに、X(旧ツイッター)、LINEを活用して、ヤングケアラーの周知、理解促進のための啓発に努めている。 ○教育委員会では、ヤングケアラーを含めた子どもへの虐待の早期発見・対応、適切な支援方法等の教職員研修を行っている。また、小学5年生と中学1年生の全員を対象にした各小中学校のスクールカウンセラーによる面接の機会に、ヤングケアラーの早期発見・把握に努めるとともに、スクールカウンセラーの連絡会で必要な研修を実施している。 【ヤングケアラーの相談支援の現況】 資料編14ページ「6 ヤングケアラーの相談支援の現況」を参照 取組の方向性 ○ひきこもり※やヤングケアラー※などの複雑な生活課題を抱えた人や家族に、できるだけ早い段階で必要な支援が届くように、相談窓口を広く周知するとともに積極的なアウトリーチ※を行い、相談を確実に受け止めることが重要である。様々な関係機関の連携を進め、複雑で多様な課題に対する専門的・重層的な支援体制の充実が欠かせない。 ○また、周囲の人や支援者の気付きを促し、地域の支え合いや見守りなどの多様なつながりが生まれやすくするための地域づくりに、民生委員・児童委員※や地域の活動団体などとともに取り組むことが求められる。 ○あわせて、当事者が自らの抱える課題に気付き、SOSを表明できるよう援助を受け入れる「受援力」を高めることが求められる。SNS等を活用して、「人に頼ってもよい」「一緒に考えよう」と呼びかけ、相談窓口や支援策を伝えながら、つながり続ける取組を、行政や専門機関と支援団体が連携して行うことも必要である。 ひきこもりの状態にある人への支援 ○広報媒体とともに地域の様々な活動の機会を活用して、ひきこもり※の相談窓口を広く周知することが重要である。相談の手段としてインターネットによるオンライン等の活用を検討し、当事者や家族との信頼関係を築きながら継続的で伴走的な支援を行うことが必要である。 ○家族会の運営サポートや地域づくりに取り組むコミュニティ・ソーシャルワーカー※や支援団体、専門機関と連携して、ひきこもりの状態にある人が、安心して過ごすことのできる居場所や活躍できる場づくり、就労の支援など、多様な社会参加の機会を用意することが求められる。 ○例えば、ひきこもり状態にある中高年の人たちに、介護・福祉施設のワークシェアリングにより、短時間でも働く機会が提供できることが考えられる。地域の中で役割を持つ機会の提供を社会福祉法人等に期待したい。 ○多様な人々が仕事に従事し、様々なボランティアが関わる介護・福祉施設では、多様な資源や活力を生かした事業の実施とともに、サークル活動を立ち上げて、いろいろな人が集う「カフェ」のような居場所をつくることも考えられる。運営等の役割をひきこもり状態にある人も含めてシェアしていくことも想定される。介護・福祉事業所などでも、地域に密着した活動ができていくとよい。 ヤングケアラーへの支援 ○子ども家庭支援センター※や保健所、福祉総合課、地域包括支援センター※、社会福祉協議会、学校など、児童・介護・福祉・医療・教育分野の様々な支援者が、ヤングケアラー※についての認識を向上させ、ヤングケアラーを早期に発見して、関係機関と連携した具体的な支援につなげられるよう取り組むことが重要である。 ○子ども家庭支援センターが調整機関となり、要保護児童対策地域協議会※で課題を共有し、支援の方向性を検討しながら、子どもや家庭が抱える困難に対して各分野が適切に支援を進める必要がある。 ○ヤングケアラーの根本的な問題は、本人と周りの大人の認識が乏しく、気づかない、理解していないということである。福祉の既存の枠組みを超えて、しっかり気づくことができる仕組みを考えていかなければならない。 ○目黒区においても、ヤングケアラーに焦点を当てた実態調査が必要であると考える。実態調査が、教員の意識の変化を生み、自分がヤングケアラーであることに子ども自身が気付くことになる、そこから支援のシステムや連携が出来上がり、地域が取り組んでいくという流れができてくる。 ○ヤングケアラーを支えるためには、親(家庭)が抱える問題を解決するアプローチが求められる。複合的な課題であるため、多機関の連携が充分に行えるよう、福祉サービスへのつなぎ役を担う福祉の総合相談が効果的に機能することが欠かせない。 ○ヤングケアラーが置かれた状況と心情を適切に理解する人がそばにいること、理解者や仲間と出会い、安心して自分のことを話せる場が身近にあることが大切である。支援団体等と連携してピアサポート※などの機会をSNSも活用して創出することなどが国から示されており、検討が求められる。 ○18歳から概ね30歳までのケアラーは「若者ケアラー」といわれる。この年代も進学や就職、日常の生活にさまざまな課題を抱えている場合があり、長期間のケアが深刻な影響を及ぼしていることもある。ヤングケアラーへの支援と同様に、「若者ケアラー」に対しても、その特性を踏まえた支援を進めていくことが必要である。 C社会的孤立・孤独への対応 現状 ○家庭や職場、地域で人々が関わり支え合う機会が減少し、生きづらさや孤独・孤立を感じ、支援が必要な状態であっても自ら支援を求めることが困難な人が増えている。 ○社会的つながりが弱い人が抱える課題は、コロナ禍で、より深刻化している。心身の健康にも大きな影響を及ぼすことが懸念され、社会的孤立や望まない孤独は命に関わる問題であると考えられる。 ○リーマンショック以降、減少傾向にあった自殺者は、令和2年に増加に転じ翌3年は微減にとどまっていたが、4年に再び増加した(厚生労働省公表)。小中高校生の自殺者数が過去最多となり女性の自殺者も3年連続の増加となった。長引くコロナ禍の影響もあると見られている。 ○国の新しい「自殺総合対策大綱」では、令和5年4月設立の「こども家庭庁」と連携し、子ども・若者の自殺対策を推進する体制を整備するとともに、女性への支援を新たに「当面の重点施策」に位置付けている。非正規雇用やひとり親、フリーランスなどの女性への支援を強化するとともに、予期しない妊娠などで悩みを抱えた若い女性への相談事業も進めるとしている。 ○女性をめぐる課題は生活困窮、性暴力・性犯罪被害、家庭関係破綻など複雑化、多様化、複合化しており、コロナ禍でこうした課題が顕在化した。「孤独・孤立対策」といった視点も含め、新たな女性支援強化が喫緊の課題となっていることを受けて、令和4年に「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が制定され、令和6年4月から施行されることとなった。 ○「孤独・孤立対策」については、令和3年に国が重点計画を策定し、その中で4つの基本方針 @孤独・孤立に至っても支援を求める声を上げやすい社会とすること、A状況に合わせた切れ目のない相談支援につなげること、B見守り・交流の場や居場所づくりを確保し、人と人との「つながり」を実感できる地域づくりを行うこと、C孤独・孤立対策に取り組むNPO等の活動をきめ細かく支援し、官・民・NPO等の連携を強化することを掲げ、これらを柱に施策を展開するとしている。令和4年の重点計画の改定を経て、「社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ることが重要である」ことを基本理念に掲げた「孤独・孤立対策推進法」が令和5年5月に成立した。 ○目黒区では、福祉の総合相談窓口を中心に分野を越えた包括的な相談支援に取り組んでいる。福祉総合課、地域包括支援センター※、社会福祉協議会、子ども家庭支援センター※などがアウトリーチ※により、生活課題を抱えながら社会とのつながりを失っている人に、情報を提供し関係機関と連携して必要な相談支援を行っている。当事者に寄り添った伴走型の支援を行うとともに、見守りや居場所の確保などの地域づくりにも取り組んでいる。 ○自殺対策としては、平成31年に「目黒区自殺対策計画」を策定し、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現に向け、正しい知識の啓発や相談支援、ゲートキーパー※の養成など、全庁的な取組として関係機関・団体・区民等との連携により自殺総合対策を推進している。 取組の方向性 ○関係機関の連携強化や、職員のソーシャルワーク能力の向上などにより、孤独・孤立の状態の中で、生きづらさや様々な生活課題を抱えている人々に適切な支援を行えるよう、分野を越えた包括的な相談支援体制を充実させることが必要である。 ○福祉の総合相談窓口などの相談支援機関を積極的に周知し、「ここに相談すれば、必ず受け止め、一緒に考えてくれる」といったPRが不可欠である。支援団体等と連携し、あるいは民間事業者に委託して、SNSなどを通じて「相談してもいい」「助けを求めてもいい」「一緒に考えよう」と呼びかけ、具体的な相談の流れや支援策を伝えていくことが求められる。さらに多様な人が関わり、寄り添い続ける伴走型支援へと発展させていくことが望ましい。 ○また、地域包括支援センター※職員やコミュニティ・ソーシャルワーカー※を中心に、当事者や家族の意向・事情に配慮したアウトリーチ※型の支援を推進することも必要である。関係機関との連携による重層的な支援に取り組むとともに、当事者が地域社会とつながることができるよう、支え合いを推進できる地域づくりに一層取り組むことが重要である。 ○女性への支援については、非正規雇用者が多くを占めるなど、女性が依然として社会的に不利な立場に置かれているという構造的な課題を踏まえ、個々人が抱えている課題やその背景、心身の状況に応じた最適な支援を受けられるよう、民間団体とも協働した多様な支援を早期から切れ目なく包括的に提供していく必要がある。福祉、保健医療、労働、住まい、教育、男女共同参画等、広く関連する事業の連携・活用という視点が求められる。 ○自殺対策については、自殺の原因・動機が健康問題や経済的な困窮、家庭や勤務に関する問題など多様かつ複合的であるため、区の関係課や関係機関がそれぞれの強みを生かして支援に当たれるようにネットワークを強化し、包括的な支援体制を充実していかなければならない。なかでも自殺未遂者に対する支援は、医療機関との連携強化が大切である。 ○自殺対策を支える人材の育成が急務であることから、自殺対策に関する職員の知識・理解を深め、実践力と対応力を向上させる取組を進めることが肝要である。 D認知症施策の推進 現状 認知症高齢者数の推計 ○国の推計では、認知症の人は令和7年(2025年)の675万人に対し、令和12年(2030年)は744万人、令和22年(2040年)には802万人と増え続けることが見込まれている。(平成27年3月厚生労働省「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」による) ○令和元年度に東京都が実施した「認知症高齢者数等の分布調査」の結果を基に推計すると、目黒区では、令和7年(2025年)に何らかの認知症の症状がある65歳以上の高齢者は、9,334人(高齢者人口の16.8%)、令和22年(2040年)には、10,640人(高齢者人口の15.4%)と予測することができる。(目黒区の高齢者人口予測は令和3年3月「目黒区人口・世帯数の予測」による) 認知症施策推進大綱 ○国は、平成27年に策定した「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)に続き、令和元年には、「認知症施策推進大綱」を策定した。同大綱では、認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望をもって日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症の人や家族の視点を重視しながら「共生」と「予防」の両面を施策として推進していくこととした。具体的な施策としては、@普及啓発・本人発信支援A予防B医療ケア・介護サービス・介護者への支援C認知症バリアフリー※の推進、若年性認知症の人への支援、社会参加支援などが掲げられている。 認知症基本法 ○認知症の人が尊厳を保ちつつ、社会の一員として尊重される社会の実現を図るため、令和5年6月に「認知症基本法」が成立した。認知症施策を総合的かつ計画的に推進することを目的に、認知症の人とその家族の意向の尊重、認知症の人の尊厳保持や意思決定の支援等を基本理念とし、認知症に関する知識及び認知症の人に関する理解の促進、社会参加の機会の確保、相談体制の整備等を基本的施策として掲げている。 目黒区の取組 ○「認知症施策推進大綱」に基づき、目黒区では、認知症サポーター※養成等を通じた地域における認知症への理解を深める取組や、認知症の相談支援窓口である地域包括支援センター※の周知、家族や介護者の支援、医療と介護などの地域の関係機関との連携の取組など、認知症施策を総合的に推進するための様々な事業を実施している。 ○長引く新型コロナウイルス感染症の影響により、外出機会や人との交流が減る中で、閉じこもりや身体・認知機能の低下が懸念される状況にある。 【具体的な取組】 資料編15ページで「7 認知症の人への支援事例」を紹介 認知症サポーター ○地域で認知症の人と家族を温かく見守り支援する「認知症サポーター※」は、令和4年12月末日現在13,228人に達し、年間800人のサポーターの養成を目指している。区主催の養成講座のほか、地域包括支援センター※や小学校等での出前講座も開催している。令和4年度は12月末までに、新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも10回の講座を開催し301人のサポーターを養成した。 居場所「カフェ」 ○認知症の人や家族がリラックスして過ごせる居場所となる「カフェ」が運営されている。認知症カフェの「Dカフェ」は、令和5年4月現在、区内に15か所ある。個人宅から老人ホーム、病院まで幅広い活動場所で、それぞれの特徴を生かして介護経験者と専門職が運営に携わり、認知症について語り合い、知識を深め、交流する場となっている。区の事業の「コミュニティカフェ」は、高齢者や認知症の人に限らず、誰もが気軽に交流できる場で3か所あり、「認知症ステップアップ講座」で知識を深めた認知症サポーター※がボランティアとして運営を支えている。 家族介護者への支援 ○介護に必要な知識や技術の習得のための「家族介護教室」のほか、交流を主な目的とした「介護者の会」が各地区で定期的に開かれている。「家族介護教室」は令和3年度にはオンライン開催となった。 認知症の早期診断・早期対応  ○「認知症アウトリーチ※事業」、「認知症初期集中支援事業」を実施し、認知症専門医を含めたチームアプローチにより必要な医療、介護につなげ、認知症の人や家族への初期支援を集中的かつ包括的に行っている。 若年性認知症の人のために ○若年性認知症の人は、就労や子育て、家計など高齢期とは異なる特有の課題を抱えていることから、正しい知識と理解を深める講演会の開催とともに、相談窓口の周知を進め、早期診断と対応につなげている。また、当事者同士や家族が語り合い交流する機会として家族会を開催している。 取組の方向性 ○認知症は誰もがなりうるものであり、家族や身近な人が認知症になることなどを含め、多くの人にとって身近なものとなっている。認知症基本法に基づき、認知症の人が認知症とともによりよく生きていくことができるよう、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で、自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指すことが大切である。 ○今後も高齢者人口の増加に伴い、認知症となる人が増えていくことが予測される。新型コロナウイルス感染症が及ぼした影響を踏まえ、認知機能が低下した人への適時・適切な医療と介護サービスを地域の専門職、関係機関が連携して進めることが重要である。また、認知症初期集中支援事業や認知症アウトリーチ※事業等による早期発見・早期対応の体制づくりの推進が求められる。 ○認知症の人と家族の視点に立った取組も重要である。認知症の人の発信の機会である「本人ミーティング」の拡充を図るとともに、家族による情報発信、「Dカフェ」や家族会の活動を引き続き支援することが望まれる。 ○あわせて、地域や職場で認知症の人や家族を手助けする認知症サポーター※やその養成講座の講師役「キャラバン・メイト」の養成を進め、知識を向上させて「コミュニティカフェ」や「介護者の会」のボランティアとして運営を支えるなど、認知症の人と家族を見守り支援する地域づくりなどに一層取り組み、地域全体で認知症施策を推進していくことが必要である。 E権利擁護の推進 現状 成年後見制度の利用促進 ○認知症や知的障害、精神障害等により判断能力が十分でない人の権利を守り地域で安心して暮らし続けられるよう、成年後見制度※の利用促進を図っている。 ○国は、「成年後見制度の利用の促進に関する法律」に基づき、平成29年に「成年後見制度利用促進基本計画」を策定し、区市町村の役割として、中核機関の設置と地域連携ネットワークの段階的整備を示すとともに、区市町村においても利用促進に関する基本計画を定めるよう求めた。令和4年3月に定められた国の第二期計画では、優先して取り組む事項として、任意後見制度の利用促進、担い手の確保・育成の推進、区市町村長申立ての適切な実施、成年後見制度利用促進事業の推進、及び権利擁護支援※の行政計画等の策定推進などが示されている。 ○目黒区では、成年後見制度を推進していくため、社会福祉協議会の権利擁護センター「めぐろ」を成年後見制度推進機関として、制度の利用に関する相談や後見人等候補者の紹介、後見人等へのサポート、市民後見人の養成、法人後見の受任、及び制度普及のための講演会等を実施している。 ○併せて、弁護士、司法書士、社会福祉士、医師、金融機関、行政等が構成メンバーの「めぐろ成年後見ネットワーク」の活動がある。 ○こうした現状の活動や仕組みを踏まえて、目黒区における成年後見制度利用促進基本計画の策定に向けた検討を進めている。 【成年後見制度に関する事業の実績】 資料編16ページ「8 成年後見制度の利用促進に関する事業等の実績」を参照 意思決定支援の推進 ○重度の障害や認知症などにより自ら意思決定を行うことが困難な状況や、高齢等により介護が必要な状態になっても、意思決定に対する適切な支援を受け、社会とのつながりを持ち、支え合いながら生活していくことによって、自立した生活を営むことができる。 ○目黒区では、国のガイドラインに示された意思決定支援の基本的な考え方や方法等に沿って、認知症の人の日常生活や社会生活、障害のある人の福祉サービス等の適切な利用に努めている。また、意思決定支援の考え方等の普及・啓発を図るため、令和4年度に区民を対象に講演会を開催している。 ○成年後見制度※の運用にあたっては、本人の意思決定権の尊重が極めて重要であり、後見人が本人の特性に応じた適切な配慮を行えるようにしていかなければならない。 ○国の第二期成年後見制度利用促進基本計画においても、成年後見制度の利用促進に当たっての基本的な考え方として、後見人等による財産管理だけでなく、本人の自己決定権を尊重した意思決定支援・身上保護も重視した制度の運用改善等に取り組むこととしている。また、意思決定支援の理念が地域に浸透することにより、成年後見制度を含む必要な支援に、適時・適切につなぐことができるようになるほか、尊厳のある本人らしい生活を継続することができる社会の実現にも適うとされている。 虐待防止に向けた取組 ○高齢者や障害者、子どもへの虐待の未然防止、早期の発見のために、区では、地域のネットワークを拡充するなど、見守りと気づきによって本人と家族を地域で支える仕組みづくりを進めている。あわせて、関係職員の対応力を強化するための専門研修を実施している。 ○新型コロナウイルス感染症の影響により、外出の機会が減少したことで、精神的なストレスの蓄積や介護負担の増大、経済的な問題による不安や悩みから虐待につながる事例が発生していると考えられる。また、福祉施設でも、感染予防の対応などによる負担増により施設虐待につながることが懸念されている。 〔高齢者虐待の防止〕 ○自分の人生を自分で決め、尊厳をもって過ごすことは、介護の必要性の有無にかかわらず誰もが望むことであるが、現実には、家族や親族、介護施設の職員などによる「高齢者虐待」が問題となっている。虐待の背景には、介護者の過重な負担や精神的なストレスがあると指摘されている。 ○高齢者の虐待については、各地域包括支援センター※と高齢福祉課及び福祉総合課等が役割を分担して、緊密に連携を図り、虐待の防止と早期発見・早期対応に努めている。 ○新型コロナウイルス感染予防等のため、ヘルパー派遣や通所介護等の介護サービス利用を見合わせるなど、世帯の孤立化や高齢者虐待の深刻化が懸念されるところである。 〔障害者虐待の防止〕 ○障害者虐待は、障害者の尊厳を害し、自立と社会参加を妨げるものである。家族からの虐待のみならず、福祉施設や病院、就労の場などで自覚がないまま起きている場合や、被虐待者が虐待を受けるという認識が持てず、訴えにつながらない場合もある。 ○目黒区では障害者支援課内に「目黒区障害者虐待防止センター」を設置している。同センターでは、24時間、障害者虐待に関する相談・通報の受付、立ち入り調査、改善防止等を実施するとともに虐待防止に向けた啓発を行っている。 〔子どもの虐待の防止〕 ○子どもの虐待については、令和元年6月の児童虐待防止法及び児童福祉法の改正により、保護者は児童のしつけに際して体罰を加えてはならないことが規定され、虐待防止対策の強化が図られた。虐待の原因の一つとして、保護者の育児に対する不安や負担感、地域や社会からの孤立が指摘されており、子どもとともに家庭を支える視点が重要である。 ○目黒区では、子育て世代包括支援センター、子ども家庭支援センター※及び児童相談所が、虐待リスクの程度に応じて連携し、子どもや保護者に必要な支援を実施している。 ○虐待の傾向としては、令和元年10月から児童相談所からの送致がルール化されたことにより、虐待通告の約半分が、東京都児童相談所からの送致であり、特に面前DV(夫婦喧嘩)が多い。子どもの面前での夫婦喧嘩は心理的虐待にあたることを保健部門と協力して周知啓発している。 取組の方向性 成年後見制度の利用促進 ○目黒区においても、成年後見制度※の利用促進計画を策定し、権利擁護支援※の地域連携ネットワークの構築や中核機関及び協議会の整備等に取り組んでいくことが必要である。地域連携ネットワーク機能は、「包括的」なだけでなく、地域の実情に応じた多層的な体制が含まれるべきであり、持続可能な運営を実現するため段階的、計画的な取り組みが必須だと考えられる。 ○市民後見人等の育成・活躍支援は、地域共生社会※の実現にとって欠かせない。人材育成や参加支援、地域づくりという観点を重視して進めなければならない。区には、市民後見人の活動受け入れ先の拡大支援や役割周知のほか、都と連携した養成研修の実施などが望まれる。 ○親族後見人への支援については、権利擁護センターが実施している相談や交流会等の親族後見人サポート事業をさらに周知し、より多くの方が参加されることが望ましい。 ○任意後見制度は、本人の人生において意思を反映したり、尊重したりするために今よりも積極的に活用されることが望ましい。制度の周知や相談の仕組みづくりを進めることが必要である。 ○身寄りのない人、親族に頼れない人への支援として区市町村長申立ての重要性が高まっており、目黒区においても年々件数が増加している。適切で迅速な事務処理や虐待事案での積極的な活用が期待されている。 ○成年後見制度の利用にあたっては、制度における補充性の原則という視点に立ち、権利擁護に関する相談を十分機能させて、日常生活自立支援事業を利用するなどの柔軟な対応が求められる。また、家族が抱える複合的な課題が背景にあり、家族全体の支援が必要な場合もある。課題解決の方法の一つが成年後見制度の利用であり、地域連携ネットワーク等を活用して必要な支援策を考えていくことが望ましい。 意思決定支援の推進 ○後見人等を含む本人に関わる支援者が常に「意思決定の中心に本人を置く」という本人主義を実現するため、支援者を対象とした研修等を実施し、意思決定支援の共通理解を図り質の高い支援を目指していくことが必要である。あわせて、区民を対象とした講演会を開催し、意思決定支援の理解を地域に浸透していくことも大切である。 ○成年後見制度※の運用にあたっては、制度の利用を必要とする人が、尊厳のある本人らしい生活を継続することができるよう自己決定権を尊重し、意思決定支援・身上保護も重視することが求められる。そのため、後見人への支援等により意思決定支援の質の向上を図ることが必要である。 虐待防止に向けた取組 〔高齢者虐待の防止〕 ○健康福祉部各課、保健所、地域包括支援センター※等の関係職員を対象にした研修や、対応困難ケースのスーパーバイズ※を引き続き実施して、新型コロナウイルス感染症が高齢者とその家族に及ぼした影響も踏まえた職員の対応能力の向上を図る必要がある。あわせて、地域包括支援センターが行っている民生委員・児童委員※や介護サービス従事職員に向けた高齢者虐待防止の研修会の充実も求められる。 ○令和3年度から、介護保険施設等に対して虐待防止の発生又はその再発を防止するための措置を講ずることが努力義務とされた。区内の高齢者施設や介護保険サービス事業所等の職員による虐待の疑いのある相談や通報に対しては、関係機関との一層の連携を図り、事実確認、緊急性・深刻度の判断をして適切に対応することが必要である。改善計画書の提出も求め、後日取組の確認・評価を行い、再発防止に努めることが肝要である。また、実地指導において虐待防止の措置基準の適合状況の確認及び指導を適切に行うことが求められる。 ○地域のつながりの必要性が一層高まる中、見守り事業を推進するとともに、地域包括支援センターや福祉の総合相談による包括的な相談支援体制の充実を図ることにより、早期に相談や発見につながるよう、虐待防止に取り組んでいくことも必要である。 〔障害者虐待の防止〕 ○障害者虐待防止の普及啓発として、障害福祉サービス事業所や相談支援事業所をはじめ、障害者団体や関係機関に対して、障害者虐待防止法や目黒区障害者虐待防止センターに関する理解を深めるための講演会、研修会を計画的かつ継続的に実施することが重要である。また周知啓発のためのリーフレット等の配布先を拡大し、虐待防止や人権擁護の意識の一層の浸透を図ることが求められる。 ○国は障害者虐待防止の更なる推進のため、各障害福祉サービス事業所等に対し、従事者への研修実施、虐待防止委員会の設置、委員会での検討結果の従事者への周知徹底、虐待防止責任者の設置を義務化している。目黒区の指導検査において体制整備の点検指導を着実に実施していくことが大切である。 〔子どもの虐待の防止〕 ○子育て世代包括支援センター、子ども家庭支援センター※及び児童相談所のそれぞれの機能と相互の連携を強化して、迅速かつ効果的に必要な支援を行うことが重要である。特に支援が必要な家庭について、妊娠期から子育て期にわたり、母子保健機能と子育て支援機能が連携し、虐待の未然防止を目的とした予防的支援が求められる。 ○保育施設における虐待等の不適切保育の対応については、不適切保育が疑われる事案を把握するための相談及び指導検査体制を整備するとともに、不適切保育が発生する背景や要因を的確に分析し、未然防止に取り組む必要がある。 F災害時要配慮者支援の推進 現状 ○災害発生時に障害のある人や介護が必要な人が迅速に避難し、その後の生活を安心して送ることができるよう、適切な支援の推進が求められている。令和3年5月に災害対策基本法が改正され、避難行動要支援者※の個別避難計画の作成が区市町村の努力義務とされた。 ○目黒区では、令和3年9月に災害時個別支援プラン(個別避難計画)作成ガイドラインを作成し、プランの作成件数増に向けて取り組んでいる。令和5年3月時点の個別支援プラン新規作成件数は928件である。避難行動要支援者一人ひとりの状況に配慮し、必要な支援を提供することにより、誰一人取り残すことなく災害から命を守ることができるよう、地域全体で避難行動要支援者を支える仕組みづくりの推進に努めている。 ○災害時に実効性のある避難支援等を行うには、平常時からの見守りや防災訓練などを通じた顔の見える関係づくりが重要であることから、避難行動要支援者名簿の登録者名簿の提供を受ける町会・自治会の拡充に取り組んでいる。令和5年3月時点で、86町会・自治会のうち、53町会・自治会に名簿を提供している。名簿の提供に当たっては、区と町会・自治会が個人情報保護に関する協定を締結している。 取組の方向性 ○災害時要配慮者※が、災害時に迅速に避難し、安心して避難生活を送れるよう、引き続き適切な支援を推進していくことが求められる。区の努力義務となった個別支援プランの作成を介護事業者等に依頼して促進することが必要である。その際、避難支援者の確保が重要であり、ハザードマップで被害が想定される地域に居住している人や介護度・障害支援区分の重い人を優先して作成するなどの工夫が求められる。 ○地域避難所において要配慮者が避難生活を安心して送れるよう、状況に配慮した情報提供や、多言語対応等も含めたコミュニケーション手段の確保、相談窓口の設置など生活上の様々な支援対策に取り組むとともに、感染症対策も踏まえ、避難所の開設・運営に必要な備蓄品や資機材を整備することが欠かせない。 ○あわせて、福祉避難所指定施設の拡大や備蓄品の充実、専門職等人的支援の確保に努め、発災時の受入れ態勢の強化を図ることも重要である。 ○避難所以外の自宅等に滞在している在宅避難者の情報と必要な支援を把握し、物資や福祉サービスの提供など、生活環境の確保が図れるよう支援策を整備する必要がある。 1-(3)地域包括ケアシステムの深化・推進  住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられるために、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステム※の推進が求められており、区では、その推進に向けて様々な取組を進めている。  高齢者を中心に推進してきた地域包括ケアシステムは、障害者、子ども等への支援、複合課題にも対象を広げ、地域共生社会※を実現するための仕組みとして機能している。  今後はこれまで以上に多職種、多機関がその相談支援体制や地域及び関係機関との連携強化に取り組んでいく必要がある。  地域包括ケアシステムの深化・推進のため、@地域包括支援センター※の機能強化、A介護福祉サービス基盤の整備と家族介護者等への支援の充実、B生活支援サービスの充実、C在宅医療と介護・福祉の連携、D介護・福祉人材の確保・定着・育成とサービスの質の向上の5点を柱に、検討していく。 目黒区の高齢者人口等の推計 (詳細は、資料編18ページ「9 目黒区の高齢者人口等の推計」を参照。)  目黒区が令和3年3月に実施した人口予測では、65歳以上の高齢者人口及び高齢化率は、令和7年(2025年)に55,562人で19.3%、令和22年(2040年)に69,093人で23.3%、令和42年(2060年)には76,982人で26.5%と増加の一途をたどる。  一方、平成7年(1995年)以降、緩やかな増加傾向にある区の総人口は、令和27年(2045年)に減少に転じるが、それよりも15年早く、生産年齢人口(15〜64歳)は令和12年(2030年)以降、減少していくことが予測されている。 @地域包括支援センターの機能強化 現状 ○国は、団塊の世代が75歳以上となる令和7年(2025年)を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステム※の構築を推進している。 ○区は、地域包括支援センター※を「住民に最も身近な保健福祉の総合相談窓口」と位置づけ、地域包括ケアシステムの拠点として、生活圏域ごとの5地区に1か所ずつ設置し、保健師・看護師、社会福祉士及び主任介護支援専門員などの専門職を配置している。 ○介護保険法で定められている包括的支援事業及び第一号介護予防支援事業(居宅要支援被保険者に係るものを除く。)に加え、保健福祉の総合相談支援及び介護保険認定申請や保健福祉サービス(一部の障害福祉サービスを含む。)等の受付業務も委託している。 ○目黒区の地域包括支援センターは、高齢者のみならず、障害者、子ども、生活困窮者※など、すべての区民を対象に、世帯が抱える複合的な課題を丸ごと受け止め、専門機関や区の関係部署、地域の様々な団体や関係者と密接に連携・協働して、適切な支援や地域資源につなげる役割を担っている。 ○平成27年度からは、気軽により身近な場所で相談できるよう、住区センター等を会場として出張相談を開始し、16か所(令和5年3月末日現在)まで拡充し、町会・自治会・住区住民会議等、地域とのつながりを深めてきた。 【事業の実施状況】 資料編20ページ「10 地域包括支援センター事業の実施状況」を参照。 取組の方向性 ○地域包括支援センター※への相談は件数の増加とともに、相談内容が多様化・複雑化・複合化しており、潜在的なニーズの掘り起こしも求められている。 ○少子・高齢化の進展、新型コロナウイルス感染症を機に深まる社会的孤立や社会的な格差等、地域包括支援センターが「住民に最も身近な保健福祉の総合相談窓口」として担う役割は、ますます増えることが想定される。 ○地域包括支援センターの更なる相談支援の充実やアウトリーチ※機能の充実を図る必要があり、人員体制の強化、職員の資質向上及びマネジメント力の向上、多様な職種や機関との連携・協働・ネットワークの構築が求められる。 ○これらに対応するため、地域包括支援センターに配置している地域連携コーディネーターを中心とした、見守り活動や住民活動を通じた地域ネットワークの構築、在宅療養コーディネーターを核とした在宅医療と介護の連携強化、認知症支援コーディネーターが中心的な役割を担う認知症相談支援の充実、個別支援のための地域ケア会議や地域課題の発見及び地域づくり・資源開発等のための地域ケア会議の開催を通じて、積極的に取り組んでいく。 ○さらに、地域包括支援センターの認知度向上の取組や身近な場所で相談できる出張相談の拡充等、住民が相談しやすいさらなる環境づくりが必要である。 ○地域包括支援センターの機能強化とともに、相談支援の中核を担う「福祉の総合相談(コンシェルジュ)」の後方支援機能の強化も必要である。地域包括支援センターで受けた困難事例に対応するため個別ケース会議を開催し関係機関へ確実につなぐなど支援体制を充実させることが求められる。 A介護福祉サービス基盤の整備と家族介護者等への支援の充実 現状 ○介護保険制度は、創設から20年以上が経過し、高齢化の進行とともに、介護サービス利用者が創設時の3倍を超え、社会全体で要介護者とその家族を支える制度としての役割を果たしてきた。今後も施設、在宅を含め介護サービスに対するニーズが増加することが見込まれる。 ○区が令和4年度に実施した「介護予防・日常生活圏域ニーズ調査」及び「高齢者の生活に関する調査」では、介護などが必要になったときの暮らし方として、約6割の方が介護サービスの利用や家族・親族に世話をしてもらいながら、自宅で暮らしたいと回答し、約1割の方が施設等での暮らしを希望している。 ○区は、介護を必要とする高齢者が介護サービス等を利用しながら住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられるよう、地域密着型サービス※の整備を進めるとともに、様々なサービスを利用しても在宅生活を継続することが困難な中重度の要介護高齢者が必要なサービスを受けられるよう、特別養護老人ホームの整備も進めてきている。 ○更に、区では、応能負担を原則としつつ、低所得者が本人に必要な介護サービスを安心して利用できるよう、各種減免制度を実施している。 ○また、在宅レスパイト事業等の整備・充実を図るとともに、介護者・家族の情報交換や心の健康のための支援として、訪問保健相談事業や家族介護者の交流の機会を開催する等、介護者・家族支援のための様々な事業を行っている。 ○一方で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、ショートステイサービスなどの提供規模の縮小・一時休止やサービスの利用控え、交流の場の開催中止が相次いだ。 【事業の実施状況】 資料編22ページ「11 介護福祉サービス基盤整備と家族介護者等への支援事業の実施状況」を参照 取組の方向性 ○令和3年3月に区が実施した人口推計によると、令和42年(2060年)まで高齢者人口は増加すると予測している。このうち75歳以上の後期高齢者人口は、令和7年(2025年)に32,908人、令和22年(2040年)に34,592人となり、以降、大幅に増加して令和42年(2060年)には、高齢者人口の6割を超える予測となっている。今後も、介護サービスの需要は増加が見込まれるため、在宅サービスと居住・施設サービスのバランスを考慮しながら、介護サービスの充実を図るとともに、低所得者への配慮を行う必要がある。また、同時に担い手となる人材の確保にも取り組む必要がある。 ○国は介護離職者ゼロを目指して、介護・育児休業法を平成29年に改正して、介護離職を防止し、仕事と介護の両立を可能とするための制度を整えたが、介護離職や介護離職者の再就職の難しさ、働きながら介護を担う負担の大きさ等の課題が解消されているとは言い難い。区が令和4年度に実施した家族介護者への調査では、介護を主な理由に離職・転職した家族は1割強となっている。 ○また、同調査によると、介護者が不安に感じる介護について、3割近くが「認知症状への対応」を挙げ、必要な支援としては、「介護者の病気・休養など緊急時に利用できるサービス」が5割を超えた。介護者・家族に対しては、知識・技術・資源等の情報提供、介護負担を軽減するための様々な施策を推進していく必要がある。併せて、主な介護者の66%が女性であるという実態を踏まえて調査結果を分析し、課題を明らかにしていくという視点も欠かせない。 ○介護保険制度における各種減免制度のほか、紙おむつ・おむつ代の支給などの高齢福祉サービスや生活福祉資金等の貸付制度等についても周知していく必要がある。 ○介護サービスの充実や介護人材の確保に加え、介護者同士の交流や介護に関する情報交換を行う機会の提供、さらに介護者自身の健康管理や具体的な介護方法の助言、精神的な支援等を行っていくことが求められている。 B生活支援サービスの充実 現状 ○要介護リスクが高まる75歳以上の後期高齢者人口が増加する一方で、それを支える生産年齢(15〜64歳)人口は減少し続け、その乖離は増幅していくことが予想されている。 ○国は、平成27年の介護保険制度の改正により、地域包括ケアシステム※の構築を目標に、介護予防・日常生活支援総合事業と生活支援体制整備事業を創設し、地域住民やボランティア等、多様な担い手による生活支援サービスの創出を目指している。 ○区においては、介護予防・日常生活支援総合事業では、要支援認定者及び基本チェックリストの結果でサービス事業対象者と判定された人に対して、介護事業者によるサービス(訪問型・通所型)とともに、住民主体の支え合い事業等を実施し、高齢者の介護予防や健康づくり、生活支援のサービスを提供している。 ○また、生活支援体制整備事業では、区内5地区(日常生活圏域)で社会福祉協議会の生活支援コーディネーター※が地域資源の把握と地域住民の関係づくりを進めるとともに、住民主体で運営する地域の話し合い・連携の場である協議体で、地域課題の共有、地域住民やボランティア等による生活支援サービスの創出に向けた取組が行われている。 ○ひとり暮らし等の高齢者については、緊急時や災害時の安否確認や避難支援につなぐことができるように「ひとりぐらし等高齢者登録」を実施するとともに、登録者の実情に応じた様々な生活支援サービス(非常通報システム設置事業や配食サービスなど)を実施している。 ○新型コロナウイルス感染症の影響により、住民主体の活動や地域交流活動も制約を受けたが、オンラインによる会議の導入等、一部新しい生活様式に対応した活動も試行されている。 【事業の実施状況】 資料編24ページ「12 生活支援サービスの充実に関する事業の実施状況」を参照。 取組の方向性 ○団塊の世代がすべて75歳以上となる令和7年(2025年)以降は高齢化が加速し、支援が必要な高齢者が増加すると見込まれている。高齢者が住み慣れた地域で可能な限り自立して安心して暮らし続けるには、医療や介護サービスの充実のほか、調理、買い物、掃除等の生活支援サービスの提供が求められる。こうした状況を踏まえ、社会状況の変化や高齢者のニーズをとらえながら、生活支援サービスを充実させ、地域で高齢者を支える仕組みを構築していくことが必要である。 ○ひとり暮らしの高齢者が増加する中で、男女で抱える課題が違ってきている。今回のアンケート調査において、性別による分析が行われ課題を抽出して政策に活かすことを期待する。 ○生活支援体制整備事業では、地区ごとの第2層協議体において多様な支えあい活動団体のネットワークを構築し、区全域を対象とした第1層協議体の発足につなげ、新たな生活支援サービスの創出を目指していくことが期待される。協議体の会議が形式的なものにならないよう、実質的にできることを見極めて、具体的な取組を進めていくことが大事である。 ○また、新型コロナウイルス感染症の影響による新しい生活様式に対応しながら、現在、兼務体制をとっている生活支援コーディネーター※とコミュニティ・ソーシャルワーカー※が有機的な役割分担のもと地域課題解決に取り組むことが求められている。 ○地域資源の把握・開発、生活支援・介護予防サービスの充実のため、生活支援コーディネーターや協議体と地域ケア会議がより連携していくことが必要である。 C在宅医療と介護・福祉の連携 現状 ○地域包括ケアシステム※の構築を推進するため、介護保険制度では、平成27年度から区市町村が行う事業として、包括的支援事業に在宅医療・介護連携の推進が位置づけられた。令和2年9月には「在宅医療・介護連携推進事業の手引き(厚生労働省作成)」が改訂され、切れ目のない在宅医療と介護の提供体制を構築するため、地域の実情に応じて、取組内容の充実を図りつつ、PDCAサイクル※に沿った取組を継続的に行うことが求められた。 ○区では、医療・介護に係る関係団体及び地域包括支援センター※で構成する在宅療養推進協議会を設立して、在宅医療と介護のネットワークを構築するとともに、各地域包括支援センターでは、在宅療養相談窓口を設置して、在宅療養コーディネーターを配置し、地域の在宅療養に関する相談に対応している。 ○在宅療養を支える診療所、歯科診療所、薬局、介護事業所等の情報を掲載した「在宅療養資源マップ(冊子版)」を配布するとともに、令和2年度から「医療・介護資源情報提供システム(電子版)」の運用を開始した。 ○令和2年度からは新型コロナウイルス感染症の影響により一部の事業を中止したが、オンラインの活用等、開催方法を見直し、各事業の実施に向けて取り組んでいる。 【事業の実施状況】 資料編28ページ「13 在宅医療と介護・福祉の連携に関する事業の実施状況」を参照 取組の方向性 ○医療・介護双方のニーズを有する高齢者の大幅な増加が見込まれる中で、医療・介護が有機的に連携し、住み慣れた地域で医療・介護を継続して受け続けることができる体制の一層の整備が重要である。 ○医療と介護の連携が特に求められる4つの場面(日常の療養支援、急変時の対応、入退院支援、看取り等)で、各場面に応じた連携の現状と課題を整理して多職種の連携を一層推進するとともに、在宅療養制度や相談窓口のさらなる周知が必要である。 ○精神障害者にも対応した地域包括ケアシステム※の構築を推進するために、「精神保健医療福祉推進協議会」が立ち上がり動き始めている。保健、医療、福祉の関係者の連携による障害者へのアウトリーチ※が進むことを期待したい。 ○新型コロナウイルス感染症による感染リスクが懸念される中でも、在宅療養が継続的に行われる支援体制の確保が求められている。それには、保健所と医師会、医療機関等との緊密な連携が必要である。 ○いわゆるACP(アドバンス・ケア・プランニング)について、人生の最後の段階における医療のあり方として、元気なうちに自分の意思を表しておくような啓発が必要であり、そのような機会を介護・福祉と医療との連携の中で提供できるとよい。 D介護・福祉人材の確保・定着・育成とサービスの質の向上 現状 ○国は、都道府県による第8期介護保険事業計画(令和3年度〜5年度)の介護サービス見込量等に基づき、介護職員の必要数を集計し、令和7年度(2025年度)には約243万人、令和22年度(2040年度)には約280万人と推計した。 ○少子・高齢化の進展等により、令和22年度には、人手不足の問題は福祉分野全体でより一層深刻となることが見込まれている。国は、介護・福祉人材の確保・定着・育成のため、@介護・福祉職員の処遇改善、A多様な人材の確保・育成、B離職防止・定着促進・生産性向上、C介護職の魅力向上、D外国人材の受入環境整備など総合的な介護・福祉人材確保対策に取り組んでいる。 ○区が令和4年度に実施した「サービス提供事業所調査」において、約6割の事業者が職員の確保・離職対策が課題と回答している。また、障害福祉サービス事業者等からは、福祉人材の不足への対策について毎年度区への要望がなされている。区では、その対策として、介護職員等の宿舎借上げの支援、介護事業所及び障害福祉サービス事業所を対象とした「めぐろ福祉しごと相談会」、介護職員初任者研修等に係る受講費の補助等の実施等、様々な取組を進めている。 ○サービスの質の向上については、区は、区立特別養護老人ホーム及び障害者・児施設並びに保育所において第三者評価を実施するとともに、民間福祉施設に第三者評価の受審費用の補助を行っている。また、介護事業者に対しては、区による運営指導を実施し、中立な立場で公平、適切、迅速に対応する「保健福祉サービス苦情調整委員制度」を運用することにより、質の向上に努めている。 ○新型コロナウイルス感染症の影響により、第三者評価及び事業所立ち入りを原則としていた区による実地による指導が実施できなかった事例が多く生じた。 【事業の実施状況】 資料編29ページ「14 介護・福祉人材の確保・定着・育成とサービスの質の向上に関する事業の実施状況」を参照 取組の方向性 ○介護福祉に関わる人材の確保及び定着のためには、福祉職場の魅力ややりがいの周知、研修や労働条件の改善等、職員の定着・離職防止に向けた取組を区と事業者が連携して推進し充実を図る必要がある。外国籍の人材の活用については、人材不足の解消へ期待が大きい反面、外国人労働者への支援が十分でない状況にあるため、外国人労働者の生活に必要な支援などについても検討を進める必要がある。 ○全国的には、令和7年(2025年)から令和22年(2040年)にかけて、生産年齢人口の急激な減少が予測され、人手不足の問題は福祉分野全体でより一層深刻になるものと見込まれる。さらに、現状の介護福祉人材の高齢化は、将来の人材不足に拍車をかけることになる。限りある人的資源で増加する介護ニーズを支えていくためには、介護事業者によるICT※機器や次世代介護機器の活用の推進を支援し、介護業務の負担軽減に取り組む必要がある。また、物価高騰の影響も踏まえ介護・福祉事業者への経営の安定化を図るための情報提供や指導、助言などマネジメントについての経営支援やICTを活用した事業所業務の効率化の支援も必要と考える。 ○独自に福祉人材センターを設置している区が複数あり、学びの場があることにより人材が育っている。人材育成センターは、小規模事業所のサービスの質の確保とともに、将来の人材確保につながる。目黒区でもこうした視点からの検討が必要ではないか。 ○介護・福祉分野に共通する深刻な人材不足の課題を解決するとともに、複雑化、多様化した支援ニーズに対応していくためには、介護、高齢者・障害者・児童の福祉など、従来の制度・分野の枠を超えた人材の確保・育成について検討する必要がある。例えば、領域横断型の人材確保・育成を担当する部署を設置して、専門職や地域人材の育成、アクティブシニアの活用等様々な取組を進める施策を打ち出していくことも考えられる。 ○介護・福祉ニーズが多様化する中で働き方も多様化している。介護福祉施設では専門職とボランティアの両方が不足する状況にあり、その狭間の仕事や活動の担い手の確保・育成ができるとよい。収益事業と公益事業の中間にある需給調整のシステムを作れると人材を確保しやすくなる。 ○サービスの質の向上については、区が介護事業者に対して行う運営指導、集団指導についてオンラインによる実施等、効率的・効果的な運用が求められる。合わせて、区は事業者自らが自主的に事業の運営状況を点検できるよう支援することが必要である。 ○保健福祉サービス苦情調整委員制度については、1件の申立てに対して、利用するサービスに付随する周辺サービスにも影響が及び、複数の関係機関等への調査が必要な場合があり、きめ細かい丁寧な対応が求められている。 2 生涯現役社会・エイジレス社会の推進  人生100年時代において、高齢者がいつまでも元気で心豊かに過ごすには、健康な状態をより長く維持することが重要である。そのためには、一人ひとりが、介護予防・フレイル※予防に取り組むとともに、自らの希望に応じた仕事や学び、趣味、地域活動ができる機会を持ち続けられるよう、環境を整備していくこと等が求められている。  高齢期は「第二の人生の到来」又は「現役期間の延長」へと変化している。高齢期の様々な生活の態様や加齢に伴う変化に対応していけるよう、プレシニア期(中高年齢層)から生涯を通じた、その人に合ったライフキャリア(経験を踏まえた人生設計・生き方)の支援が必要となっている。  長引く新型コロナウイルス感染症の影響によって社会参加の機会が減ったことで、身体的な衰えや心身の健康に影響を及ぼすことが懸念される。社会とのつながりを持つことはフレイルや認知症のリスクの低下につながるため、新型コロナウイルス感染症の対策を図りながら、多様な社会参加の場の提供等に取り組んでいくことが大切である。 2-(1)介護予防・フレイル予防の推進 現状 介護予防について ○高齢者が要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減・悪化防止を目的とする「介護予防」は、介護保険制度創設時からの重要な取組の一つである。 ○事業開始当初は機能回復訓練など高齢者本人へのアプローチを中心に実施されていたが、平成26年度の介護保険法改正において、介護予防については地域の中で生きがいや役割をもって生活できるような居場所づくり等、高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチも含めたバランスのとれた取組が重要との方向性が示された。 ○現在は、住民自身が運営する活動を地域に展開し、人と人とのつながりを通じて参加者や通いの場が継続的に拡大していく地域づくりが求められている。 【事業の実施状況】 詳細は資料編33ページ「15 介護予防・フレイル予防事業の実施状況」を参照。 ○目黒区においても、かつては「教室参加型」を中心に事業を実施してきたが、近年は自主グループの養成や活動支援等に力を入れており、介護予防のためのオリジナル体操「めぐろ手ぬぐい体操」の作成や「シニア健康応援隊」(介護予防リーダー)の養成を行うなど、住民主体の介護予防活動の推進を図っている。 ○令和3年度からは「めぐろフレイル※予防プロジェクト」を立ち上げ、フレイルチェック会やフレイルサポーター養成講座を実施し、フレイル予防という視点で区民へのアプローチを図っている(新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、実質的な事業開始は令和4年度となった)。 リハビリテーションの視点 ○介護予防を効果的に展開するため、地域リハビリテーション活動支援事業として、介護予防に資する自主活動団体やケアマネジャーによる介護予防ケアマネジメントに対し、東京都理学療法士協会及び東京都作業療法士会と連携し、専門職の視点から助言等を行っている。 普及啓発 ○加齢に伴う心身の衰えは、早期に気づき、身体機能の維持・向上を図ることが重要であり、目黒区では定期的に「介護予防通信」の発行、めぐろ区報への介護予防の特集記事掲載等による普及啓発を行っている。なお、介護予防通信は、3年に1回高齢者(要介護1〜5の認定を受けた方を除く。)の手元に届くよう郵送配布を実施している。 コロナ禍における取組み ○感染症対策として、自宅で取り組める事業の実施や開催方法の工夫等が求められている。 ○目黒区では、講座や教室等の開催にあたっては感染状況を注視して事業実施を判断するとともに、開催時には感染症対策に十分な配慮を行うよう努めている。 ○「めぐろ手ぬぐい体操」のYouTube配信や一部講座をオンライン開催するなど、外出を控えている方が介護予防に取り組むことのできる環境整備に努めている。 取組の方向性 住民主体の活動の推進 ○住民主体による介護予防・フレイル※予防活動は、高齢者の身体機能の維持・向上に加え、認知機能の低下や精神状態の悪化を防ぐ効果が期待できる。今後は更に活性化し拡充していく必要がある。 参加者の拡充 ○人との交流を望まない方や新型コロナウイルス感染症の感染を避けるために外出を控えている方、また、通いの場に行きたくても行くことが難しい方等も介護予防に取り組めるよう、事業の実施手段や実施内容等を工夫したうえで、更に充実を図る必要がある。 普及啓発 ○介護予防・フレイル※予防の推進においては、高齢者本人はもとより、家族等の周囲に対しても理解促進を図る必要がある。また、介護予防・フレイル予防は高齢者になる前からの意識の醸成も重要であるため、現役世代に対しても普及啓発を実施していくことが必要である。 保健事業と介護予防の一体的実施 ○関係法令が整備され、生活習慣病※等の疾病予防・重症化予防等の保健事業とフレイル※対策等の介護予防事業の連携により高齢者を支援していくことが求められている。 ○今後は医療・介護双方のデータを活用し区の健康課題を抽出した上で、より効果的に介護予防・フレイル予防を推進し、健康寿命※の延伸を図る必要がある。 2-(2)社会参加・居場所づくり・就労支援の推進 現状 高齢社会対策大綱 ○平成30年2月に閣議決定された「高齢社会対策大綱」では、65歳以上を一律に「高齢者」と見る一般的な傾向はもはや現実的なものではなくなりつつあり、年齢による画一化を見直し、全ての年代の人々が希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できるエイジレス社会を目指すことが、基本的考え方のひとつとして定められている。 高齢者の意向・実態 ○令和4年度に区が実施した「介護予防・日常生活圏域ニーズ調査」では、地域活動に参加者として参加する意向のある人の割合について、「ぜひ参加したい」、または「参加してもよい」と回答した人は50%強であった。一方、「すでに参加している」と回答した人は約4%であった。高齢者の社会参加意向がうかがえる一方で、実際に活動している人は少数にとどまっている。また、同時実施の「高齢者の生活に関する調査」では、新型コロナウイルス感染症の流行による困りごととして「知人・友人との対面での交流ができない」と回答した人が6割近くいる中で、通信・通話機器として「スマートフォンを使っている」とした人が7割近くになった。 【事業の実施状況】 詳細は資料編35ページ「16 社会参加・居場所づくり・就労支援事業の実施状況」を参照 老人クラブ活動への支援 ○地域のおおむね60歳以上の高齢者の集まりである老人クラブに対し、活動費の一部助成、活動場所の提供を行うことで、高齢者の生きがいづくり、仲間づくりを支援している。また、区内老人クラブの集まりである「目黒区竹の子クラブ連合会」に対しても、芸能大会、輪投げ大会、グラウンドゴルフ大会等の開催を支援することで、老人クラブ間の交流と親睦を図っている。 老人いこいの家、高齢者センターの運営 ○高齢者の福祉を増進するための施設として、「老人いこいの家」を区内に24か所設置している。老人いこいの家では、各種高齢者団体に活動拠点を提供しているだけでなく、初めての方にもわかりやすい、趣味、教養、健康増進のための講習会を実施することで、高齢者の生きがいづくり、健康づくり、仲間づくりの支援を行っている。 ○また、高齢者が心身の健康を維持し、生きがいのある生活を送ることができるよう相談、指導及び援助を行うことにより、高齢者の福祉を増進する施設として、「高齢者センター」を区内に1か所設置している。高齢者センターでは、保健師等による健康相談事業、趣味・教養の向上等を図るための講習会の実施、浴室の提供等を行い、高齢者の社会参加支援を行っている。 めぐろシニアいきいきポイント事業の実施 ○高齢者が「いきいきサポーター」として登録し、介護支援など社会貢献活動を行うことにより、区内共通商品券と交換することができるポイントを取得する「めぐろシニアいきいきポイント事業」を実施し、「いきいきサポーター」自身の生きがいづくり、健康増進、介護予防につながるような取り組みを行っている。 地域デビューの支援 ○定年退職高齢者の地域社会参加のきっかけづくりや意識啓発を図るために、プレシニア期の方たちを対象にして、地域デビュー講演会を実施している。 ○絵本読み聞かせボランティア活動団体「りぷりんと」の立ち上げ支援を実施することで、高齢者が地域の中で役割をもっていきいきと生活できるような取り組みも行っている。 地域交流サロン・会食サービス事業の実施 ○高齢者の閉じこもりを防ぎ、地域での居場所づくりを推進するために、「地域交流サロン」事業を実施している。また、高齢者の閉じこもり防止や食生活の改善・健康の増進を図るため、「会食サービス」事業も実施している。 シルバー人材センターの支援 ○働く意欲と能力のある、原則として60歳以上の高齢者を対象に「臨時的かつ短期的またはその他の軽易な就業」を提供するとともに、地域貢献活動など生きがいづくりや地域社会への参加を促しているシルバー人材センターの運営を支援している。 取組の方向性 ○コロナ禍における各種イベントの自粛等による、社会参加の機会減少に伴い、高齢者のフレイル※進行や地域住民同士のつながりの希薄化が問題となっている。このような中、老人クラブ活動は、高齢者同士のつながりや助け合いの醸成、高齢者の閉じこもり防止に資するため、ポストコロナ時代において、ますます重要となってくる。このため、区は老人クラブの活動に対し、自主性を尊重しながら、高齢者の健康増進、教養の向上などによる生きがいづくり、仲間づくりに向けた様々な支援を行っていくことが求められる。 ○老人いこいの家は地域の高齢者の生きがいづくりや健康づくりなどの活動拠点としての役割を担っているが、区では地域のコミュニティの一層の活発化の観点から、老人いこいの家を含め、貸室のあり方見直しの検討が進められている。区は引き続き、高齢者が気軽に訪れることができる交流の場を提供するとともに、高齢者だけでなく、広く多世代が交流することのできる地域の居場所づくりを推進する必要がある。 ○様々なサークル活動や発表の場、知識や技術を生かした社会貢献活動を楽しみながら行える場が地域の中につくられ、人が集まる、そういった仕組みを進めていきたい。 ○高齢者の生きがいづくりや健康づくりの場では、元気な人とフレイルや要支援状態にある人との境目がなくなってきている。心身の様々な状態にある人が一緒に楽しみながら活動できるよう、いろいろな手段や方法があることが望ましい。 ○新型コロナウイルスの感染拡大を契機とした「新たな日常」を踏まえた、高齢者の心身の機能低下や閉じこもりなどを予防する取組とともに、デジタルデバイドの解消を図りながらICT※を活用し、オンラインでの社会参加等、高齢者の生きがい活動の場を広げる取組も必要である。例えば、今後導入が予定されている、東京都の「人生100年時代社会参加マッチング事業 オンラインプラットフォーム」において、地域活動に参加意向のある人と、実際に行われている地域活動とをマッチングさせる取組みを活用することも考えられる。 ○人生100年時代を見据え、生涯現役社会の実現に向けた取り組みが重要となり、「支えが必要な人」というこれまでの高齢者のイメージを払拭し、高齢者が自らの知識や経験を生かすことができる地域社会を実現していくことが求められる。このため、高齢者の就労意欲や能力を最大限活かすため、ハローワークやワークサポートめぐろ等地域の様々な機関と連携して就労の場を提供するとともに、地域社会貢献活動事業を実施するシルバー人材センターの運営を支援していくことが必要である。また、雇用情勢の変化やプレシニア期における就労に関する情報提供を行う講演会等を実施することで、中高年齢者が就労に対する関心や意欲を持つきっかけづくりを行うことも求められる。 ○介護現場では、専門職をできる限り有効活用するという観点から業務の切り分けが進められ、いわゆる「介護助手」の活用が言われている。ボランティア活動にとどまらない就労として、高齢者の積極的な参画が期待されており、その受け皿となる仕組をつくることを検討してはどうか。 3 障害への理解促進・障害のある人への支援の充実  障害者基本法及び障害者差別解消法の理念に沿って、障害の有無にかかわらず、誰もが自らが望む生活のあり方を選択し、必要な支援を受けながら、地域社会の一員として自立し、充実した生活を送ることができる共生社会※の実現に向けた取組を進めている。  共生社会の実現には、地域社会全体の障害理解のもとに、障害者が希望する地域生活を実現・継続するための支援の充実が図られることが必要不可欠である。  このため、障害の有無にかかわらない多様な交流や、コミュニケーションを支援するための環境の整備などを通じて、相互に理解を深めていく取組を推進していくとともに、障害者の様々な相談を受け止めながら、教育、就労、地域での暮らしや居住の場など、人生のあらゆる場面で本人の希望が実現できるような支援体制の充実が求められる。その際には、意思表示が難しい人の希望を引き出す支援も欠かせない。 3-(1)身近な地域で暮らし続けていくことができる仕組みづくり 現状 相談支援体制の充実 ○令和4年度に実施した障害者計画策定に関する調査結果によると「障害のある人が、必要な支援を受けながら地域で自立した生活を送るために、重要と思う取組」について、すべての障害種別において「相談支援の充実」と回答した割合が5割を超え最も高くなっている。 ○令和4年12月の障害者総合支援法等の改正では、緊急時の対応や地域移行の推進を担う地域生活支援拠点※等と、相談支援体制の中核的役割を担う基幹相談支援センター※の役割が法律上明確化され、区市町村における整備等が努力義務となった。 ○区では、平成29年度に地域生活支援拠点を開設し、令和3年度には基幹相談支援センターが事業を開始した。 ○また、区内5か所にある地域包括支援センター※は、すべての区民を対象に、世帯が抱える複雑化・複合化する障害を含む様々な課題を丸ごと受け止める「住民に身近な保健福祉の総合相談窓口」となっている。福祉総合課は地域包括支援センターの後方支援を行うとともに、「福祉の総合相談窓口」を設け、障害・介護・生活困窮等の相談支援の総合調整を担っている。 精神障害者の地域生活に向けた支援の推進 ○疾病と障害が併存していることが精神障害の特性の一つであり、保健・医療と福祉サービスの連携を確保するとともに、「支える側」「支えられる側」という関係を超えた相互に助け合うことができる地域づくりが求められている。 ○「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム※」の構築を進めるため、保健・医療・福祉関係者による「目黒区精神保健医療福祉推進協議会」を年2回開催し、まずは医療関係者を中心に検討し、支援を開始している。 ○令和3年4月からは、精神科病院に長期入院している精神障害者及びその家族に対して、地域移行支援・地域定着支援のサービス利用に向けた相談支援等を行う「精神障害者退院相談支援事業」を開始した。 ○精神障害者の地域移行については、地域住民の障害理解を深めることが重要である。区民に向けた精神保健講演会の実施や、関係者に向けた疾患理解、ピアサポート※の勉強会を実施している。 人材の確保・定着・育成 ○将来にわたって安定して質の高い障害福祉サービス等を提供していくためには、それを担う人材の確保・定着・育成は重要な課題である。他の福祉サービスと同様に、障害福祉分野においても人材の確保が困難な状況が継続しているが、特に相談支援専門員の確保が課題となっている。 ○区では、めぐろ福祉しごと相談会の開催や、民間障害者グループホーム※等の職員宿舎借上に対する助成など人材の確保・定着に向けた支援を行っているほか、基幹相談支援センター※による相談支援専門員に対する専門的な研修や、居宅介護等事業所の研修受講費用助成など人材育成に対する支援に取り組んでいる。 【事業の実施状況】 資料編38ページ「18 身近な地域で暮らし続けていくことができる仕組みづくりに関する事業の実施状況」を参照 取組の方向性 相談支援体制の充実 ○地域生活支援拠点※においては、これまで以上に区内障害福祉サービス事業者等の関係機関との連携を深めるとともに地域生活支援拠点の支援実績及び実績を踏まえた課題を関係機関とともに検証していくことが求められる。 ○また、基幹相談支援センター※が相談支援体制の充実・強化に向け中心的な役割を果たしていくためには、区内の相談支援専門員が感じている課題や困り事を的確に把握することはもとより、相互に信頼関係を築いていくことが必要不可欠である。 ○地域包括支援センター※では、障害を含めた多分野に渡る相談がより身近な場所で行えるよう、引き続き「出張相談会」を定期的に開催し、地域とのつながりをさらに深めることが必要である。区報や包括だより、SNS等を利用しながら、周知活動を積極的に行っていくことが求められる。さらに、関係機関と密接に連携・協働しながら適切な支援や社会資源につなげられるよう連携強化を図っていくことが必要である。 精神障害者の地域生活に向けた支援の推進 ○精神障害のある人が地域で安心して暮らし続けていくためには、病状が安定していることが必要である。そのため継続的な治療は必須であり、未治療や治療中断にならない仕組みづくりが求められている。目黒区精神保健医療福祉推進協議会では医療を中心とした連携強化に取り組むとともに、今後の地域での支援のあり方や、取り組みの拡充について検討を進めていく必要がある。 ○また、地域での生活を継続的に支えていく保健・医療・福祉関係者の連携の強化や、地域住民の理解も欠かせない。今後は、障害福祉サービス事業者等を含めた関係機関との情報共有や連携の場の確保、ピアサポーターの活用の促進、当事者家族が悩みや思いを語れる場や当事者団体の活動の支援、地域住民に向けた普及啓発活動の更なる推進が求められる。ピアサポーターの活用にあたっては、様々な人が参加して、人材の発掘や育成の視点も含めて検討していくことが必要と考える。 人材の確保・定着・育成 ○相談支援事業所では、人材不足により新たな相談の受け入れが困難な状況が継続しているなど、人材の確保は喫緊の課題となっていることから、障害福祉の仕事の魅力の発信や、職場環境の改善、事務の効率化など、人材の確保に向け区と事業者が連携した取組が必要である。 ○相談支援専門員同士が日常的に相談できるようなネットワークができると良い。自分の職場だけでなく地域の社会資源の情報を得て仕事に役立てることができ、この地域で仕事がしやすく、やりがいがあると実感できる効果がある。 ○地域の貴重な人材が最大限の力を発揮するための人材育成も重要である。各事業所のニーズを踏まえた研修会等の実施のほか、複雑化・多様化する福祉課題に対応していくために分野の異なる事業所が情報交換や連携を深めることができる場の提供などに取り組んでいくことを期待する。 ○令和4年12月の国の全世代型社会保障構築会議の報告書では、一人の人材が複数の分野にわたる専門的知識を習得できるような工夫の検討を求めている。福祉分野に共通する人材不足の課題を解決するとともに、包括的な支援ニーズに対応していくために、障害福祉や介護・高齢者福祉など、従来の制度・分野の枠を超えた人材の確保・育成のあり方について、区として検討してくことが必要である。 ○高齢者の介護・福祉分野は事業所が多く規模が大きいところもある。高齢の分野と障害の分野の事業所がつながり、サービス提供とマネジメントなど職員が担う役割を分けていけるような施策があると人材の確保・定着につながると考える。また、相互に職員が講師を担うなどの研修を行うことも効果的である。自分の事業所に留まらず、業種や分野が違う職員が教え学び合い、交流する中で、リアルな地域の社会資源を知り、すぐに使える実践的な研修ができると考える。そういう取組を行政が支援することも必要である。 ○職員が企画づくりに取り組んだり、持っているスキルを違う分野で生かしたりする経験は職員育成の効果がある。自分の提案や経験・知識が地域で評価されると大きなインセンティブになるため、そうした機会を増やすことも大切である。 3-(2)誰もが社会に参加し、貢献することができる仕組みづくり 現状 障害者による情報の取得利用・意思疎通に係る施策の推進 ○すべての障害者が、あらゆる分野の活動に参加するためには、情報の十分な取得利用や円滑な意思疎通が極めて重要であることから、令和4年5月に「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」が施行され、関連施策の実施等が地方公共団体の責務とされた。 ○国の障害者基本計画(第5次)においても、ICT※をはじめとする新たな技術についてはアクセシビリティ※との親和性が高く、情報の提供、意思疎通、意思決定支援等の様々な場面での利活用について検討を行い、積極的な導入を推進するとしている。 ○令和4年度に実施した障害者計画策定に関する調査結果によると「情報発信や情報取得に当たり、あなたに適した方法は何ですか」という設問に対し、多くの障害種別においてパソコン・スマートフォンと回答した割合が7〜8割と高く、ICT機器やオンラインの活用が情報アクセシビリティの向上に寄与していると考えられる。なお、知的障害者では絵図・写真(コミュニケーションボードなど)と回答した割合が約4割で最も高くなっている。 ○区においては各種計画等を中心として、音声コードを活用した印刷物の作成が浸透してきているほか、窓口等におけるタブレット端末を活用した意思疎通支援の充実を図るなど、ICTの活用に取り組んでいる。一方で、総合庁舎総合案内や地域避難所等へのコミュニケーションボードの設置、手話通訳者の養成や点訳・音訳サービスの推進、印刷物等へのFax番号の記載の徹底など、ICTによらない情報保障、意思疎通支援にも継続して取り組んでいる。 就労支援の充実 ○就労を希望する障害のある人のニーズや社会経済状況が多様化している中で、障害のある人が働きやすい社会を実現するため、一人ひとりの希望や能力に沿った、よりきめ細かい支援が求められている。障害者総合支援法及び障害者雇用促進法の改正により、就労アセスメント※の手法を活用した新たなサービス(就労選択支援)が創設され、週所定労働時間が特に短い精神障害者、重度の身体、知的障害者を雇用した場合に、雇用率に算定できるものとされた。 ○区では目黒障害者就労支援センターにおいて、障害のある人の一般就労に向けた支援を行っている。就労アセンスメントや職業評価(実習)による、一人ひとりに合った働き方の実現に向けた支援を行っており、利用登録者数は年々増加している。就職者数については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により減少しており、回復傾向にはあるものの、依然として影響は残っている。 ○福祉的就労については、令和3年度に福祉の店として区内2店目となるCOHANAを開店したほか、区内障害福祉施設の自主生産品や受注作業を紹介したパンフレットを刷新するなど、自主生産品の販路拡大、工賃向上に向けた支援を行っている。令和2年度の区内の就労継続支援B型施設の年間工賃総額は、新型コロナウイルス感染症の影響等により対前年比24%の減となったが、令和3年度以降は回復傾向にある。 【事業の実施状況】 資料編42ページ「19 誰もが社会に参加し、貢献することができる仕組みづくりに関する事業の実施状況」を参照 取組の方向性 障害者による情報の取得利用・意思疎通に係る施策の推進 ○ICT※機器については、画像認識、音声認識、文字認識など技術の進展は目覚ましく、障害者の情報アクセシビリティ※の向上に大きく影響することが見込まれるため、最新の情報や国の動き等を注視しながら、障害者の機器の入手に対する支援や、区の各事業等における活用などの取組が期待される。 ○新型コロナウイルス感染症の拡大により社会全体でオンラインの活用が進んだ一方、コミュニケーション方法の制約等が生じ情報取得等に困難を抱えることとなった障害者がいることも忘れてはならない。デジタル技術の活用が難しい障害者が取り残されることがないよう活用支援等の取組に加え、ICT機器の活用のみに偏らない多様な手段を用いた情報保障、意思疎通支援が必要である。 ○障害だけでなく多様性に対応できるコミュニケーション支援が必要で、開発しなくてはならないことがたくさんある。その際には当事者の思いや声を受け止めることが大事である。 就労支援の充実 ○障害者の就労に関する各種制度改正に伴い、今後、障害者や事業者等からのニーズはより増加し、多様化していくことが見込まれる。目黒障害者就労支援センターは、人材育成や更なる支援の質の向上に取り組み、区内就労移行支援事業所等との情報やノウハウの共有を図り、区の就労支援体制の充実に向けて取り組んでいくことが求められる。 ○障害のある人が充実した社会生活を送るためには、就労はスタート地点の一つであり、就労後に生じる様々な問題等について障害者本人と雇用先である事業者が、相互理解のもと自己解決できることが重要である。このため、就労後の定着支援や、事業者に向けた障害理解の取組をより一層推進していくことを期待する。 ○福祉的就労については、利用者の高齢化・重度化と工賃向上の双方の課題に対応していく必要がある。区は各事業者と連携し、各事業者の取組に対する支援や、福祉の店の売上げ向上に向けた取組、区における障害者就労施設からの調達案件の掘り起こしなどを進めていくことが求められる。 ○ひきこもり※相談の対象者や軽度の発達障害※のある人など、障害者総合支援法の対象にはならない、いわゆるボーダーラインにある人達への社会参加の支援も必要である。就労に向けた経験を積んだり、社会的なつながりを持てる機会や場を、社会福祉法人や福祉事業者が地域の貢献事業として提供できるとよい。 ○重度障害者の大学通学や就職時の移動支援、就労のためのホームヘルパー派遣等、制度の狭間になっている問題をしっかり検討していくことが大切である。 3-(3)ともに暮らすまちづくりの実現 現状 心のバリアフリーの推進 ○障害の有無にかかわらず、お互いに自分らしさを認め合い支え合いながら、共に生きる社会を実現してくためには、心のバリアフリー※の推進が必要不可欠である。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会や各種イベント等を通じて障害及び障害者への理解が進むなど、心のバリアフリーが推進されたが、この機運を一過性のものにすることなく、障害者への差別や偏見をなくし、誰もが安心して暮らせる社会の実現に向けた取組を継続していくことが重要である。 ○区では、目黒区障害者差別解消支援地域協議会における相談事例の情報共有、関係機関との連携をはじめとして、めぐろ区報による障害理解のための特集記事の掲載、区民向けの講演会の開催などに取り組んでいる。また、令和4年12月には「めぐろふれあいフェスティバル」を3年ぶりに開催し、多くの区民が来場するなど、障害理解の推進を図っている。 ○区立学校では、障害のある人との交流活動(点字・声かけ体験・車椅子体験・視聴覚障害者の話)、特別支援学級と通常の学級との交流及び共同学習や、パラスポーツの体験等を通じて、相互に個性や違いを認めて尊重し合える豊かな心をしっかりと育めるよう、福祉教育を推進している。 地域における安定した暮らしの場の確保 ○令和4年度に実施した障害者計画策定に関する調査結果によると、将来の暮らしについて、すべての障害種別で「現在の自宅で暮らし続けたい」という回答が半数以上を占め最多となっている。また、障害のある児童の保護者へのアンケート調査における子どもの将来の暮らしに関する質問では「自立してアパートやマンションを借りるなどして暮らしてほしい」という回答が51.2%で最多となっている。 ○調査結果から、障害のある人が地域で安心して暮らし続けていくための環境整備に向けて、自宅での暮らしを支える家族の高齢化や「親亡き後」などを見据えた取組とともに、自立した生活のための住まいの確保を支援するための取組が重要であるといえる。 ○障害者グループホーム※は障害者の高齢化・重度化や、障害者を支える家族の高齢化等に対応し、支援を受けながら、住み慣れた地域で安心して暮らし続けていくための住まいとして重要な役割を担っている。区では障害者グループホームの整備促進のため、施設整備費等に対する区独自の補助を行っている。 ○住まいの確保の支援については、令和4年5月に障害者を含む住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進等に関し必要な支援について協議する会議体として「目黒区居住支援協議会」を設置した。さらに、分野を超えた多様な課題解決に向けて設置した包括的な相談支援機関である「福祉の総合相談窓口(福祉のコンシェルジュ)」に、令和4年4月から「住まいの相談員」を配置し、生活支援と一体的に住まいの相談支援を行うワンストップ型相談支援体制の充実を図っている。 【事業の実施状況】 資料編45ページ「20 令和4年度に実施した障害理解・差別解消に関する事業の実施状況」を参照 取組の方向性 心のバリアフリーの推進 ○令和4年度に実施した障害者計画策定に関する調査結果によると「あなたは、この3年間に差別をされたと感じたことはありますか。」という問いに対し、障害者全体で14.5%(精神障害者については28.3%)、障害児の保護者の37.3%が「されたことがある(感じたことがある)」と回答しており、障害理解・差別解消の取組をより一層推進していくことが求められる。 ○障害者への差別が生じる要因として、身近に障害のある人がいないことや直接的なふれ合いが少ないことが、障害のある人への無関心や無理解につながり、それが差別意識をもたらすと考えられる。障害への理解・差別解消の推進に当たっては、日常の中にある自らの体験を通じて理解を深めていくことが重要であり、この視点に立って取組を進めていくことを期待する。 ○福祉教育で、障害者や高齢者の疑似体験をして、「大変だなあ」「可哀そうだな」で終わらない取組にすることが必要である。苦労はありながらも地域の支え合いによって前向きに生きているということを伝えていくことが大切で、それには、親も含めた当事者団体の活動が大きな意味を持っている。 地域における安定した暮らしの場の確保 ○障害のある人及び家族の高齢化に伴い、障害者グループホーム※に対する需要は今後ますます増加していくことが見込まれる。補助制度の拡充や、国公有地、空き家の活用など様々な施策を組み合わせながら、整備促進のための取組を積極的に進めていくことが求められる。 ○居住支援協議会では、構成員である地域福祉団体、不動産団体、行政が相互に連携して居住支援施策を推進し、地域福祉の向上を図っていく必要がある。また、不動産業者や家主に対する障害理解への啓発に努め、障害のある人が安心して生活できる環境づくりに取り組むことが求められる。また、住まいの相談員については、生活相談と一体的に実施することで、一人ひとりの状況に応じて障害者支援機関と連携して必要な支援につなげていくことが期待される。 ○地域の安心できる暮らしの場は、施設や住まいだけでなく、地域で支え合い、つながる場も大切である。地域で一人ひとりができることに取り組むという視点が大事である。 3-(4)障害のある児童の健やかな成長のための発達支援 現状 ○障害者権利条約の実施状況に関し、令和4年9月に採択・公表された国連の障害者権利委員会による総括所見では、全ての障害のある児童が幼少期から一般の保育制度を完全に享受するための必要な措置の実施や、通常の学校を利用する機会を確保することなどが勧告された。 ○障害者権利委員会による総括所見も踏まえ、令和5年3月に公表された国の障害者基本計画(第5次)においては、児童発達支援センター※の専門的機能の強化や地域における中核的支援施設として必要な体制整備、障害児の保育所での受入れの促進、障害の有無にかかわらず可能な限り共に教育を受けられる条件整備やインクルーシブ教育システムを推進することなどが掲げられている。 児童発達支援センター機能の充実 ○令和4年6月に改正された児童福祉法により、児童発達支援センター※は地域における障害児支援の中核的役割を担う機関として明確化され、今後は、点在する地域資源を重ね合わせた重層的な支援体制を整備する中核として機能することがより一層求められる。 ○目黒区児童発達支援センターでは、児童福祉法に基づく児童発達支援や障害児相談支援を実施しており、利用者数は年々増加の一途をたどっている。令和2年度からは保育所等訪問支援を開始して、保育所等における集団生活の適応のための専門的な支援を行っている。 医療的ケアが必要な児童等に対する支援体制の充実 ○令和3年に医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が施行され、関連施策を実施することが地方公共団体の責務とされた。東京都では、相談支援等を行う東京都医療的ケア児支援センターを令和4年9月に開設した。 ○区では、医療的ケア児支援関係機関協議会を設置し、医療的ケア※が必要な児童が地域で必要な支援を円滑に受けることができるよう保健・医療・福祉・教育等の関係機関による協議及びネットワーク構築の場を設けているが、新型コロナウイルス感染症の影響により令和2年度以降開催を中止している。 ○令和2年度からは、「重症心身障害児通所支援事業所あいりぃず」を開設して、医療的ケア児を含む重症心身障害児※が地域で必要な支援を円滑に受けることができるよう、就学前及び就学後の療育体制整備を図っている。 ○保育園の担当所管では、医療的ケア児の保育園への受入れや在園中の保育及び医療的ケア※を安全かつ適切に行うため、令和4年10月に「医療的ケア児の保育園入園に関するガイドライン」を定め、保育園における支援体制の充実や保育環境の整備を進めている。 インクルーシブ教育システムの構築を基本的な考え方とした特別支援教育の推進 ○インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある児童・生徒等に対して自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要である。 ○区立学校では、令和2年3月に策定した目黒区特別支援教育推進計画(第四次)に基づき、各学校・園における校内支援体制の整備や心のバリアフリー※の推進、特別支援教育※の専門性をもつ教員の育成、小・中学校における多様な学びの場での指導・支援の充実等、インクルーシブ教育システムの構築に向けた取組を進めている。 【事業の実施状況】 資料編49ページ「21 障害のある児童の健やかな成長のための発達支援に関する事業の実施状況」を参照 取組の方向性 児童発達支援センター機能の充実 ○児童発達支援事業所や放課後等デイサービス※事業所は全国的に年々増加してきているが、同時にサービスの質の向上が課題となっている。目黒区においても、事業所数や新規開設に関する相談が増加傾向にある。 ○目黒区児童発達支援センター※には地域の障害児通所支援事業所に対する支援内容等への助言・援助等を行う機能が求められており、地域の障害児通所支援事業所全体の質の底上げを図っていくための体制の強化や、地域の事業所との関係性の構築、連携の強化を進めていくことを期待する。 ○また、地域におけるインクルージョン(参加・包容)の推進も目黒区児童発達支援センターに期待される重要な役割の一つである。保育所等訪問支援については、障害の有無にかかわらず共に育ちあう環境整備を進めていく上で重要な事業であり、保育所や学校等の関係機関との連携を更に進め、より効果的に事業を推進していくことが求められる。 ○保育所は、障害のある子どもと障害のない子どもが育ち合い交流できる場になっており、保育所でのインクルーシブ保育の充実を期待したい。そのためには、育成カリキュラムや研修などに力を入れて保育士の障害理解の強化を図るとともに、それを支える人員体制の充実など環境整備が必要である。 医療的ケアが必要な児童等に対する支援体制の充実 ○区では医療的ケア児及びその家族への支援の充実に取り組んでいるが、目黒区障害者自立支援協議会からの意見に見られるように、地域で安心して暮らしていくためのサービス基盤の確立が十分には図られていない現状がある。人材確保や施設整備など、区のみで解決を図ることが難しい課題もあることから、東京都とも連携を図りながら支援体制の充実を図るとともに、医療的ケア児支援関係機関協議会を再開し、関係機関の連携・協力のもと取組を進めていくことを期待する。 ○医療的ケア児はもちろんのこと、障害のある子どもの保護者のレスパイトケア※も重要である。親以外にもヤングケアラー※の問題にもつながるが、兄弟姉妹が抱える問題もあり、こうした点も含めて障害のある人を地域で支える視点が大切である。 インクルーシブ教育システムの構築を基本的な考え方とした特別支援教育の推進 ○インクルーシブ教育システムの構築を基本的な考え方として、共生社会※の実現に向け、全ての子どもが可能な限り共に学ぶことに配慮しつつ、自立と社会参加に向けて一人ひとりの教育的ニーズに応じた連続性のある多様な学びの場を充実していくことが求められる。 ○令和7年3月に策定予定の目黒区特別支援教育推進計画(第五次)に向け、現行計画の評価・検証を適切に行い、インクルーシブ教育システムの構築に向けた取組を更に進めていくことが必要である。 ○学校教育は、特別支援教育※というよりも、一般の教育の方がむしろ変わっていく必要がある。インクルーシブ教育※は障害のある子どもと共に学ぶというだけでなく、外国籍の子どもや経済的な格差など様々な困難を抱えた子どもを含めた包摂的な教育であることが求められる。誰一人取り残さない、多様性を尊重する流れを学校教育の中で広げていくことが大切であり、福祉部門と教育委員会の連携はますます重要になっている。 【目黒区長からの諮問】 令和4年7月29日、目黒区地域福祉審議会は、区長から目黒区における保健医療福祉計画、介護保険事業計画及び障害者計画を改定するにあたり、社会情勢の変化に対応した各計画の方向等について、諮問を受けた。 【目黒区地域福祉審議会委員名簿】 任期:令和4年7月18日から令和6年7月17日まで 【審議会】◎会長 ○副会長 【計画改定専門委員会】◆委員長 ◇副委員長 △委員 学識経験者 ◎◆石渡和実  東洋英和女学院大学名誉教授 ○◇北本佳子  昭和女子大学教授  △平岡公一  東京通信大学教授  △中島修   文京学院大学教授 区議会議員  武藤まさひろ  目黒区議会生活福祉委員会委員長(R5.5.24〜)  山本ひろこ   目黒区議会生活福祉委員会副委員長(R5.5.24〜)  西村ちほ    目黒区議会生活福祉委員会委員長(〜R5.4.30)  岩崎ふみひろ  目黒区議会生活福祉委員会副委員長(〜R5.4.30) 社会福祉関係者 △香取寛    社会福祉法人奉優会理事長 △松原辰昭   目黒区障害者団体懇話会副会長 △徳永泰行   目黒区介護事業者連絡会会長 △長崎驕@   社会福祉法人目黒区社会福祉協議会事務局長 保健医療関係者  脇山博之   一般社団法人目黒区医師会副会長  吉田敏英   公益社団法人東京都目黒区歯科医師会会長  寺田友英   一般社団法人目黒区薬剤師会代表理事 区内関係団体  今井礼子   目黒区住区住民会議連絡協議会地区委員  松アひろ子  目黒区民生児童委員協議会会長  島崎孝好   目黒区竹の子クラブ連合会会長  内川とみ惠  目黒区社会福祉協議会在宅福祉サービスセンター協力会員  王美玲    目黒区ミニデイサービス・ふれあいサロン連絡会副代表  岡村矢恵子 めぐろボランティア・区民活動センター登録団体NPO法人発達相談支援協会Lagom代表 公募区民  我妻 美代  稲生 美登里  内海 祐利子  井 成美  南部 英幸 ▼専門委員(任期:令和4年7月18日から計画改定にかかる審議終了まで)  △岩崎香 早稲田大学教授 【審議経過】 開催日 令和4年7月29日 令和4年度第1回地域福祉審議会  内容 ・「保健医療福祉計画」、「介護保険事業計画」及び「障害者計画」の改定について(諮問)     ・審議会の進め方等について     ・目黒区保健医療福祉計画令和3年度の実績、計画目標に対する評価報告について     ・目黒区介護保険の利用状況(計画と実績)について     ・目黒区障害者計画令和3年度の実績、計画目標に対する評価報告について 開催日 令和4年8月23日 令和4年度第2回地域福祉審議会  内容 ・計画改定専門委員会への付託事項について     ・第9期介護保険事業計画基礎調査及び高齢者の生活に関する調査の実施について     ・障害者計画改定に伴うアンケート調査の実施について 開催日 令和4年10月4日 第1回計画改定専門委員会  内容 ・付託事項の進め方について     ・付託事項「各計画の基本理念」の検討     ・付託事項「地域共生社会の実現の推進」の検討 開催日 令和4年11月7日 第2回計画改定専門委員会  内容 ・付託事項「地域共生社会の実現の推進」の検討 開催日 令和4年12月7日 令和4年度第3回地域福祉審議会  内容 ・計画改定専門委員会の検討状況について 開催日 令和5年1月13日 第3回計画改定専門委員会  内容 ・付託事項「地域共生社会の実現の推進」の検討     ・付託事項「生涯現役社会・エイジレス社会の推進」の検討 開催日 令和5年3月2日 令和4年度第4回地域福祉審議会  内容 ・計画改定専門委員会の検討状況について     ・障害者自立支援協議会からの意見について     ・第9期介護保険事業計画基礎調査及び高齢者の生活に関する調査、目黒区障害者計画策定に関する調査の結果(速報)について 開催日 令和5年3月27日 第4回計画改定専門委員会  内容 ・付託事項「障害への理解促進・障害のある人への支援の充実」の検討 開催日 令和5年4月28日 第5回計画改定専門委員会  内容 ・東京都社会福祉審議会意見具申について     ・付託事項「各計画の基本理念」について     ・計画改定専門委員会における検討のまとめについて 開催日 令和5年5月24日 令和5年度第1回地域福祉審議会  内容 ・計画改定専門委員会における検討のまとめについて     ・第9期介護保険事業計画基礎調査及び高齢者の生活に関する調査、目黒区障害者計画策定に関する調査の実施結果について 開催日 令和5年6月23日 令和5年度第2回地域福祉審議会  内容 ・「目黒区保健医療福祉計画、介護保険事業計画及び障害者計画改定の基本的な方向について(中間のまとめ)(案)」について     ・中間のまとめの周知・意見募集及び「地域福祉を考えるつどい」の開催について     ・目黒区保健医療福祉計画令和4年度の実績、計画目標に対する評価報告について     ・目黒区介護保険の利用状況(計画と実績)について     ・目黒区障害者計画令和4年度の実績、計画目標に対する評価報告について 開催日 令和5年7月15日〜8月7日  内容 中間のまとめに対する意見募集の実施     【意見提出】  計14 内訳:個人 8、団体 6     【意見の延件数】計37 内訳:個人18、団体19(地域福祉を考えるつどい参加者の意見を含む) 開催日 令和5年7月31日  内容 地域福祉審議会主催「地域福祉を考えるつどい」開催     ・日時  7月31日(月)午後6時30分〜8時40分     ・会場  中目黒GTプラザホール     ・参加者 53人     ・周知  区報7/15号、区ホームページ、公営掲示板等 開催日 令和5年9月6日 令和5年度第3回地域福祉審議会  内容 ・中間のまとめに対する意見募集の実施結果及び「地域福祉を考えるつどい」開催結果について     ・「目黒区保健医療福祉計画、介護保険事業計画及び障害者計画改定の基本的な方向について(答申)(案)」について 【用語解説(50音順)】 あ行 ICT(アイ・シー・ティー) ICTは、Information and a Communication Technologyの略で、情報通信技術と訳される。情報処理や通信に関連する技術、産業、設備、サービスなどの総称。パソコンやインターネットを使った情報処理や通信に関する言葉としてはITもあるが、ICTは、情報や知識の共有・伝達といったコミュニケーションの重要性を強調した概念。 アウトリーチ 生活上の課題を抱えているが相談機関等へ出向くことができない個人や世帯に対して、訪問支援、当事者が行きやすい場所での相談、地域におけるニーズ発見の場や関係づくりなどにより、支援につながるよう積極的に働きかけること。 アクセシビリティ 障害の有無や年齢などの条件に関係なく、だれもが様々な建物・施設やサービス、情報などを支障なく利用できること。 アセスメント 人やものごとを客観的な指標に基づいて評価すること。福祉におけるアセスメントは、利用者の身体状況や生活環境などの情報を集めて総合的に分析し、利用者が抱えている課題を明確にすること。 医療的ケア 家族や看護師が日常的に行っている経管栄養注入やたんの吸引などの医療行為。 インクルーシブ教育 障害の有無・程度に応じて学びの場を分けるのではなく、同じ学びの場においてともに学ぶことを追求するとともに、個別の教育的支援を必要とする幼児、児童、生徒に最も的確な指導を行うことを目指す教育。 SDGs(エス・ディー・ジーズ) 2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のこと。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っている。 LGBTQ(エル・ジー・ビー・ティー・キュー) Lesbian(レズビアン;女性の同性愛者)、Gay(ゲイ;男性の同性愛者)、Bisexual(バイセクシャル;両性愛者)、Transgender(トランス ジェンダー;心の性と身体の性が一致せず、身体の性に違和感を持つ人)、Questioning(クエスチョニング;自分自身のセクシャリティを決めない、決められない人)の頭文字をとった言葉で、性的少数者を表す言葉。 か行 基幹相談支援センター 地域における相談支援の中核的な役割を担う機関で、総合的あるいは専門的な相談、情報提供、助言等を行う。あわせて、地域の相談支援事業所間の連絡調整や、関係機関の連携の支援を行う。 共生社会 障害の有無にかかわらず、誰もが分け隔てられることがなく、基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念に基づき、相互に人格と個性を尊重し合う社会。 グループホーム 認知症高齢者や障害者が、食事提供その他の日常生活の支援や機能訓練等のサービスを受けながら、地域で少人数の共同生活を行う住宅。 ゲートキーパー 地域や職場で発せられる自殺のサインにいち早く気づき、適切な対処を行い、専門相談機関へつなぐ役割を担う人のこと。自殺対策に関する知識を持つ人のこと。「命の門番」といわれる。 健康寿命 健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間。平均寿命と健康寿命との差は、日常生活に制限のある「健康ではない期間」を意味する。 権利擁護支援 認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が十分でない人に代わって、援助者が代理として、財産管理や契約行為などの権利行使や必要なサービスが利用できるよう支援し、本人の権利を擁護すること。 合理的配慮 障害のある人から何らかの配慮を求める意思の表明があった場合には、負担になり過ぎない範囲で、社会的障壁(社会における事物、制度、慣行、観念等)を取り除くために必要な配慮を行うことをいう。どのような配慮が合理的配慮に当たるかは個別のケースで異なる。 子ども家庭支援センター 子どもや子育て家庭の身近な相談窓口として、さまざまな相談に応じるほか、子育て家庭への支援事業や個別援助等を行う。 コミュニティ・ソーシャルワーカー 地域を基盤として活動し、地域の中で支援につながらず困っている人を発見し支援するとともに、制度の狭間にいる人に寄り添い、地域の人とともに支援していくことを通して、個人の問題を地域共通の課題ととらえ、住民とともに新たな支援の仕組みをつくり出していく地域福祉の専門職。「地域福祉コーディネーター」ともいう。 さ行 災害時要配慮者 災害時に特に配慮が必要な高齢者や障害者などをいう。さらに、避難生活に特別な支援が必要な妊産婦、乳幼児、外国人なども要配慮者として考えられる。 児童発達支援センター 地域の障害のある児童を通所させて、日常生活における基本的動作の指導、自活に必要な知識や技能の付与または集団生活への適応のための訓練を行う施設。福祉サービスを行う「福祉型」と、福祉サービスに併せて治療を行う「医療型」がある。 社会的包摂(ソーシャルインクルージョン) 貧困やホームレス状態に陥った人々、障害や困難を有する人々、制度の狭間にあって社会サービスの行き届かない人々を排除し孤立させるのではなく、地域社会への参加と参画を支援し、社会の構成員として包み込むこと。 重症心身障害児 重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態にある子ども。 重層的支援体制整備事業 令和2年6月、社会福祉法改正に伴い創設された国の事業。区市町村において既存の相談支援等の取組を生かしつつ、地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的支援体制を構築するため、@相談支援、A参加支援、B地域づくりに向けた支援を実施するもの。 スーパーバイズ これから取り組もうとする支援、または今取り組んでいる支援について、学識経験者や専門家等にアドバイス・指導を受けること。 生活困窮者 生活困窮者自立支援法では、「就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」と定義している。 生活支援コーディネーター 「地域支え合い推進員」とも呼ばれ、地域の支え合い活動をはじめとした高齢者の生活支援サービスの提供体制整備に向けたコーディネート機能を果たす役割を担う職員。 生活支援体制整備事業の協議体 高齢者の生活支援・介護予防サービスの多様な提供主体等が参画する情報の共有・連携強化の場。 生活習慣病 食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群。高血圧症、糖尿病(インスリン非依存性)、脂質異常(家族性を除く)をはじめ、悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患などを総称していう。 成年後見制度 認知症、知的障害や精神障害などにより判断能力が不十分な人について、自己決定を尊重しながら本人の権利や財産を保護するための制度。 た行 地域共生社会 制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、「人と人」「人と資源」が世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会。 地域生活支援拠点 障害者の高齢化・重度化や「親なき後」を見据え、相談、一人暮らしやグループホームの体験、緊急時の受入れや対応、専門の人材の確保や養成、地域の体制づくり等の機能を備えた拠点となる施設。 地域包括ケアシステム 要介護状態になっても、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、住まい、医療、介護、予防、生活支援が一体的に提供される地域の包括的な支援体制のこと。 地域包括支援センター すべての区民を対象とした保健福祉の総合相談を実施する「支援を必要とするすべての人を支える地域包括ケアシステムの地域拠点」と位置づけている機関。保健師・看護師、社会福祉士及び主任介護支援専門員などの専門職が配置され、介護保険法で定められた業務(総合相談窓口、権利擁護、包括的・継続的マネジメント)のほか、保健福祉の総合相談、保健福祉サービスや介護保険認定申請の受付業務を実施している。 地域密着型サービス 認知症高齢者や中重度の要介護高齢者等が、できる限り住み慣れた地域での生活が継続できるように創設されたサービス体系で、区市町村が事業者の指定や監督を行い、サービスの利用は、原則としてその区市町村の被保険者に限定される。対象サービスは、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、地域密着型通所介護(利用定員18人以下の通所介護)などがある。 特別支援教育 障害のある幼児・児童・生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善または克服するため、適切な指導や必要な支援を行うもの。 な行 認知症サポーター 「認知症を正しく理解し、認知症の人や家族を支える支援者」として、全国で養成が進められているもの。1時間半程度の養成講座を受けてサポーターとなる。自分のできる範囲で温かく見守ることが基本的な役割とされている。 は行 8050(はちまるごーまる)問題 ひきこもりや離職等によって、例えば80代の親と50代の子など、高齢者と中年の世帯が生活上の困難を抱え、社会から孤立してしまうこと。 発達障害 自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において現れるもののうち、言語の障害、協調運動の障害、心理的発達の障害、行動及び情緒の障害とされる。 バリアフリー バリアとは「障壁」のことで、福祉のまちづくりを進めるために様々な障壁をなくしていくことをいう。建築物や交通機関等のハード面のバリアとともに、生活にかかわる情報面や制度面のバリア、差別や偏見といった心のバリアを取り除いていくことも、バリアフリーの重要な側面である。 ピアサポート 悩みや障害などの問題を抱えた人自身やその家族が悩みを共有することや、情報交換のできる交流のこと。障害のある人の場合だけでなく、障害のある児童の親、がん患者、高齢者など様々な分野に広がっている。 ひきこもり 厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」では、「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念」と定義されている。 PDCA(ピー・ディー・シー・エー)サイクル 行動プロセスの枠組みのひとつで、Plan(立案・計画)、Do(実施)、Check(検証・評価)、Action(改善)の頭文字を取ったもので、行政政策や企業の事業活動にあたって計画から見直しまでを一貫して行い、さらにそれを次の計画・事業に活かそうという考え方。 避難行動要支援者 災害等が発生、または、発生する恐れがある場合に、自力で避難することが困難なため、円滑・迅速な避難の確保などの支援を要する人のこと。 フレイル 「筋力」、「認知機能」、「社会とのつながり」が低下し、「加齢により心身が衰えた状態」のことで、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味する。フレイルは、早く気づき対策を行えば元の健常な状態に戻る可能性がある。 放課後等デイサービス 学校通学中の障害のある児童に対し、放課後や夏休み等の長期休暇中において生活能力向上のための訓練等を継続的に提供することにより、学校教育と相まって障害のある児童の自立を促進するとともに、放課後等の居場所づくりを行うもの。 ま行 見守りネットワーク 見守る人・見守られる人を特定せず、地域の住民や事業者が日常の生活や業務を通し、地域の異変に気が付いたときに、地域包括支援センターに連絡し、訪問や区関係所管課につなぐなど必要なサービスが行えるように地域で見守る仕組み。愛称は「見守りめぐねっと」。 民生委員・児童委員 地域で生活上の問題、家族問題、高齢者福祉・児童福祉など、あらゆる分野の相談に応じ助言・調査などを行う。保護や援助が必要な人がいる場合は、関係行政機関に連絡するなど区民に最も身近な存在として活動している。 や行 ヤングケアラー 本来大人が担うと想定されている家族のケア(家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなど)を日常的に行っている18歳未満の子ども。 要保護児童対策地域協議会 児童福祉法に基づき、要保護児童、要支援児童及び特定妊婦(出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦)を早期に発見し、適切な支援及び児童に対する虐待の予防的取組の推進を図るため、地域の関係者間で情報の交換と支援の協議を行う機関。 ら行 ライフステージ 乳児期・幼児期・児童期・青年期・壮年期・老年期など人間が誕生してから亡くなるまでの生活史上における年代別の各段階。 レスパイトケア 介護をしている家族などが、要介護状態の人や障害のある人への福祉サービスの利用中、一時的に介護から解放されることで休息をとれるようにすること。