目黒区における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領   第1 目的  この要領(以下「対応要領」という。)は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、区が事務又は事業を行うに当たり、目黒区職員(会計年度任用職員及び特別職非常勤職員を含む。)及び区立学校の都費負担教職員(会計年度任用職員及び臨時的任用教員を含む。)(以下「職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。 第2 定義  対応要領において、障害とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいい、障害者とは、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 第3 不当な差別的取扱いの禁止  職員は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。    第4 合理的配慮の提供  職員は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供をしなければならない。 第5 留意事項  職員は、第3及び第4の適用に当たっては、別紙に定める留意事項に留意するものとする。 第6 管理職員の責務  職員のうち、課長職以上の地位にある者、校長(園長を含む。)及び副校長(副園長を含む。)(以下「管理職員」という。)は、第3及び第4に掲げる事項に関し、障害を理由とする差別の解消を推進するため、次に掲げる事項を実施しなければならない。 (1) 日常の執務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、その監督する職員の注意を喚起し、障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。 (2) 障害者等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。 (3) 合理的配慮の必要性が確認された場合、監督する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。 2 管理職員は、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。 第7 相談体制  職員による障害を理由とする差別に関する障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、次の相談窓口を置く。 (1)当該事案に係る事務を所管する課及び学校 (2)総務部人事課 (3)健康福祉部障害施策推進課 (4)教育委員会事務局教育指導課 2 相談等を受ける場合は、性別、年齢、状態等に配慮するとともに、対面のほか、手紙、電話、FAX、電子メールに加え、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。 3 相談窓口に寄せられた相談等は、健康福祉部障害施策推進課に集約し、相談者のプライバシーに配慮しつつ関係者間で情報共有を図り、以後の相談等において活用することとする。 4 相談窓口は、必要に応じ、充実を図るよう努めるものとする。 5 この要領に定めるもののほか、職員による障害を理由とする差別に関する障害者及びその家族その他の関係者から寄せられた相談等のうち、意見、提案、要望及び苦情については、区民の声取扱要綱に基づき対応するものとする。 第8 研修・啓発  障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、必要な研修・啓発を行うものとする。 2 新たに職員となった者に対しては障害を理由とする差別の解消に関する基本的な事項について理解させるため、新たに管理職員となった職員に対しては障害を理由とする差別の解消等に関し求められる役割について理解させるために、それぞれ研修を実施する。 3 2による研修の内容、回数等は総務部人事課長、健康福祉部障害施策推進課長及び教育委員会事務局教育指導課長が協議の上定める。 4 職員に対し、障害の特性を理解させるとともに、障害者に適切に対応するために必要なマニュアルの活用等により、意識の啓発を図る。 第9 適用日等 1 この要領は平成28年4月8日から適用する。 2 この要領の改正は、総務部人事課長、健康福祉部障害施策推進課長及び教育委員会事務局教育指導課長が協議の上行う。 付則 この要領は、令和2年4月1日から施行する。 付則  この要領は、令和3年4月1日から施行する。 別紙  目黒区における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領に係る留意事項  第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方   法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。  ただし、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。  このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 第2 正当な理由の判断の視点  正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。区においては、正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、障害者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び区の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。  職員は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが望ましい。 第3 不当な差別的取扱いの具体例  不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は以下のとおりである。なお、第2で示したとおり、不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。また、以下に記載されている具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、さらに、それらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。  (不当な差別的取扱いに当たり得る具体例)  ○障害を理由に窓口対応を拒否する。  ○障害を理由に対応の順序を後回しにする。  ○障害を理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。  ○障害を理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。 ○事務・事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害を理由に、来庁の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒んだりする。  〇障害者本人を無視して、支援者や付添者のみに話しをする。 第4 合理的配慮の基本的な考え方 1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。   法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。   合理的配慮は、区の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること並びに事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。 2 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「第5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。   なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。 3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。   また、障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者、コミュニケーションを支援する者等が本人を補佐して行う意思の表明も含む。   なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、介助者等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。 4 合理的配慮は、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。 5 区がその事務又は事業の一環として実施する業務を事業者に委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることが望ましい。 第5 過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。 職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。  ○事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容、機能を損なうか否か)  ○実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)  ○費用・負担の程度 第6 合理的配慮の具体例  第4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、具体例としては、次のようなものがある。  なお、記載した具体例については、第5で示した過重な負担が存在しないことを前提としていること、また、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。  (合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例) ○段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを渡すなどする。 ○配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。 ○目的の場所までの案内の際に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障害者の希望を聞いたりする。 ○不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。 〇エレベーターに乗るのに時間のかかる障害者のために「開延長ボタン」を押したり、ボタンを押すことが困難な障害者のために行き先の階を押す。 ○災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害者に対し、電光掲示板、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。 ○障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。 ○疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申し出があった際、別室の確保が困難であったことから、当該障害者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子等を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。 (合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の具体例) ○初めに利用者本人にとって理解しやすいコミュニケーション方法を把握した上で 、筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字などのコミュニケーション手段を用いる。 ○会議の進行に当たっては、職員等が委員の障害特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行う。 ○障害者から申し出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。 ○書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、分かりやすい記述で伝達したりする。本人の依頼がある場合には、代読や代筆といった配慮を行う。  ○意思疎通が不得意な障害者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。 ○比喩表現等が苦手な障害者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明する。  ○駐車場などで通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。 ○視覚障害のある委員に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。 ○会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号等が異なりうることに留意して使用する。 ○会議の際は、発言の前に名前を名乗り、また、他の者と同時に発言しないようにし、視覚障害者の理解や手話通訳者の通訳を妨げないよう留意する。 (ルール・慣行の柔軟な変更の具体例)  ○スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。 ○区の事業等への申込みにあたっては、電話のみではなく、FAXやメール等、さまざまな障害特性に配慮した申し込み方法を可能とする。また、先着順により特定の障害者が利用できないことが想定される場合は抽選による方法とする。  ○車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。 ○区の敷地内の駐車場等において、障害者の来庁が多数見込まれる場合、通常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更する。 ○立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで別室や席を用意する。 ○非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認める。 ○他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合、当該障害者に説明の上、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備する 。  ○順番を待つことが苦手な障害者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続き順を入れ替える。 ○疲労を感じやすい障害者が参加することがあらかじめ想定される会議や講演会等を開催する場合は、開催時間に応じて適切な休憩時間を設ける。