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だれもが尊厳を持って高齢期を生きていくために (めぐろ区報 平成20年7月25日号に掲載した記事です)
平成20年7月
1日当たり約50件。これは高齢者虐待防止・養護者支援法が施行された平成18年度に、全国の区市町村が受けた高齢者虐待に関する通報や相談の件数です。
法律では、高齢者の虐待防止とともに、養護者による虐待防止のために養護者の負担軽減を図ることなど、養護者への支援が定められています。
高齢者への虐待には、(1)身体的虐待(2)介護・世話の放棄・放任(3)心理的虐待(4)性的虐待(5)経済的虐待の5つが挙げられますが、このような行為を防ぐためには何が必要なのでしょうか。そのヒントを示してくれる次のような例があります。
認知症の高齢者を介護している人たちの集まり、いわゆる「家族会」に参加するようになった新規会員の中に、親への虐待を疑われるAさんがいました。それまで、一人で親の介護に専念していたAさんでしたが、家族会に参加し、同じような立場の人たちとの交流を続けるうちに、虐待を疑われるような行為が次第に見られなくなってきました。
このような変化は、なぜ起きてきたのでしょうか。家族会の人たちは、Aさんの行為を非難したり、改めさせようとしたりしたわけではありません。自分たちの経験を踏まえながら、Aさんに心からの共感を示し、自らの介護の実体験を伝えただけでした。
高齢者に対する虐待は、特定の人や家族において発生するものではありません。だれにでも、どこの家庭にでも起こりうる身近な問題です。虐待は、一人で悩んだり、問題を抱え込んだりせずに、相談機関に相談したり、この例にあるように、周囲から孤立することなく、人の輪に入ったりすることにより、防げることがあります。それは、自分自身のつらさを他の人に共感してもらうとともに、認知症についての正しい知識や、他の介護者の経験に基づいた対処方法などを知ることができるからです。
今、超高齢社会の入り口に立った私たちには、日常的な人と人との交流や見守りなど、地域でのネットワークづくりが求められています。だれもが尊厳を持って生きていくことができる高齢期を迎えられるよう、自分と周囲の人たちとのつながりに、改めて目を向けていきましょう。
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