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奥田知志さん講演会「助けてといえる社会づくり」から「孤独・孤立」を考える
ゴールデンウィークも終わり、早くも「梅雨の走り」のような天気も見受けられ、梅雨や初夏が意識される季節になってきました。
さて、5月は国が定める「孤独・孤立対策強化月間」です。そんな月間、あったっけ?と思うかたも多いかもしれません。国は、深刻化する孤独・孤立の課題を解決するため、令和3年2月、「孤立・孤独対策担当大臣」を置きました。孤立・孤独を担当する大臣がいるのは、世界では、日本以外にイギリスだけだそうです。そして、令和5年5月には、孤独・孤立対策推進法が制定され、今年4月に施行されました。
今回のレポートは、私がある講演会に参加した際、「孤独・孤立」って何だろう、私たちにできることは何だろう、と考えさせられたことがきっかけで書き始めることになりました。
その講演会とは、3月20日に行われた目黒区主催の地域福祉講演会「助けてといえる社会づくり 社会とのつながりが弱い人への支援」です。区では、社会的に孤立し、助けを求めることが困難な人が、自身の課題に気付き、SOSを伝えることができるよう取り組みを進めており、今回の講演会は、区民の皆さんや関係者の方々と一緒に考えるきっかけとなるよう企画されたものです。
講師は、北九州市にあるNPO法人抱樸(ほうぼく)の理事長、奥田知志(おくだともし)さん。ホームレス支援などの分野で、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。私は数年前にその活動を知り、いつか直接お話を聞いてみたいと思っていました。
講演会は、100名の定員を大きく上回る約150人もの方々が参加されました。奥田さんの実体験に基づくお話の中には、現実にあったこととは信じられないほど悲しく重いお話もありましたが、親しみやすいお人柄が、会場の雰囲気を柔らかくしていました。「経済的困窮(ハウスレス)と社会的孤立(ホームレス)は違う」と認識し、「ひとりにしないという支援」を三十数年も継続して行っていること、その支援を通じて奥田さんが考えていること、この先目指していることなどを教えていただきました。
行政のサービス、支援は、必要な人にちゃんと十分に届いてほしい。その上で、情報が届いたとしても、そこから人に頼ることができない人、SOSを出せない人、アクションが取れない人に対して、区は、どういうアプローチをしていけば良いのだろう?これまでのジョブローテーションの中で福祉系の部署も経験してきて、そして今は情報発信を担う広報課の一員として、とても考えさせられる講演内容でした。
周囲から明らかに困っているように見えているのに、「助けて」と言えない人に足りないものとはいったい何か。奥田さんは、それは「その気」だとおっしゃっていました。そして、「その気」になる動機とは何か。それは「自分をあきらめてくれない人がいる」ということだと。私は、そのとき、私自身や、家族、周りの人を思い浮かべ、全くそのとおりだなと感じました。自分のことを何があっても気にしてくれる人、つながりを保ち続けてくれる人の存在は、誰にとっても最も心強いものではないでしょうか。
孤独・孤立対策推進法では、「孤独」と「孤立」について明確な定義はされていません。一律に定義すると、支援の対象からこぼれ落ちてしまう人が出てくるおそれがあるためです。孤独・孤立の問題は、多様で、複雑で、簡単に解決できるものではありません。当事者や家族などがSOSを出しやすく、周りの人たちがいち早く当事者に気付くことができるような環境づくりこそ、尽力していかなければならないことだと思いました。
孤独・孤立の対策などについて、もっと知りたいと思ったかたは、ぜひ下記のウェブサイトも訪れてみてください。
広報課:めがねめがね
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