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地域に開かれたインクルーシブな住まい「はちくりはうす」
「施設」ではなく、「住まい」なんです
これは、私が「はちくりはうす」(目黒区五本木)のオーナー竹村さんに初めてご連絡した際、一番印象に残った竹村さんの言葉です。2024グッドデザイン金賞を受賞し、さまざまな業界から注目度が高い、こちらの建物。見学会があるとの情報を耳にして取材に行ってきました。
オーナーの竹村さん
はちくりはうすの入り口に掲げられたロゴデザイン
“ご縁を結ぶ”小さな建物
「はちくりはうす」があるのは、最寄りの学芸大学駅から徒歩10分以上かかる住宅街。1階には、知的障害があるかたへのヘルパー派遣などを行う「NPO法人はちくりうす」の事務所と短期入所施設(ショートステイ)が入っています。
隣の「犬みみカフェ」では、ご近所のかたがよく利用している様子。取材時はお昼時ということもあり、お客さんがたくさん来られていました。
「犬みみカフェ」の看板
この日の店主 福原さん
シェア店舗なので、曜日によってお店・店主が異なります
私もランチメニューをいただきながら他のお客さんと話していると、この日は観光客のかたがいらっしゃいました。常連のかたに海外からのお客さんがよく来るのか伺うと、
「初めてですよ。韓国からのお客さんで、渋谷にホテルをとっているみたいです。どなたかに、ここ(犬みみカフェ)のことを聞いてタクシーで来られて。たまたま、韓国語が話せるお客さんが2人もいて通訳してくれたんですよ。ちょっとした国際交流が生まれました。竹村さんのパワーなんですかね。こういう偶然というか、奇跡みたいなことが起こるんですよ、ここは」
取材し始めてからすぐにご縁が生まれていることを聞き、直接その場に居合わせたかった…と思いました。(残念!)
取材日のメニュー
常連客の高校生。若者が通いやすいのもすてきなポイント
ガラス張りのお店は開放的
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犬みみカフェ 営業時間やお店の詳細はInstagramでご確認ください。 |
血のつながりはなくても、家族になれる
脳性まひのあるお子さんとの生活で竹村さんは、「施設」ではなく人とのつながりが持てる「暮らし」を30年前から考えていたそうです。
「はちくりはうす」は、竹村さんの自宅、賃貸住宅(シェアハウス)、ショートステイ(自立に向けた宿泊訓練)施設、シェア店舗という幾つもの顔があります。
現在、2階には竹村さんのお子さんを含め、知的障害や脳性まひのあるかたが入居。曜日ごとに通うヘルパーさんと一緒に自立して暮らしています。3階には、竹村さん含め2階に入居されているかたの親御さんが入居されています。
2階の居住スペース「ふくのす」
大きな窓から中の様子を見ることができます
竹村さんのこだわりで介助する際に車いすから降ろしやすい高さの段差に
「親子でも、夫婦でも2人だと息詰まる時ってありますよね。一緒に暮らす人が緩衝材になってくれるんです。視野が狭くなっちゃってる時に、笑えることをやっている人を見たら、ばからしくて逆に笑えてくることってあるじゃないですか」
3階居住スペースの共有本棚
誰が何を借りたかメモで申告
ソファーに座りながら読むことができる
「今は、3階に親たちが住んでいるけれど、だんだん住む人も代替わりして行って、そのうちヘルパー資格を持った学生さんに入ってもらったりするのも楽しいと思っています。」
内装には可能な限り木材を使用し、建物の節々に竹村さんの「住まい」へのこだわりを感じました。
4階の関係者共有スペース「はちくりBASE」
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キッチンでほかの居住者と食事をすることも
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開放的なベランダでは家庭菜園も
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網戸にかわいらしいトンボが
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網戸に気付かずぶつかってしまうかたが多かったため、目印に付けたそう
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エレベーターのある建物ですが、階段が特徴的
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らせん階段のような構造は、下から見ると神秘的
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ショートステイのバスルーム。すてきな壁紙を見た利用者に「はちくりホテル」と言われるほど評判がいい
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子どもが慣れ親しんだ目黒が良かった
今まで住んでいた家を売却し、「はちくりはうす」に転居された竹村さん。見学会の参加者から、土地の決め手を聞かれた際には、「ブルスタさん(設計を行った株式会社ブルースタジオ)から都内でも目黒区ではなく他の場所にすれば、同じ資金でもっと広い土地を購入して、部屋数を増やして建設することもできますよと言われました。でも、子どもが目黒区内の通所先を利用していて、お友達も顔なじみのヘルパーさんも、みんな目黒区で過ごしてきたからここの仲間たちとコミュニティーを作らなければ私にとっても意味がないし、子どもにとってもなじんだ場所とのつながりをなくすことが幸せだと思えなかったです。どこでやるかがすごく大事です」とおっしゃっていました。
見学会の様子
形にとらわれない、決めないからこそ面白い
竹村さんに、「はちくりはうす」の将来について伺うと、「シェアハウスだけで独立してやっていけるような仕組みを今考えています。変わっていくことが自然な形だから、変わっていく中で生きていけるように制度の勉強会に参加して、模索しているところです」とおっしゃっていました。
竹村さんの思いを聞いていた株式会社ブルースタジオは、介護が必要になるなど入居者の状態によって、住まいを変えること(リノベーション)ができる構造にしているそうです。
毎週木曜日のカフェでは、不登校など心に不安を抱える子どもたちが通いやすいように、さまざまな取り組みが行われています。出店者は「犬みみカフェ」店長の知り合いだったり、2階のシェアハウスに来ているヘルパーさんだったり。さまざまなつながりで、多岐にわたる世代の方々がお店で出会い人と人がつながる、こうやってご縁を結んでいるんだなと思います。
「はちくりはうす」の今について竹村さんは、「思いがけないこともあるけれど、ある程度の範囲内ならOKにしている所もあるので、その中で新しくて楽しいことが増えるからわくわくしています。思い描いていたことは実現できているので楽しいですね」と笑ってお話してくれました。
カフェでハンドメイド作品を販売
お客さんなどの発案で販売が実現
1階スペースのオストメイト対応公衆トイレ
「必要としているかたにこの場所を知ってほしい」と竹村さん
この記事を読んでくださった読者のかたとも何かのご縁があったのだなと思うと、とてもうれしく思います。
こちらでも竹村さんの思いが語られています。ぜひご覧ください。
広報課:フー・ジモ
お問い合わせ
電話:03-5722-9621
ファクス:03-5722-8674
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