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元気なお店、活気ある事業所をご紹介します「株式会社川邑研究所」
真空で「はやぶさ」の翼を駆動させる凄腕潤滑剤を開発
JR山手線・目黒駅から徒歩5分の川邑研究所は独自の機能性塗料「DEFRIC
」(デフリック)の開発製造販売を行っている会社で、実は宇宙開発にも密接に関係している革新的な企業です。これまでにH-II(H2)ロケットや惑星探査機「はやぶさ」などの機体を製造する際に「DEFRIC
」が採用され、現在もJAXAやNASAをはじめとする宇宙開発機構から宇宙用のコーティング剤の開発依頼を受けています。
「私たちが作っているのは、いわゆる潤滑剤です。例えば、「はやぶさ」のような探査機では、宇宙空間にさらされる翼などの駆動部があります。そうした部分をそのまま真空状態で動かそうとすると、金属同士が溶接したようにくっついてしまうことがあります。そのため潤滑するものが必須となるわけです。ただ、真空では油は蒸発してしまうので、固体の状態の潤滑剤を使用します」と話すのは同社の三代目代表・川邑正広さんです。

代表取締役 川邑 正広氏
同社の創業は明治44年。川邑さんの祖父に当たる川邑春松氏が、目黒に川邑研究所を設立したのが始まり。理化学及び貴金属類の選鉱・製錬の研究を主業務とし、なかでも金の選鉱・製錬では特殊技術を開発しています。戦時中は、当時の大蔵省から造幣局目黒研究室の設置を依頼され、金・銀の増産についての研究に邁進。戦後、固体潤滑剤の研究を行い、1959年に「DEFRIC
」の開発販売をスタートし、現在に至っています。
「第一次世界大戦の当時、靴磨き用にドイツから靴墨の染料を輸入していましたが、その靴墨づくりに祖父がチャレンジしたのがきっかけと聞いています。それが軌道に乗って、昭和の初め頃には生業となり、やがて金の選鉱・製錬に繋がっていくわけです。ただ、戦後は会社も丸焼けになり食べるものにも困り、シベリア抑留から戻ってきた父が大豆を粉々にして、インスタント豆腐のようなものを作ってしのいだこともありました。やがて日本が復興していくなかで、自動車部品の下請けをやっている知人から相談されたのがきっかけで、潤滑剤を開発したという流れです。これまでに染料や大豆など変遷はありますが、すべてに共通しているのは、「細かく粉砕する」という技術。その点ですべての経験が今に繋がっていると考えています」
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