MEGURO+(めぐろプラス) > 「本が生まれるいちばん側で」、本を愛してやまない人たちの話を聞いてきました

更新日:2025年12月11日

ページID:19299

ここから本文です。

「本が生まれるいちばん側で」、本を愛してやまない人たちの話を聞いてきました

COUNTERBOOKS0

東急東横線学芸大学駅の高架下に、昨年ひとつの書店が誕生しました。
その名も「COUNTER BOOKS」。
書店とカフェ・バーが一体となっており、読書も飲食も楽しめるこのお店は、学大エリアを中心として場づくりを手がけている上田太一さん(合同会社ウェルカムトゥドゥ)が代表を務めていらっしゃいます。

私は普段、広報紙「めぐろ区報」の制作を担当していますが、この仕事に就く前から小説や雑誌、新聞、観光地で配っているチラシやパンフレット、果てには調味料の裏側の成分表まで、節操のない「読み物」好きです。
もちろん、本屋さんへ行くことも、本を読むことも大好き。昨今のムーブメントのひとつである「ZINE」(個人や少人数で発行する、自主的な出版物のこと)も、定期的にチェックしています。
そんなZINEの製本を多く手がけているのが、長野県松本市にある、藤原印刷です。藤原印刷さんが発刊された、「本が生まれるいちばん側で」の刊行記念イベントとして「藤原印刷「本が生まれるいちばん側で」刊行記念トーク「つくる」が創る、出版新時代ー メジャーとインディーが交わるとき」がCOUNETR BOOKSで開かれました。

COUNTERBOOKS2

まちの本屋さん。でも本屋以外の顔もあります

COUNTER BOOKSは、名前のとおり書店ですが、定期的にこうしたイベントを開催しています。
今回も、いつもは本が置いてあるスペースに椅子が置かれ、たくさんの本に囲まれながら、登壇者4人の話がはじまりました。
登壇者は、藤原出版の藤原隆充さん・スターツ出版「メトロミニッツ」編集長の古川誠さん・大垣書店取締役の大垣守可さん・そして聞き手としてCOUNTER BOOKS代表の上田さんの4人。
印刷会社、出版社、大手書店、個人書店という四者四様の立場から、本をつくる人たち・本が好きな人たちが話す、「出版のこれから」……開始前からワクワクして、胸が高鳴ります。

「本をつくる人」と「本を売る人」が考える、本の行く末

藤原印刷では、個人の「自分で本をつくりたい」という想いに応え、数多くのZINEの印刷を担ってきました。藤原印刷には、印刷立ち会いに訪れる人が増えており(印刷所は長野県松本市にありますが、遥々遠方から立ち合いに来られるかたも多いそう)、「自分の思いを紙に定着させる瞬間」を確かめたいという熱が高まっているとのこと。
かつての自費出版とは違い、今はもっとカジュアルに、「好き」を前面に出した本づくりが主流になっているという話に、会場の皆さんもうなずいていました。
COUNTER BOOKSの上田さんは「本屋は何もしなくていい場所であることが大事」と話します。COUNTER BOOKSの書籍の取り扱いは2,200冊ほどとのことで、その“ちょうどいい”ラインナップが、本を選ぶ楽しみをくれるとのこと。
土地の価格の高騰などで個人書店が出店しづらい現実もありながら、書店は、本が好きな人たちの想いを集める場であるという話に、じんときてしまいました。

「なぜ今、本をつくりたい人が増えているのか?」という問いについて、藤原さんは「SNSなどの拡散ではなく、特定少数に届けたいという欲求」と答えます。デジタルよりアナログの距離感を求める人が増えているのだ、と。
「好きが全面に出ている本じゃないと売れない」という言葉に、登壇者たちの本音がにじみます。本も書店も、どれだけ“好き”を表現できるかが鍵。ZINEがコピー本から美しいプロダクトへ進化した背景もそうしたところにあるのではないでしょうか。

最後に、「本の作り手が増えれば受け手も増える」という言葉と、「もっと自由に本が生まれればいい」という締めくくりでトークは終了。本が“生まれる側”に立つ楽しさを体感した夜を、学芸大学で満喫させていただきました。
私が大好きな、本、ないしは出版の未来は、さらに自由に、さらにおもしろくなると確信できるようなイベントでした。

COUNTERBOOKS3
 

こちらの記事も読まれています