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更新日:2023年12月15日

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めぐろ歴史資料館の舞台裏

特集

めぐろ歴史資料館の舞台裏 目黒の歴史が並ぶまで

目黒の地理や自然、人々の暮らしなどの歴史の移り変わりを展示するめぐろ歴史資料館。展示する資料は、歴史資料館のバックヤードで、学芸員・研究員の手により数々の手順と準備を経て初めて展示品となります。
今号では、資料や遺構・遺物がどのような道のりを経て展示品となるのか、普段は知ることのできない歴史資料館の舞台裏をのぞいてみました。

お問い合わせ:めぐろ歴史資料館(電話:03-3715-3571、ファクス:03-3715-1325)

めぐろ歴史資料館

目黒の歴史を分かりやすく展示し、教育や生涯学習、地域文化の発展を目的に、めぐろ学校サポートセンター1階に開設し、今年で15周年を迎えました。


めぐろ歴史資料館には、学芸員である館長と5人の研究員がいます。目黒の歴史に関する資料の収集・保管・調査研究のほか、目黒の歴史を知っていただけるよう、工夫を凝らした展示や講座などを行っています。

日時:9時30分から17時まで
場所:目黒区中目黒三丁目6番10号
休館日:月曜日(ただし祝日の場合は翌日休館)、12月29日から1月3日まで

胎内洞穴

山岳信仰が盛んだった江戸時代、誰もが富士登山を楽しめるよう、富士山を模して造られたのが富士塚です。富士登山では狭い洞窟などを通り抜けることで、新しく生まれ変わるという意味の「胎内くぐり」が行われており、富士塚にはその胎内を模した洞穴も造られました。同館で復元展示している胎内洞穴は、平成3年に、区内の新富士遺跡(中目黒二丁目)で発見されたものです。

23区内にある富士塚は、消滅したものも含めると70基ほど。このうち、地下に造られた胎内洞穴が見つかったのは新富士遺跡だけなんです!

武田館長
(考古分野担当)

(1)発掘・調査

発掘は手作業で丁寧に行われます。この遺跡発掘では、地下へと続く階段が発見され、胎内洞穴であることが判明。入り口階段から地下ホールまでの深さ4メートル、地下ホールから奥壁までの奥行き約6メートル、高さ約1.8メートル、最大幅約1メートルの横穴状で、奥壁には神仏などをまつる祠(ほこら)が造られていました。

地下へと続く階段が発掘された!

(2)型取り

胎内洞穴は、それまで23区内で発見例のない貴重なもの。しかし、現地での保存が難しく、復元するために合成樹脂を使って型を取ります。そうすることで凹凸の具合を忠実に再現することができます。

型取りは、遺構の大きさにもよりますが、大きなパーツが10以上になることもあります

(3)組み立て

現地で取った型で再現した洞穴のパーツを組み合わせて、復元します。裏には支柱を付けて頑丈な作りにし、接合の際はズレなどができないよう、人の手で丁寧につなぎ合わせます。

(4)展示

発見時どおりに復元した洞穴のほか、解説パネルや画像などの準備、照明の調整などを経て、展示します。

大日如来坐像2つのミステリー

大日如来坐像には、発掘当時から解明されていないミステリーがある!

ミステリー1
祠の床下に埋められ隠されていた?

洞穴の奥壁にある祠の床下に埋められていた大日如来坐像。掘った穴に寝かせるようにして入れた後、あたかも隠すように粘土で固めるようにして埋め、さらに、その上で火をたいていたことが分かりました。ここまでして大日如来坐像を隠した理由は謎に包まれたままです。

ミステリー2
どの祠に祀られていた?台座との関係は?

大日如来坐像本体は、奥壁の祠にぴったり収まります。しかし、像の台座が別の場所で発見され、台座と合わせると奥壁の祠にも、階段部分にある祠にも収まりません。本来、像と台座はセットであることを考えると、当時どの祠にどのように祀られていたのか、分からないままです。

考えれば考えるほど謎が深まる!まさにミステリーだ!

土器

大昔の住居跡やその付近からは、土器や石器が出土します。その多くはかけらになっていて、発掘後はパズルのように組み合わせて復元します。

(1)発掘・調査

重機で薄く丁寧に土を削りながら発掘し、ある程度進んだら手作業で掘ります。土器発掘後は、場所や深さなどを調査します。


土器の多くは粉々になって発見される

(2)組み立て

土器のかけらは水洗い後、一つ一つに発見された地点などの情報を書き込む「注記」をします。その後、かけらを合わせ接合していきますが、ジグソーパズルと違って形がバラバラなので根気のいる作業です。


注記は、面相筆を使って細密に手書き!

ぴったり組み合わさった時は「4500年ぶりに戻った!よかったね」と充実感・達成感があります

荒井指導員
(埋蔵文化財保護担当)

(3)展示

復元後は、大きさなどの実測や、図面に描き起こす等の記録作業を経て、展示します。展示は、文様や全体の形がよく見えるよう工夫します。土器の内側をよく見ると、かけらに書かれた注記があるのが分かります。

古文書

古文書(こもんじょ)は主に近世(江戸時代)以前の史料で、位の高い人物からの命令書や外交文書、証文のほか、庶民の手紙、物語、地図などがあります。昔の紙は劣化しやすいので、取り扱いは慎重に行います。

(1)ほこり取り・燻蒸

文書を破損しないよう、刷毛(はけ)でやさしくごみやほこりを取り除きます。その後、害虫駆除や防カビ殺菌のための燻蒸(くんじょう)を行います。

(2)補修・解読

状態を確認します。損傷が激しい時は、台紙を付けて補強する「裏打ち」が行われることもあります。その後、何が書かれているのか解読して記録します。くずし字なので、知識と経験が必要な作業です。


あ!こんなところに虫食いの跡が!

(3)展示

解読を終えたら、展示します。古文書が冊子の場合は、特徴的なページ、一目見て分かりやすいページを開いて展示します。

古文書の保管と展示に重要なのが湿度。劣化・カビなどを防ぐため、湿度は55パーセント前後に保っています!

篠原研究員
(歴史分野担当)

めぐろ歴史資料館冬の企画展 昔のくらしと道具展「伝える・のこす」

日時:12月16日(土曜日)から令和6年3月10日(日曜日)

例年、冬の企画展では、小学校3年生の授業に合わせて「昔のくらしと道具」が学べる展示を行います。
今年は、資料館にさまざまな形で残っている、昔のくらしを伝えてくれる道具や資料を紹介します。詳細は区ウェブサイトをご覧ください。

区ウェブサイトを見る

古文書
当時あった出来事の様子を書き残しています。

暗箱カメラと写真帳
レンズに映った昔の光景を、ありのまま残しています。

1940年代頃の暗箱カメラ

手回し計算機
数値をセットし、ハンドルをまわすことで、計算結果が表示されます。

1960年代頃の計算機

体験イベント

蓄音機を使って、当時の人が聞いていた音を聞いてみませんか。希望者は当日会場へお越しください。

日時:12月24日(日曜日)、令和6年1月21日(日曜日)、2月18日(日曜日)14時30分から15時
対象:小学生以上

石井研究員
(民俗分野担当)

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