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更新日:2020年4月15日

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児童虐待死亡事例に関する国及び東京都の検証結果と区の対応

平成30年3月2日に目黒区内で発生した児童虐待死亡事例について、平成30年10月に厚生労働省の社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会から、また平成30年11月に、東京都児童福祉審議会児童虐待死亡事例等検証部会からそれぞれ検証結果が公表されました。
これら国・東京都の検証結果を踏まえた区の対応について取りまとめ、平成31年2月14日に開催された区議会文教・子ども委員会に報告しましたので、質疑等を踏まえ、以下に掲載いたします。
区として対応策を強化し、虐待の早期発見・早期対応、未然防止に全力で取り組んでまいります。

事例の概要

平成28年8月、近隣住民からの泣き声通告を受けた以降、香川県の児童相談所及び香川県善通寺市が関わってきた事例。香川県の児童相談所は、同年12月及び平成29年3月に一時保護を行ったが、いずれも解除し、転居(転出)に伴い、平成30年1月4日付けで児童福祉司指導措置(注1)を解除した。
東京都においては、平成30年1月17日に目黒区の子ども家庭支援センターが善通寺市からの一報を受け、要保護児童対策地域協議会(注2)のケースとして受理し、関わりが始まった。
また、東京都の品川児童相談所は、同月29日に香川県の児童相談所からの一報を受け、翌30日に虐待として受理した。
しかし、転居後、品川児童相談所及び子ども家庭支援センターは、児童の安全確認が出来ないまま、同年3月2日、養父からの119番通報で当該児童が救急搬送され、その後、死亡が確認された。

  • (注1)児童福祉司指導措置:児童福祉法に基づく指導措置(行政処分)。複雑困難な家庭環境に起因する問題を有する子ども等、援助に専門的な知識、技術を要する事例に対し、子どもや保護者等の家庭を訪問し、あるいは、必要に応じて通所させる等の方法により、継続的に行う、児童相談所による指導のひとつ。
  • (注2)要保護児童対策地域協議会:児童福祉法に基づき、要保護児童等に関し、関係者間(児童相談所、子ども家庭支援センター、保健機関、学校、警察等)で情報の交換と支援の協議を行う機関。

国の検証結果(目黒区関係部分)

市区間や市区・児童相談所間での引継ぎ

事実及び問題点

香川県善通寺市(児童福祉主管課・母子保健主管課)から目黒区の子ども家庭支援センター及び碑文谷保健センターへの引継ぎに比べ、香川県の児童相談所から東京都の品川児童相談所への引継ぎが遅かった。子ども家庭支援センターと品川児童相談所で直ちに連携した対応ができなかった。
香川県の医療機関からは直接品川児童相談所へ情報提供がなされているが、こうした情報を緊急性が高い状況にあるとの判断には活かされなかった。

問題点に対する対応策

本事例のように、要保護児童対策地域協議会で登録されている事例については、市区間で引継ぎが行われる必要があるとともに、児童相談所が主に関わっている事例については、市区間の引継ぎのみならず、市区、児童相談所の間でも速やかに情報共有するなどの連携した対応が必要である。
また、市区間(児童福祉主管課、母子保健主管課)の引継ぎでは、事例の状況のみならず、事例に応じたそれぞれの機関の役割が明らかになるような引継ぎを行うことが重要である。

児童相談所と市区の役割

事実及び問題点

平成30年2月に、子ども家庭支援センターが家庭訪問により児童の安全確認を行おうとした際に、品川児童相談所が先ずは家庭訪問を行う予定であることを伝え、待つように要請している。
その後、品川児童相談所と子ども家庭支援センターの具体的な役割分担の見直しは行われなかった。

問題点に対する対応策

本事例のような児童相談所が主導して関わっている事例においては、児童相談所から要保護児童対策地域協議会等で情報共有・役割分担を依頼して、対応する必要がある。

東京都の検証結果(目黒区関係部分)

関係機関の関わり

問題点・課題

子ども家庭支援センターは、善通寺市の児童福祉担当部署から電話で一報を受けた当日に緊急受理会議を開き、本事例を虐待として受理した。しかし、受理時点で、母子の転入が確認できず、善通寺市からの情報提供書も届いていなかったため、品川児童相談所と情報共有を行わなかった。

改善策

子ども家庭支援センターは、転居ケースのうち重篤な虐待として受理した場合は、住民基本台帳の異動の有無にかかわらず、速やかに居住実態の把握に努め、早い段階で品川児童相談所と情報を共有し、対応策を検討することが必要である。

児童相談所の対応

問題点・課題

品川児童相談所は、子ども家庭支援センターから家庭訪問予定との連絡を受けた際、香川県の児童相談所に保護者への連絡を依頼中であり、連絡がつき次第、品川児童相談所がまずは家庭訪問を行うので、少し待つように伝えた。その際、子ども家庭支援センターが転居元から引き継いだ情報をもとに、どのような評価をもって家庭訪問を急ぐのか、確認しなかった。

改善策

児童相談所(品川児童相談所)は、転居ケースを虐待として受理した時点で、子ども家庭支援センターや保健機関(碑文谷保健センター)等に転居元から連絡が来ているかを確認し、引継ぎがなされている場合は、速やかに要保護児童対策地域協議会の個別ケース検討会議の開催を調整機関に依頼し、情報共有する機会を設けることが必要である。その際、それぞれの機関に引き継がれた情報の突合せを行うとともに、各機関の意見を受け止め、情報や評価に齟齬がある場合は、改めて合同アセスメントを実施することが必要である。

子ども家庭支援センターの対応

問題点・課題

子ども家庭支援センターは、受理当初、児童の安全確認を優先すべきという認識で対応していたが、先に品川児童相談所が家庭訪問を行うので、子ども家庭支援センターの家庭訪問は待つようにとの方針を受け、それ以降は、品川児童相談所の判断待ちになってしまった。
そのため、児童虐待に対応する機関として、また、要保護児童対策地域協議会の調整機関として、進行管理を含めて、十分に対応することができなかった。

改善策

子ども家庭支援センターと品川児童相談所は、それぞれの役割を全うし、連携して子どもと子育て家庭の相談援助活動を行う対等な支援機関である。子ども家庭支援センターは、児童相談所が主担当として対応している事例であっても、児童相談所等との情報共有を徹底し、援助方針に疑問等がある場合には、児童相談所に意見を伝えることが必要である。

保健機関の対応

問題点・課題

保健機関(碑文谷保健センター)は、善通寺市の母子保健担当部署からの情報提供で、児童の健康面での問題はないことを確認したが、虐待対応は、子ども家庭支援センターや児童相談所が主担当との認識から、本家庭に主体的に関わることはなかった。
また、どのような状態になれば児童相談所が一時保護をするかなどを十分に理解しておらず、具体的なイメージや危機感を持つことができなかった。

改善策

保健機関(碑文谷保健センター)は、児童の健康状態の確認にとどまらず、虐待やDVの視点を含め、家族の養育機能についてのアセスメントをより丁寧に行うことが必要である。
また、日頃から、積極的に子ども家庭支援センター、児童相談所と連携を図りながら、児童相談所の一時保護等の行政権限について、研修や要保護児童対策地域協議会の事例検討等を通じて理解することが必要である。

区の対応

子ども家庭支援センターと児童相談所との情報共有

本事例のように、児童相談所が主に関わっているケースにおいては、市区間での引継ぎを確実に行うとともに、児童相談所間の引継ぎと重複しても構わないので、子ども家庭支援センターと児童相談所の間でも、速やかに情報共有するように図る。

子ども家庭支援センターと警察との情報共有

次に例示するようなケースについては、子ども家庭支援センターと児童相談所との間で情報共有するとともに、警察との間でも情報を共有し、連携して対応することとする。

  • 虐待による外傷があると考えられる事案等に関する情報
  • 48時間以内に、子ども家庭支援センターや関係機関において安全確認ができない重篤な事案に関する情報

子どもの安全確認ができない場合の対応の徹底

厚生労働省が定めている「市町村子ども家庭支援指針」(ガイドライン)によれば、子どもの安全確認は、市町村職員又は当該市町村が依頼した者により、子どもと直接会う(目視する)ことにより行うことを基本とし、他の機関によって把握されている状況等を勘案し緊急性に乏しいと判断されるケースを除き、通告受理後、自治体ごとに定めた所定時間内に実施することとし、当該所定時間は、自治体ごとに、地域の実情に応じて設定することとするが、迅速な対応を確保する観点から、「48時間以内とする」ことが望ましいとされている。
虐待のリスクが高いケースで、子どもとの面会が出来ず、安全確認が出来ない場合には、速やかに児童相談所と情報共有し、児童相談所が立入調査を実施する。

虐待のリスクの程度に応じた関係機関の役割分担と連携の推進、体制の強化

児童等に対する必要な支援を行う体制の関係を、虐待のリスクの程度の観点から整理すると、リスクが低い場合は、子育て世代包括支援センター(母子健康包括支援センター)が、中程度の場合は、子ども家庭支援センター(市区町村子ども家庭総合支援拠点)が主に担当し、虐待のリスクが高い場合は、児童相談所が担当するという役割分担を行い、相互に連携して対応するように図る。
また、平成31年度から福祉職及び心理職をさらに増員するなど、子ども家庭総合支援拠点機能の強化に努める。併せて、弁護士に相談できる体制を構築するとともに、外部の有識者に心理職のスーパーバイズも依頼し、体制の強化を図る。
保健機関においても、産後ケアの実施など、子育て世代包括支援センター事業の充実に努める。
さらに、子ども家庭支援センターは、子どもが長時間過ごす場所となっている学校や教育委員会と、虐待の早期発見及び情報共有のために、これまで以上に緊密に連携して、対応していく。
なお、東京都の児童相談所は平成30年度に児童福祉司・児童心理司を緊急に確保するとともに、平成31年度以降も、児童福祉司の増員等、更なる体制強化を図っていくこととしている。

子ども家庭支援センター及び母子保健部門の職員の意識改革

児童相談所と子ども家庭支援センターは、上下の関係ではなく、それぞれの役割を全うし、連携して子どもと子育て家庭の相談援助活動を行う、対等な支援機関であるという意識を職員が持ち、児童相談所の援助方針に対して、必要な場合には、意見具申を行うなどするように図る。
また、母子保健部門は、児童の健康状態の確認にとどまらず、虐待やDVの視点を含め、家族の養育機能についてアセスメントを行い、主体的に関わっていくように、職員の意識改革を図る。
そのために、職員の研修やスーパーバイズの一層の充実に努める。

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子ども家庭支援センター 事業係