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更新日:2023年12月1日

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誰もが自分らしく生きられるインクルーシブな社会をめざそう!

特集

人権週間記念対談

障害の有無や性別、性的指向・性自認、国籍、年齢など、それぞれが持つ多様な違いを認め合い、誰一人排除されることなく共に生きる社会を「インクルーシブ社会」と言います。そして、そんな社会への転換が今こそ求められています。
手足に障害がある当事者として障害と社会との関係を研究する熊谷氏に、どうすれば一人一人が生きやすい生き方を選択できる社会となるのかを、LGBTQ関連の支援を行っている渡邉氏が聞き手となって話を伺いました。

お問い合わせ:人権政策課人権・同和政策係(電話:03-5722-9214、ファクス:03-5722-9469)
対談を収録した動画「世界人権宣言75周年・人権週間記念トークセッション2023」は、区ウェブサイトから、令和6年3月31日までご覧になれます。

区ウェブサイトを見る

対談者のご紹介

東京大学先端科学技術研究センター准教授・小児科医
熊谷晋一郎(くまがやしんいちろう)

新生児仮死の後遺症で脳性まひになり、手足が不自由となる。東京大学卒業後、小児科医となり、現在は同研究センターの准教授として研究に従事しながら、月1回の病院勤務も行っている。

NPO法人共生社会をつくる性的マイノリティ支援全国ネットワーク副代表理事・公認心理師
渡邉歩(わたなべあゆむ)

LGBTQに関しての研究と相談支援、居場所づくりに携わりながら、啓発や講演などの活動を行っている。

熊谷先生が当事者研究を始めたキッカケを教えてください

社会モデル(身体的な障害の場合)図解

子どもの頃から、生きやすさについて考えてきました。幼少期は、健常で平均的な体に近付くことが幸せだと信じられていたため、過酷なリハビリを経験し、子ども心に自分を否定されているような感覚を抱いていました。しかし、80年代に入り、障害は個人の特性ではなく、社会環境の側にあるとする社会モデルの考え方が広まりました。そこで救われた原体験があったことから、生きやすい社会の実現には、専門家だけでなく当事者の生きる知恵や考え方も必要だと気付き、両者の連携不足を解消するために当事者研究を始めました。

キーワード1 当事者研究

障害や病気等の困りごとを持つ本人が仲間の力を借りながら、症状や生活上の苦労など自らの困りごとを研究する取り組み。

当事者研究ではどのようなことに取り組んでいるのですか

当事者が研究者となって当事者のニーズに焦点を当て、従来の研究者と対等な関係を築きながら、革新的な知識を生み出すことに取り組んでいますが、対等性を実現するのは容易ではありません。しかし、マジョリティだと自認する専門家も、自分もマイノリティかもしれないと感じる瞬間はありえます。誰もが困難な状況に陥った時に直面する地続きの問題なのだという共有の認識があれば、マジョリティとマイノリティの境界を越えられるはずです。双方が当事者であり研究者であるという共通の立場になって、初めて共同が実現するというのがテーマです。

キーワード2 マジョリティとマイノリティ

マジョリティは多数派、マイノリティは少数派のこと。人数に限らず、マイノリティはその集団に属していることで差別や偏見の対象になるなど、制度の不備から損失や被害を受ける立場の人たちも指す。

マイノリティが抱える悩みをどのように解決していくべきですか

身体的な障害のある人が生活する上で困ることを例に挙げると、建物や設備が彼らのニーズを無視した設計になっているなど、社会的な価値観や慣習は健常者中心であることです。健常者の当たり前が障害のある人にとって大きな障壁となり、社会への参加を妨げています。それらを改善しようとしても「みんな、我慢している。なぜマイノリティだけが声を上げるのか」というムードを感じるといいます。マジョリティとマイノリティの違いはあれど、困っている当事者ということでは一緒。我慢しなければならないという前提を一緒に覆し、誰もが困っている時は「困っている」と言える環境を作り上げることが、インクルーシブの促進につながります。

私もあなたも、みんなが生きづらさを抱えていることを認識し、共に世の中を変えていく。その仲間を増やしていくことが重要なのです

多様な価値観を受け入れる社会になるためには何が必要ですか

あらゆる公的サービスの図解

圧倒的な多数派の生活が当たり前とされる中、同じように生きようと苦しんでいる人は少なくありません。ところが、人は突如としてそうした生活に違和感を持ち、価値観を見つめ直して、異なる豊かさや楽しさを見いだすことがあります。最近注目されている「医師患者コンコーダンス効果」が解決の鍵になるかもしれません。医療を受ける際、LGBTQや障害など、同じ背景を持つ医療者が担当すると、患者の満足度が向上し、予後の改善もみられるという効果です。つまり、あらゆる公的サービスは、受け手の多様性に匹敵する与え手の多様性が必要なのです。特に学校や幼稚園の先生など、子どもたちが人生の最初に出会う大人は、多様であるべきです。

異なる価値観を受け入れる準備は、子どもたちが生き抜いていく重要な知恵につながります

押し付けられる自己責任論にマイノリティはどのように向き合えばいいですか

自己決定・自己責任は、そもそも選択肢を知らなければ「ご自由にどうぞ」と言われても選ぶことはできません。例えば、施設暮らしの障害者が「施設を出て暮らしますか」と聞かれても、経験がなければ住み慣れた施設を選ぶ可能性が高いでしょう。本意でない選択の後であっても、自己責任と言われます。マイノリティの問題では、選択肢の確保と試しに選択できる機会の保障が、自己決定の条件です。

試行の機会があれば新たな選択に魅力を発見できるかも

マイノリティ性を打ち明けることが難しい人はどうすればいいですか

自分の障害などを打ち明けることが難しくても、多くの場合、本人に責任はありません。話すことが先ではなく、社会を変えることが先。自分から話すことで、偏見や差別を受ける可能性がある場合、信頼できる相手を選んで慎重に行動することも大切です。そして、社会を変えるために誰かと協力して行動することが、個人の悩みを解決する第一歩となることもあるでしょう。

仕事や学業で不利益を被る可能性のある社会に生きる私たちにとって、話せないことは個人の落ち度ではありません

熊谷先生からのメッセージ

まず、自分の課題や問題を言葉にして、身近な人たちと共有する場をつくってみましょう。ポイントは、問題を共有するだけで、解決を目指さないこと。聞く側は批判も助言も加えず、ただ話すこと・聴くことだけの時間を1日10分でも確保してみてください。すると、そんなことに困っていたんだと新たな気付きや理解が深まり、予期せぬ効果が生まれるかもしれません。
マイノリティへの支援も大切ですが、その一方で「支援する側のあなたも一緒。誰もが当事者で仲間」という意識を持つことが大切です。今回の話はマイノリティ問題が出発点ですが、誰にでも当てはまります。この考え方を、誰かのためだけではなく、皆さんが自分自身を振り返る時の補助線として参考にしてもらえたらうれしいです。

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祝日・休日、12月29日から令和6年1月3日を除く
人権身の上相談 電話:03-5722-9280、ファクス:03-5722-9469 第1・3木曜日、13時から16時まで(要電話予約。当日受け付けは15時まで)
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こどもの人権110番

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夜間人権ホットライン(東京都人権プラザ) 電話:03-6722-0127 12月8日(金曜日)、17時から20時

小・中学生人権啓発 標語作品展

日時:12月23日(土曜日)8時30から令和6年1月9日(火曜日)正午まで(12月29日から1月3日を除く)
場所:目黒区総合庁舎本館1階西口ロビー

4年度区長賞受賞作品(学校名・学年は受賞当時)

「多種多様 十人十色 それでいい」
不動小学校6年 書川青海さん

「言葉とこころと行動で 高めていこう人権意識」
目黒中央中学校3年 黒田悠斗さん

北朝鮮人権侵害問題啓発週間

12月10日から16日まで

北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深め、解決に向けて取り組みましょう。

なくそう! 差別につながる身元調査

お問い合わせ:戸籍住民課戸籍証明係(電話:03-5722-9805、ファクス:03-5721-7814)

戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)などを、不正に取得する事件が明らかになっています。このような不正行為は、プライバシーの侵害に当たるだけでなく、人権侵害にもつながります。区は、不正取得の防止に努めるとともに、不正取得が明らかになった場合には、本人にその事実をお知らせしています。

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