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人権啓発のとびら みんながともだち 「みんながともだち その2」
みんながともだち その2
先生 「今日も倉握(くらあく)くんはお休みです。今日のホームルームは、このことについてみんなで考えてみようと思います」
(亮一がおずおずと手を挙げる)
先生 「なんだ亮一、何かあるのか?」
亮一 「オレ、健人のことでばあちゃんに怒られたんだ。差別とかいじめとかがすごく人を傷つけるって。ばあちゃんも昔、ブラク差別をしたって…」
先生 「おばあさんが・・・。詳しく話してくれるかな」
亮一 「昨日、家で健人のこと話してたら…」
(ここから亮一の回想)
亮一 「でさ、みんなで無視してたらそいつ学校に来なくなってさ。仮病だよ、仮病」
おばあちゃん 「亮一、おまえなんてひどいことをするの」
亮一 「だって、あいつのしゃべる言葉、スゲー変なんだゼ。あんなんとしゃべってると…」
おばあちゃん 「亮一!」
亮一 「はい」
おばあちゃん 「おまえ、自分のしたことがその子をどんなに傷つけてるかわかるかい? おまえがしていることはね、いじめだし差別なんだよ」
おばあちゃん 「ばあちゃんには昔、職場で知り合った恋人がいたんだよ。Sさんといってね。いつしか結婚の約束もして、周りの人たちもそのことを喜んでくれてね。日取りも決まって、あとはその日を待つだけだったんだよ。ところがある日、突然、本家の伯父さんが家に怒鳴り込んできたんだよ。この結婚は絶対に許さない、もう二度と会うこともさせるなって… ばあちゃんのお父さんにね。ばあちゃんには、反対される理由がわからなかった。ばあちゃんの父さんも何かすごく話しづらそうだったけど、何も知らずに納得なんて、できるわけもないさ」
おばあちゃん 「何日か経って、やっと父さんが話してくれたよ。Sさんは部落の出だからこの結婚は本家の許しを得られない、もしおまえたちが駆け落ちでもして結婚しようものなら本家はこの家と縁を切り、土地も財産もすべて取り上げると言ってるって。ひどい話だと思うだろ? ただ、父さんも母さんも苦しんでることはわかったんだよ。だけどね、あの時代じゃ本家に逆らって暮らしていくことなんてできなかったんだよ」
おばあちゃん 「それでも私たちは、別れるなんて考えられなかった。だから、二人で知らない土地へ行って暮らそうって決めたんだよ。誰にも言わずに汽車に乗ろうって」
おばあちゃん 「いよいよ出発という日になって、もう二度と会えないのかと思って父さんと母さんを見ていたら… これ以上私のことで二人に苦労をかけてしまっていいのだろうかと思えてきてね」
出発ベルの音 「ジリリリリリリリリ」。ドアの閉まる音 「シュウウウウ」
汽車はSさんだけを乗せて出発した。
おばあちゃん 「結局ばあちゃんは、約束の汽車には乗らなかった。ばあちゃんのしたことは、差別なんだ。そのことはどんな言葉で言い訳したって変わらない」
おばあちゃん 「自分のことを誰よりも信じてくれていた人を裏切って、傷つけて、我が身の幸せだけを考えたんだ。今でもそんな自分が悔しいし、恥ずかしいよ。亮一、人生の中では後になってどんなに後悔しても取り戻すことができなくなってしまうものがあるんだよ」
お母さん 「あなた、知ってたの?」
お父さん 「いや… 初めて聞く話だ。きっとおやじも知らなかったことだろうな。母さん、誰にも言わず自分一人で苦しんでたんだろうな…」
(亮一の回想はここまで)
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