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令和8年第1回目黒区議会定例会での区長所信表明(令和8年2月17日)
はじめに
令和8年第1回区議会定例会の開催に当たり、区政を取り巻く諸情勢と令和8年度の区政運営の基本的な考え方について所信を申し述べます。
はじめに区を取り巻く環境について申し上げます。米国の保護主義強化やウクライナ・中東・東アジア情勢の不安定化など複数の地政学的リスクにより、世界経済の混乱が生じております。こうしたことを背景として、資材高騰などによる建設費の高騰、物価高騰が令和8年度も続く見通しでございます。
また、区では顕著ではないものの、日本全体では20代・30代の人口は急速に減少するため、少子化は構造的に避けられず、人口減少が更に進んでいきます。一方、いわゆる団塊の世代に属する方が全て、後期高齢者となったことに伴い、社会保障費の増大など高齢社会が抱える課題がさらに顕著となってまいります。
加えて、地球温暖化に伴う気候変動により、熱中症をはじめとする健康への悪影響や、昨年の集中豪雨のような、これまでにない自然災害が今後も発生することが懸念されるところです。
こうした中にあって、重要課題の解決に向けた取組の着実な推進と持続可能な行財政運営の両立を図り、令和8年度の区民生活をしっかりと支え、区民福祉の向上に全力で取り組む覚悟でございます。
区政における令和8年度の状況
令和8年度は、令和4年3月に策定した基本計画の5年目となり、10年間の計画期間の折り返しの年度となります。これまでの取組についてしっかりと振り返りを行い、成果と課題を明確にした上で、実りの大きい後半の5年間につなげてまいります。基本計画の実現をはじめとした効果的な区政運営のためには、区にとって大切な財産である「人財」が輝く必要がございます。公務員の志望者の減少傾向が強まる中、特に技術職など一部職種で採用困難な状況が継続する見通しであり、近年の普通退職者の増加と相まって人員数や年齢構成など職務執行体制の構造的な変化が進む見通しでございます。令和4年3月に策定した人財育成方針も5年目となりますので、これまでの取組の効果検証を行い、新たな区政課題や社会情勢の変化に応じた見直しにつなげてまいります。
また、区政を取り巻く状況が大きく変化する中、区は公共施設サービスのあり方を見直す岐路に立っており、区有施設見直し方針及び計画の改定を行ってまいるとともに、福祉、健康、教育など多くの分野で、時代に合わせた計画の見直しを行ってまいります。
財政の見通し
今後の財政に関する見通しについて申し上げます。
まず、歳入につきましては、雇用・所得環境の改善、堅調な企業収益の伸びにより、一般財源の二本柱である、特別区税、特別区交付金がいずれも増加傾向にございます。
しかし、米国の通商政策の影響等により景気が下振れした場合には、区の財政構造上一気に減収に転じるリスクがございます。また、ふるさと納税の影響による区税収入の減収影響が拡大の一途をたどっております。さらに、住民税利子割、地方法人課税、固定資産税について、国による不合理な税制見直しの動きが示されており、こうしたリスク要因を考慮しますと、歳入の増を前提とした予算編成はできない状況でございます。
歳出につきましては、引き続き、子育て施策の拡充に伴う経常的経費の増加と高齢化の進展による社会保障経費の増加が見込まれるとともに、今後、区有施設の更新に数千億円レベルでの財源不足が見込まれております。
将来世代に負担を先送りすることのないよう経営的視点に立ち、歳出の削減に取り組み、基金の確保を進める必要がございます。しかしながら、このような中でも、物価高騰から区民生活を守り支えるための取組については、しっかりと対応してまいります。
区政運営の基本姿勢
区政運営に当たっては、基本構想に掲げるまちの将来像「さくら咲き 心地よいまち ずっと めぐろ」の実現を目指し、三つの区政運営方針、「平和と人権・多様性の尊重」、「区民と区が共に力を出し合い連携・協力する区政の推進」、「未来を見据えた持続可能な行財政運営」に従い、五つの基本目標「学び合い成長し合えるまち」、「人が集い活力あふれるまち」、「健康で自分らしく暮らせるまち」、「快適で暮らしやすい持続可能なまち」、「安全で安心して暮らせるまち」を柱として、取り組んでまいる所存でございます。
また、組織経営の視点では、「目黒区中期経営指針」により、ヒト・モノ・カネ・情報・時間という経営資源の最適配置を通じ、EBPMすなわち「証拠に基づく政策立案」を推進し、長期計画の着実な実行に資する持続可能な財政運営を徹底してまいります。
令和8年度の重要課題
このような区政運営の基本姿勢を踏まえ、令和8年度は、以下の4点8項目を重要課題と位置付けて区政運営を行ってまいります。
1「子ども」
重要課題の一点目は「子ども」でございます。子どもたちの学びと成長は、目黒の未来への架け橋であり、子どもを産み育てたいという希望が叶う環境は、地域社会の活力につながります。令和8年度も引き続き、あらゆる場面で子どもの権利を尊重し、安心して子どもを産み育てられる地域社会づくりに取り組んでまいります。
第一に、子どもの声を聴き、虐待や経済的困難などの権利の侵害から子どもを守ってまいります。子どもの声を聴く取組につきましては、意見表明や参画機会の充実を目指し、社会全体で子どもの育ちを支援していく意識の醸成を図るものとしてまいります。また、昨年度整備し、今年度から運営を開始した「こども家庭センター」の体制強化を図り、母子保健との連携をさらに深めていくとともに、東京都児童相談所の区内設置を見据え、サテライトオフィスとの連携も強化し、目黒区の実情に即したきめ細やかな児童相談体制を構築することで、目黒の子どもの権利を守ってまいります。
第二に、子育ちに必要な環境を整えてまいります。「めぐろ学校教育プラン」、「MEGUROスマートスクール・アクションプラン」、「目黒区学校施設更新計画」などの改定や、統合新校の新校舎整備及び学校施設の計画的な更新を進めるとともに、学校運営協議会の設置校の拡大による「地域とともにある学校づくり」を推進することで、子どもが学校や地域で育つために必要な環境をソフト・ハードの両面から整えてまいります。
2「健康と福祉」
重要課題の二点目は「健康と福祉」でございます。誰もが、どんなときでも、自分らしく生き生きと活動することができれば、全ての区民の生活が豊かになり、また、社会から孤立せず、安心して暮らし続けられる環境は、地域共生社会の実現につながります。誰一人取り残されることなく、全ての区民が住み慣れた地域で、生涯を通じて自分らしく健康に生き生きと暮らし続けられる環境を整えてまいります。
第一に、社会的孤立を未然に防ぎ区民の健康寿命を延伸してまいります。一世帯当たりの構成員数が減少し、人口の流入・流出が激しく、近隣とのつながりが希薄な都市部において、社会的に孤立する人が増加するとともに、高齢化の進展に伴い健康状態の悪化や生活の質の低下等の影響が懸念されます。地域共生社会の実現を目指し、顕在化する課題に対応するため、社会から孤立させない交流機会の創出や、地域包括ケアシステムの深化・推進を図ってまいります。また、高齢者のニーズに沿った介護予防をはじめ、疾病の早期発見・重症化予防を目的とした検診受診率向上の取組などにより、区民の健康寿命の延伸に取り組んでまいります。
第二に、健康と福祉の総合的な施策の展開を図ってまいります。少子高齢化の進展や社会経済状況の変化等により、複雑化・複合化していく課題に対応するため、令和6年度から実施している重層的支援体制整備事業を引き続き進めてまいります。また、地域社会における様々な課題や、多様な福祉・保健医療のニーズに的確に対応するため、各計画について、総合的な視点により、期間等の整理や体系の再構築を行い、「健康で自分らしく暮らせるまち」の実現に向けた施策を、分野横断的に進めてまいります。
3「まちづくりと暮らし」
重要課題の三点目は「まちづくりと暮らし」でございます。全ての区民が生き生きと暮らし、活動するためには、誰もが行動しやすく、暮らしやすいよう、まちの快適さと利便性を高めていくことが必要であり、また、大規模地震と激甚化している台風やゲリラ豪雨による被害を軽減させるために、災害に強いまちをつくっていくことが必要でございます。引き続き、「快適で暮らしやすい持続可能なまちづくり」と「安全で安心して暮らせるまちづくり」に取り組んでまいります。
第一に、区民生活に必要なインフラを維持してまいります。区民生活に必要な都市インフラを維持する観点から、下水道事業の一部受託開始、橋梁長寿命化修繕計画の改定、立地適正化計画の策定などを進めてまいります。また、区民生活にとって重要となる駅前のオープンスペースや道路については、市街地再開発事業などを活用し効率的な整備を行ってまいります。
第二に、安全・安心で心地よいまちづくりを進めてまいります。木造住宅密集地域においては、密集市街地総合防災事業や防災街区整備事業、不燃化推進特定整備事業などを活用し、災害に強いまちづくりを進めます。また、ゼロカーボンシティの実現に向けた環境負荷の少ない区民生活・事業活動への理解を促進してまいります。加えて、災害の発生に備えた備蓄や資機材整備の充実、防災行動マニュアルの刷新による意識醸成を図るとともに、日常における犯罪被害の防止に向けた設備等の整備を進め、防災・防犯への取組を進めてまいります。また、50周年を迎える区民まつりに代表されるイベントを通じた街の賑わいや商店街をはじめとした区内各地での地域経済活動などの活性化、国際交流や外国人人口の増加を背景にした国際理解の推進に取り組んでまいります。
4「未来を見据えた区政運営」
重要課題の四点目は「未来を見据えた区政運営」でございます。目指すべき未来を想像し、長期的な視点に立って、安定的に運営できる財政基盤を確立するとともに、施策の選択と集中により効果的な取組を見極め、起こり得る変化やリスクに適応した施策に転換していくことが重要でございます。区有施設の計画的な更新を進めるとともに、デジタル化をはじめとする業務改善と区民生活の質の向上とを両立して実現してまいります。
第一に、デジタル技術を駆使した区民サービス向上と業務改革の加速に取り組んでまいります。急速に変化する社会環境や区民ニーズに柔軟に対応するために、行政のあらゆる分野において、AIをはじめとするデジタル技術を戦略的に活用し、窓口業務を含む業務全体の抜本的な見直しを段階的に進め、区民サービスの質と利便性を向上させるとともに、業務の効率化・高度化を推進してまいります。また、各部署における業務改善やデータに基づく取組の積み重ねを通じて、組織全体としての業務改革を着実に進めてまいります。
第二に、公共施設等マネジメントを推進してまいります。区民活動を支える施設サービスへのニーズは社会情勢の変化に伴い多様化し、公共のみならず民間が提供するサービスも充実がみられる一方で、高騰が続く建設費の影響で公共施設等の更新に多額の経費が必要となるなど、時代に即した公共施設の実現に向けて、そのあり方を見つめ直す大きな岐路に立ってございます。令和8年度の改定に向けて取組を進めている区有施設見直し方針等では道路や公園などのインフラを含めた体系整理をはじめ、公共施設等において提供するサービスのあり方や施設更新の手法等について方向性を定め、将来を見据えた公共施設等の最適利活用を図るため、公共施設等マネジメントの取組を進めてまいります。
令和8年度予算編成の概要
令和8年度予算案につきましては、「守る、つなぐ、未来へ活かす—責任と希望をかたちにする予算」と位置付けました。2年目となる実施計画や、先ほど申し上げました4点8項目の重要課題への取組を積極的に進めていくとともに、引き続き物価高騰対策にしっかりと取り組むよう、編成を行っております。
また、「未来を見据えた持続可能な行財政運営」を実現するため、8年度の予算編成から新たに「期間設定方式」を導入し、「試行実施事業」として4項目と、終期を定めて実施する「終期設定事業」、いわゆる「サンセット事業」として7項目を対象といたしました。これまで以上に成果を意識した効率的な事業運営を行うとともに、事業の固定化や経費の肥大化を抑制することで、時代の変化に即応して柔軟に事業内容を見直す機運を高め、新たな行政需要に対応できる安定的な財政基盤を確立するための取組に一歩踏み出したところでございます。
一般会計予算では、区税収入について、ふるさと納税によるマイナス影響が右肩上がりとなっている一方で、雇用・所得環境の改善により給与収入が増となっていることなどにより、前年度当初に比べ、プラス29億3百万円余を歳入予算に計上しております。また、特別区交付金についても、企業収益の堅調な推移による法人住民税の増収が見込まれていることなどから、前年度比で16億円をプラス計上しております。
歳出につきましては、実施計画事業に前年度比でプラス91億1千万円余となります284億9千万円余を計上するほか、重点化対象事業に96億6千万円余を計上し、真に必要性・緊急性の高い事業に予算を配分するよう努めております。財政調整基金については、歳入を上回る歳出の財源不足を補うため、85億9千万円余を取り崩す一方で、将来の財政需要や区有施設の更新に安定的かつ柔軟に対応するため、財政調整基金、施設整備基金、学校施設整備基金に積極的な積み立てを行っております。
一般会計の予算規模は1,620億6千万円余で、前年度当初と比べて197億2千万円余、率にして13.9パーセントの増となるものです。また、特別会計につきましては、国民健康保険特別会計は267億8千万円余、後期高齢者医療特別会計は91億2千万円余、介護保険特別会計は232億9千万円余となり、一般会計と3つの特別会計との予算額の合計は2,212億6千万円余で、前年度当初と比べ、208億4千万円余の増となっております。
平和と基本的人権の尊重
基礎自治体としてあらゆる施策の根底に据えております、「平和と人権・多様性の尊重」について申し上げます。
戦後80年が経過し、戦後生まれの区民の方の割合が9割を超え、被爆された方々の高齢化等も進んでいる今、戦争の記憶の風化が課題となっております。
平和の尊さへの理解を深め、争いのない平和な社会を次代に引き継ぐことは私たちの使命であり、引き続き平和に関する意識の啓発や醸成への取組を進めてまいります。
また近年、いじめや虐待、様々なハラスメントなど、個人の尊厳や人格を傷つける重大な人権侵害が深刻な問題となっております。
全ての人が互いの人権や尊厳を大切にし、誰もが一人の人間として尊重され、争いや差別、偏見がなく、個性や違いを認め合う地域社会づくりに取り組んでまいります。
おわりに
最後に、私の任期に関する公約について、改めて申し述べます。私は、任期4年の途中である3年で辞職し、自らは再出馬しないことで、これまで別に行われていた区長選挙を令和9年4月の統一地方選挙と同時に実施できるようにし、投票率の向上と選挙にかかる経費の削減に資することを公約として、前回選挙において区長に選任されたものでございます。この公約は、選挙という民主的プロセスへの参加を区民の皆様に対して促し、もって区政に対する信頼と透明性を高めるためのものであり、私はその履行に向け、粛々と準備を進めてございます。
したがって、本年4月から始まる令和8年度は、私にとって目黒区長としてのラストイヤーとなります。ラストイヤーであるがゆえに、私は一層の緊張感を持ち、任期に関する公約の履行のみならず、選挙で掲げたその他の公約の実現に向けても、残る時間の一分一秒を惜しみ、全力で取り組んでまいる覚悟でございます。
以上、区政運営に臨む私の所信を申し述べました。
重要課題一つひとつを、総合的な視点を踏まえつつ、着実に推進していくことにより、区民の皆さんに、目黒区基本構想に示されたまちの将来像「さくら咲き 心地よいまち ずっと めぐろ」を実感いただけるよう、しっかりと最後までベストを尽くす所存でございます。
改めて、議員各位と区民の皆様の、区政に対する一層のご理解とご協力をお願い申し上げ、以上、所信表明といたします。
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ファクス:03-3716-7093