更新日:2014年2月3日
「目黒の坂」は、「月刊めぐろ」1972年3月号から1984年2月号の掲載記事を再構成し編集したものです。
目黒の坂 石古坂
石古坂
下目黒三丁目と品川区小山台一丁目の境、都立林試の森公園正門前に「石古坂」というゆるやかな坂がある。
坂の名は、石ころの多い坂だから「石古坂」と、土地の人はいう。また、江戸の「府内場末其他沿革図書」の「中下目黒滝泉辺之図」には、この坂を石河坂」とあり、そこから転じて「イシコ坂」となったらしいともいわれている。
坂下で米穀商を営む林正雄さんは「以前、この坂は、かなりの急斜面で、大八車なんかが通る時には、ひどく汗を流していました。私も幼いころは、確か、1銭か2銭のだ賃をもらうために、坂下で大八車を待っては、後押しをしたものですよ」
坂下の目黒不動商店街付近には、昭和18年ごろまで、何軒もの芸者屋があり、稽古三味線の音がよく聞けたそうである。また、不動の門前には、待合や料理屋が軒を連らねていたという。
不動門前に比翼塚という石碑がある。これは以前、坂下にあったもので、その碑にまつわる平井権八と小紫の恋物語は、いろいろと脚色され、歌舞伎や人形浄瑠璃で知られ、参拝する男女も多かったという。俳優の長谷川一夫、大江美智子、萬屋錦之介の兄である中村時蔵など、比翼塚にまつわる芝居をする役者さんたちが、よく芝居の前に供養に訪れたという。
石古坂付近
