更新日:2023年10月12日

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SDGsポスター物語「ようこそ目黒区へーその壱 源義経・弁慶編」

この物語は、東急グループが運行する「SDGsトレイン 美しい時代へ号」に、目黒区が掲出しているSDGs(持続可能な開発目標)啓発ポスターに掲載した物語です。
目黒区にタイムスリップしてきた歴史上の偉人とのやりとりの中で、SDGs達成の大切さに気付く、そんな物語です。
物語はフィクションです。

時は21世紀、ところは目黒。
目黒区の取り組みや魅力を伝えることをミッションに、目黒を駆け巡る広報課のAさん。
どうやって伝えるか悩み続けるAさんの前に現れたのは…。
時空を越えた偉人との出会いが、広報課Aさんや現在と未来の人々にSDGsの重要性を投げかける。

SDGsポスター物語「ようこそ目黒区へーもしも歴史上の偉人が現代にやってきたら」、はじまり、はじまり。

プロローグ

目黒区役所広報課。
東京都目黒区に関するさまざまな情報を広く区民に伝えるため、この課で日々忙しく働く公務員がいる。
広報課のAさん(仮称)もその1人。
彼女の主な業務は「めぐろ区報」という広報紙の編集だが、次号の特集記事に頭を悩ませていた。
「10月の特集記事どうしよう?芸術の秋?スポーツ特集?いっそスイーツ特集とか楽しそう」
そこへ偶然通りかかった広報課長。
「Aさん、区報の特集記事だし目黒区の魅力を最大限にアピールできるようなインパクトのあるものにしたいな。目黒区への転居者が激増するようなやつ」
「課長……めぐろ区報にそこまでの影響力ありますかね?」
「あるある!広報紙の可能性を信じて頑張ってみよう。Aさんならできる!期待してるよ」
「うーん、なんとか、頑張って……みます……」

困ったときの神頼み 大鳥神社

真面目で頑張り屋のAさんは何事も全力で取り組むタイプ。
その日からネタを探すための目黒区巡りが始まった。
ある時は天空庭園の屋上を散策し、またある時はめぐろ歴史資料館で情報収集。
武蔵小山でランチをした後は、自由が丘でスイーツ休憩。
とにかく話題になりそうなスポットをつぶさに歩き回った。
「こうしてあちこち行ってみると、目黒区も意外と広いなぁ」
ちなみに目黒区の面積は14.67平方キロメートル、東京23区中16位と比較的コンパクトな行政区である。
疲れ切った足を引きずるようにして区役所へ帰庁する途中、ふと目に入った大鳥神社の鳥居。
「こんな街の真ん中に神社があったんだ。せっかくだからご挨拶して行こうかな」
大鳥神社は酉の市や良縁のパワースポットとしても知られる目黒区最古の神社。
交通量の多い山手通り沿いにひっそり佇むその社殿は都会の喧騒の中にありながら
一歩鳥居をくぐると静謐で厳かな空気があたりを包んでいる。
「どうか目黒区にたくさんの人が来て、気に入って住んでくれますように」
直近の難しい課題達成のためには神頼みも必要とばかり、一心にお願いする広報Aさん。

偉人登場

その時、目黒区広報課Aさんの前に、まばゆい光に照らされた二つの人影が現れた。
一人は鎧兜の若武者、もう一人は巨漢の僧兵。
「追い詰めたぞ!平家一門」
渾身の力を込めた薙刀を振り下ろす僧兵。
「待ってください!わたし平家じゃありません」
尻もちをつき、激しく首を振って全力の否定をする広報Aさん。
「待て弁慶!様子がおかしい」
若武者の制止で、大男はぴたりと動きを止めた。
「そこの娘、我らは壇之浦に平家を追い詰めていたはずだが、ここはどこだ?」
「あの、こ、ここは東京の目黒区ですけど…」
「東京?目黒区?聞いたこともないな」

平家、弁慶、壇之浦という単語で広報Aさんが何かを閃いた。
「もしかしてあなたは源義経さんですか?」
「いかにも源九郎判官義経とは儂のことだ」
半分冗談で尋ねたのだが、若武者は真剣そのものだ。
(今日ってエープリルフール?それともハロウィーン…?いや違う!
今日は「中目黒夏まつり」の日だ!)
華やかなダンスチームによる「阿波踊り」と「よさこい」が楽しめるイベント。
(そうか、この人たちはお祭りの参加者で今年は仮装して踊るんだ!なら早く会場に行かないと)
「すみません、大至急お連れしますね」
広報Aさんにうながされ二人は祭の会場へ。

中目黒夏まつり

「なんだここは?」
戦場には似つかぬ安穏とした光景に若武者は不満顔。
後ろに控えていた大男の僧兵がずいっと前に乗り出す。
「おい娘、我らは戦をしておるのだ。戯れも大概にせい」
「えぇ、まだ続けるんですか?いまの日本に戦なんてありませんよ?」
「戦が無い…いまの日本…」
つぶやくと若武者は何かを思案するように沈黙した。
そこへ「よさこい」の陽気な音色が響き渡る。
「あ、次のダンスチームの演目が始まりましたよ」
ダンサーたちの力強く統制の取れたパフォーマンス。
誰もかれもが生きる喜びを体現しているようだ。

「これが戦の無い世の有り様か…なんと…心地の良い響き」
若武者は居ても立ってもいられず踊りの輪の中へ飛び込んだ。
「弁慶!お主も踊れ!なんとも愉快だ!」
「九郎殿!これはなかなか難しゅうござるな」
二人が心から楽しそうに踊る様子を見て広報Aさんも微笑んだ。
(あの二人、もしかして本物の義経と弁慶?)

思い切って二人へ呼びかけてみる。
ひとしきり踊り、満ち足りた笑顔で若武者が応える。
「おう娘。この地への導き感謝するぞ」
「この弁慶、あまりの楽しさに戦を忘れており申した」
「いまの日本は80年近く戦争の無い平和な国なんですよ」
「80年も戦が無い?我らはそれほどの刻を跳んだとでも?」
「お二人のいた時代からだと…800年以上経ってますよ!」
「不可思議なこともあるものだ。戦しか知らずに生きてきたが、
平和とはこれほど多くの民を笑顔にする。まこと尊きものだな」
祭提灯に照らされた義経の横顔は晴れやかだった。
「うむ、儂はこの地が気に入ったぞ」
嬉しそうに聞いていた広報Aさんは二人に尋ねた。
「あの、もし行くあてがないのなら、しばらくここで暮らしてみませんか?」
そこには満面の笑みでうなずく二人の姿。

こうして目黒区に新たな住人が加わった。
「ようこそ目黒区へ」

登場人物紹介

広報課Aさん

目黒区役所の広報課で働く通称Aさん。
真面目で頑張り屋の彼女は、目黒区のPRのため北は駒場から南は大岡山まで東奔西走。
大鳥神社の神頼みによる不思議な力で、歴史上の偉人まで呼び寄せてしまう。

源義経

1159年生(26歳)京都出身。
鎌倉幕府初代将軍 源頼朝の弟で、幼名は牛若丸。
頼朝の平氏打倒の挙兵に応じ、数々の戦功を挙げる。
壇ノ浦の合戦の最中、不思議な力により現代の目黒区に出現。
広報課Aさんの勘違いにより、中目黒夏まつりに飛び入り参加することに。
戦上手で知られる若武者は、戦争の無い現代をどう見るのか?
そして目黒区民となった今後の行く末は?

武蔵坊弁慶

1155年生(30歳)。
巨躯と怪力が自慢の僧兵。五条大橋で義経に敗れて以来、義経の忠臣として最後まで仕えたとされる。
主人の義経とともに現代の目黒区に出現。
自由奔放な義経に振り回されながらも、現代社会に馴染もうと奮闘する。

企画・デザイン 目黒区広報課 大谷信広
イラストレーション 亀川秀樹

お問い合わせ

広報課

ファクス:03-5722-8674