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ハンセン病の教訓を生かす (めぐろ区報 平成21年6月15日号に掲載した記事です)
平成21年6月
2001年、ハンセン病国家賠償訴訟において、熊本地方裁判所は、「らい予防法」のもと国が行ったハンセン病患者・元患者に対する隔離政策は、遅くとも1960年以降は必要なかったものとして、憲法違反であるとの判決を下しました。国は総理大臣談話を発表し、控訴を行わないことを決定しました。
ハンセン病は、らい菌による感染症ですが、らい菌の病原性は弱く、感染しても発病する可能性はまれです。現在、国内での新規患者は数人にとどまっており、たとえ発病しても抗生物質の投与などにより、一般の皮膚科で入院することもなく治すことができる病気です。
しかし、わが国では、1996年に「らい予防法」が廃止されるまで、全国にあるハンセン病療養所に患者を強制隔離する政策が行われており、不自由な生活を強いられていました。医学的に隔離する必要がない人を隔離することは、重大な人権侵害です。
元患者は、病気が治ったにもかかわらず、現在も多くの人々が療養所に入所しています。また、いったん療養所を出ても、再び入所するというケースもあります。このように社会復帰を阻んでいる原因には、ハンセン病の後遺症による身体障害があること、高齢であること、偏見や差別が今なお根強く残っていること、長期間にわたって社会との交流が絶たれてきたことなどが挙げられます。
このようなハンセン病にかかわる問題の解決を促進するため、昨年6月には、ハンセン病問題の解決の促進に関する法律(ハンセン病問題基本法)が成立しました。この法律では、国の隔離政策の誤りを明記し、療養所入所者への医療体制の整備、社会復帰の支援、名誉回復の措置を国などに義務づけました。
ハンセン病がたどってきた歴史は、私たちに多くのことを教えてくれます。エイズをはじめとする他の感染症においても正しい理解を深め、ハンセン病の悲劇を二度と繰り返さないようにしていかなければなりません。
私たちはだれでも、感染症にかかる可能性を持っています。私たち一人ひとりが感染者に対して、差別意識や偏見を持たず、共に生きる仲間として助け合っていくことが必要ではないでしょうか。
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