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元気なお店、活気ある事業所をご紹介します「株式会社UNCHEF(アンシェフ)」
企業情報
所在地東京都目黒区鷹番3丁目8番2号 1階 代表取締役社長結城 飛鳥 |
電話番号電話:03-6451-0075 創業2018年 |
代表取締役社長 結城 飛鳥氏 |
店舗外観 |
その日一番の新鮮野菜と料理人がつくったレストラン品質の惣菜を提供
東急東横線・学芸大学駅高架下にある商業施設「学大市場」の中核的な役割を担っているのが、地域で人気の八百屋「Chef’s Marche」が手掛ける「GAKUDAI MARCHE」です。市場や指定農家から仕入れたその日一番の旬で新鮮な野菜や果物を豊富に揃え、店内厨房で料理人がつくったレストラン品質の惣菜も大好評。カフェや飲食スペースも併設し、新しい食の愉しみ方を提案しています。
「食は何にでも紐づけられますし、可能性を広げることができると考えているので、食にからむことは何でもやってみようという結果が、このGAKUDAI MARCHEですね」と話す「Chef’s Marche」の運営会社であるアンシェフ代表取締役社長の結城飛鳥さん。
「ここでは、そもそものきっかけである八百屋もやっていますし、野菜を使って調理したてのものを惣菜として販売もしています。料理人と管理栄養士が在籍しているので、八百屋でありながら飲食店クオリティのテイクアウトが提供できるというわけです。得てして料理人はプライドが高いので、いわゆる惣菜のお店というと、料理人がいないことも少なくないのですが、ここでは料理人がつくる惣菜であることがポイント。共働きのご家庭が増えて惣菜に対するニーズが高まっている印象ですが、だからこそ飲食店で食べる味を、普段の食卓に気軽に採り入れていただければと考えています。ただ、料理人からすると、惣菜を食べるのが今から何時間後になるかを考えて、火入れしてそれなりの数をつくることになるので、通常の調理とは違った難しさがあるのも事実ですね」
アンシェフの創業は2018年。学芸大学駅前エリアで八百屋「Chef’s Marche」を始動させます。2021年7月の「学大市場」のリニューアルオープンに伴い、「Chef’s Marche 学芸大学駅前店」を出店。さらに2023年にもリニューアルを行い、現在の「GAKUDAI MARCHE」のカタチになりました。
「4店舗を展開していた時期もありましたが、コロナ禍もあり、学芸大学駅前エリアで八百屋として丸5年やったタイミングで、1年半前に本店も含めて、GAKUDAI MARCHEに集約した感じですね」
本当の勝負は5年後、10年後。今答え合わせをする必要はない
出店の立地を学芸大学駅前エリアにしたのには、明確な理由があります。
「家庭の食卓に近いローカルエリアでお店をやってみたいと考えましたが、街がコンパクトで商店街が強く、駅前にロータリーがなく、毎日駅を目指してやってくる人が多い。実は半径500メートル圏内で絞ると非常に大きな商圏になっているのが、学芸大学駅前エリアなのです」
紆余曲折を経た現在では、1日約600人の来客があり、平日も週末も売り上げがほぼ変わらないという地域の人気店へと成長しました。
「食における自分たちの価値観を伝えるという点では、もの凄い成長をさせていただいているなと感じています。あまりトレンドに左右されるつもりもないですし、SNSもさほど前のめりではないので、お客さんは地元の方が多く、若い方が少ない傾向にありますが、結果を急いではいません。本当の勝負は5年後、10年後だと考えているので、ベンチャー企業にしては珍しいと思いますが、今答え合わせをしたくないというか。それよりも、スタッフそれぞれがスキルを磨いて、よりいいモノをご提供できるようになっていくことが大事ですね」
同社では「GAKUDAI MARCHE」の展開に加え、生産農家と一般消費者をダイレクトで結ぶ、トマトの専門ECサイト「トマ人(じん)」なども運営。採れたての新鮮野菜をめぐる新しいプラットフォームづくりも精力的に行っています。
「八百屋を始めてから、食材の触り方が変わりました。新鮮な野菜は人の体温でヤケドしてしまうほどなのです。これを使いたい! と思うようなレベルの高い食材は、ちゃんと産地まで見に行かなければならないと実感しましたし、食材のレベルが高いほど、生産者がこう料理して欲しいな、というのも分かるようになりました。ただ、契約農家という形態にもメリットがある反面、恐さもあります。モノが悪い年も買い取らなくてはなりませんから。だからこそ、アンシェフで一番大切にしているのが、その時々で常に今一番いい産地選びなのです」
そのことを、一般消費者も気軽に体験できる場の一例が「トマ人」でもありますが、いま結城さんの頭の中にはさらなる次のステージが描かれています。
「将来的には、野菜全体に関わるプラットフォームを創っていきたいと考えています。理想を言えば、気に入った産地の野菜が最寄りのスーパーで買えたら便利ですよね。目指しているのは、そんなプラットフォームづくりです。青果物業界にはややクローズ気味な部分もあり、その分スピードが遅いわけです。そこで、Web上に市場をつくれば、もっとスピーディに新鮮な野菜を動かすことができるはずだ、と」
農家の子に生まれ、味わった生産調整への違和感とカンボジアでの経験が原点
完全に八百屋の域を超えた幅広い事業を展開している結城さんですが、そのモチベーションはどこから来るのでしょうか? 何事も思い立ったらまずやってみよう! がポリシー。その原点となっているのが、就職2年目のカンボジアでの経験だったと言います。
「学生時代に飲食店のアルバイトで料理を勉強していく中で、卒業後は居酒屋チェーンに就職。2年目にカンボジアに赴任したわけですが、現地では空っぽのところから全てを立ち上げました。現地の人を雇って店を2つ営業しながら、深夜にはプノンペンで屋台を出しチキンカツや油そばを売り、週末はタイ、ミャンマーに魚の仕入れに行ったり。とにかく自由にやらせてもらいましたね。その後帰国し、新たに立ち上げた業態でチェーンの子会社代表も務めましたが、方向性の課題などもあり、26歳で独立。それまで一緒に仕事をしてきたメンバーが7人ついてきてくれて、8人で2018年に立ち上げたのがアンシェフという会社です。「思い立ったらまずやってみよう」の精神は変わらずですが、いまは現場のトップであると同時に経営者でもあるので、以前に比べてややブレーキがかかっているような感じもしますね(笑)」 |
結城さんの問題提起は、野菜の流通の仕組みだけでなく生産者側にも向いています。
「これだけ物価が上がっているのに、大根1本の値段は何十年もそう変わりありません。そこで、優良な生産者から囲っていって、例えば1本100円の大根を1,000円とする、と決めることが大事だと思っています。そのためには仕組みをつくるだけでなく、生産者自体も変わらなくてはなりません。日本の農家は良くも悪くも守られている部分があるので、ある意味甘えが生まれやすい構造。とは言え、野菜をつくりながら農園のPRや直販まで全部を生産者がやるのには無理があります。なので、メーカーとして本気でいいモノをつくることに集中してもらい、こちらで野菜の出来を競い合うような場を提供する。そんなことを業界団体のシンポジウムで問題提起させていただいたら、予想に反して大きな反響が返ってきました」
青果物をめぐる現状に憂いを感じている関係者は、少なくなかったというわけです。それにしても、結城さんの野菜に対するひたむきな情熱には頭が下がる思いですが、そんな結城さんの根幹にあるのが子ども時代に体験した、ある違和感でした。
「長野県の農家の息子に生まれ、食が身近にあったことが今の仕事に繋がっていますが、裕福な家であったわけでもないのに、生産調整という業界の特殊な決まりごとのために、収穫した野菜を廃棄しなければならないことがあったのです。「食べられるのになぜ捨てなければならないのか?」と、子ども心に強い違和感を持ったわけですが、大人になった今も根っこは変わっていない気がしますね」
ここから、新しい食に対する向き合い方が生まれていきそうです。
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産業経済・消費生活課 中小企業振興係
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