更新日:2022年2月16日

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元気なお店、活気ある事業所をご紹介します 株式会社「株式会社福砂屋」

概要


事業所の外観

所在地

目黒区青葉台一丁目26番7号

代表

代表取締役社長 殿村 洋司

電話番号

電話:03-3793-2938

会社設立

2002年

寛永元年の創業から約400年変わらぬ手づくりカステラ


代表取締役社長 殿村 洋司さん

東急東横線・中目黒駅から目黒川沿いを池尻方面に向かって歩くこと7分ほど、ほのかに甘い香りを漂わせそこに佇む赤い建物がカステラの老舗「福砂屋」です。その本家にあたり長崎に本店を構える「カステラ本家 福砂屋」は現在16代目で、そのはじまりは江戸時代の1624年にまで遡ります。
「カステラ本家 福砂屋」の東京支店として開設されたのは1952年のこと。「創業一族であり、人一倍冒険心の強かった父が、東京で一旗あげようと5人で長崎から上京し、東京支店を設立しました」とは、「福砂屋」の代表取締役社長を務める殿村洋司さん。赤坂に店を構えたのち、1976年に現在の中目黒店が開業。2002年に製造を担当する「カステラ本家 福砂屋 東京支店」と、販売を担当する「福砂屋」に分社化され現在に至りますが、殿村さんは主に東日本の販売を担当する「福砂屋」の代表取締役社長であると同時に、本家である「カステラ本家 福砂屋」の代表取締役副社長も務めています。
建物1階にある工場直営店には、ポルトガル人直伝の「長崎カステラ」をはじめ、ココア、胡桃、レーズンの入った「オランダケーキ」、また本家12代の殿村清太郎さんが創案し、戦後に東京で復活した「五三焼カステラ」などが並びます。
「私が中学生くらいの頃、この地は町工場でした。それがいまでは目黒川沿いの桜や雰囲気の良い喫茶店など街は驚くほど様変わりしましたが、たとえ街が一変しても、われわれのカステラづくりは変わりません」
福砂屋が誇るのは江戸時代、寛永元年の創業から約400年もの間、一貫して変わらない手づくりによる製法です。東京には約50名の職人が在籍しており、それぞれに長い年月をかけて会得した福砂屋独自の“手わざ”があります。卵の手割りにはじまり、泡立て、混合、撹拌、焼き上げまで。1つのカステラが出来上がるまでの成長過程をわが子のように、1人の職人がつきっきりで面倒を見ています。

「中でも特にこだわっている工程が、別立法です」
カステラのおいしさは、ひとえに卵の泡立てにかかっているそうです。泡立てには別立法と共立法があり、ミキサーで卵やその他の材料も一緒に攪拌するのが共立法。一方、福砂屋がこだわる別立法とは、卵を手割りで白身と黄身に分け、職人の“手わざ”によってまずは白身を十分に泡立てから、そのあとに黄身と双目糖を加え、さらに撹拌するという製法をいいます。手間がかかる分、生地のしっとり感を表現できるのがメリットです。
一度、銀行に就職したのち、物心のついた頃から生活の一部であった福砂屋に戻り、自身もゼロからこの手わざ職人の世界も経験した殿村さんは、「力仕事が多く正直辛いこともありますが、あとから黄身を入れて攪拌するときの、白色が黄色になっていく瞬間は最高に気持ちいいですよ」といいます。

着飾ることのない「すっぴん勝負」が真骨頂

福砂屋のカステラには生地づくりに特長があります。季節や天候によって、温度や湿度も微妙に異なるため、それに合わせて細心に調整した生地づくりが必要。だからこそ、人の手にこだわり続けているというわけです。「機械の場合、泡の気泡が綺麗に揃いすぎて逆に生地がベタついてしまうのです。人の手でつくると、工程の途中でそれまで右手で行っていたのを左手に変えたり、力の入れ方がその時々で微妙に変わったりすることで、異なった大きさの泡の気泡ができます。不揃いなその人間味のある気泡がカステラになったとき、ふっくらとしっとりとした独自の味わいになるわけです」

基準に満たないクオリティのものは厳しい検品ではじかれ、けっしてお客さんの前に出すことはありません。「出来上がったカステラを見れば正直、つくった職人のコンディションまで分かってしまう」と殿村さんはいいますが、人の手、そして人の心がそれほどカステラに影響を与えるという極めて繊細な世界。その中で、今日まで約400年もの間、愛され続けているという事実が、“手わざ”の凄みと福砂屋の家訓である“誠実さ”を物語っています。
「カステラは着飾ってごまかすことはできないのですよ。生地そのままであるわれわれのカステラはいつでもすっぴん勝負です」

わざ
職人の“手わざ”

毎年5月22日は、福砂屋にとって大切な日。カステラづくりには日々多くの卵を使用しているので、その卵への想いをこめて「卵供養」が行われます。その際にお供えするカステラはいまでも殿村さんが焼き上げているとか。
「卵供養とともに、感謝の想いをスタッフみんなで再確認しています。ものを大切にする、同僚や家族、お客さまなど支えてくれる多くの人を大切にする。人間はひとりの力だけで仕事をすることもできなければ、ひとりの力だけで生きていくこともできませんからね」

カステラと同じように、スタッフにも深い愛情を注ぐ福砂屋ですが、新人教育も時代の変化に対応した柔軟なスタイルを採用。「先輩の技を見て盗んで覚えるという昔ながらの職人体制ではなく、技術の基礎からていねいに教える教育で一人前の職人に育てています」。また、スタッフの福利厚生面を充実させることで有給取得率は75パーセントを超え、離職率も低いとか。自身も出産経験を持つ福砂屋・営業統括本部の岡世界さんも「産休・育休制度が整っていて、復職もできます。子供が生まれ一度離れてしまっても、ちゃんと戻る場所をつくって待っていてくれる。安心感あふれるとてもアットホームな会社ですね」と笑顔で話してくれました。

商品への自信を胸に売り方・伝え方を変えていきたい

社員
社員のみなさん

東京進出から今年で70周年を迎え、東京の福砂屋としても老舗のひとつですが、殿村さんは、「関東での認知度で考えるとまだまだこれから。われわれも東京で70年間積み上げてきたものがあるので、今後は支店としてだけでなく、“東京の福砂屋”としても勝負していきたいですね」といいます。

これからの福砂屋を担っていくであろうひとりの殿村さんのご子息で、現在は営業統括本部に所属する殿村康介さんも、「誠実さという福砂屋の家訓があるように、いっさい手を抜かずカステラづくりに命を注いできました。その反面、強い商品力に頼っていたというのも事実。いまの時代、馬鹿正直なだけでは生き残れません。東京の福砂屋としてはこれまでメディアへの露出は控えてきましたが、これからは商品への誇りは常に持ちつつ、売り方や伝え方を工夫する必要があると考えています」。
父親同様、大学卒業後は一度福砂屋から離れ、約3年のあいだ、他の企業で広報などの仕事に携わっていたという康介さん。福砂屋に帰ってきたいま、経営と社内環境の両方を見すえつつ、時代の変化に対応した柔軟なスタイルの構築に尽力しています。
伝統ある老舗に新しい風が吹き、今まさに生まれ変わろうとする最中、地域の視点でも新しい取り組みがスタート。同じ中目黒に店を構える「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」とともに、週に一度、中目黒の街の清掃活動を行っています。コラボ商品も販売するなど、コーヒーとカステラの饗宴で街の人々を喜ばせたいと、地域活性化にも精力的です。
約400年もの間変えることのない“手わざ”で、わが子のように育てあげたカステラ。その確固たる自信と誇りを保ちつつも、今後は商品の届け方を工夫するというアップデートで、着実に未来へと向かっている福砂屋。「超えていこうコロナ前の売り上げを」と掲げた今期目標を胸に、今日も真心をこめてていねいにカステラを焼き続けています。


店内の様子


“手わざ”のカステラ

お問い合わせ

産業経済・消費生活課 中小企業振興係

ファクス:03-3711-1132

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